第10話 濃い化粧と派手な服装の若い女の子
金曜日大会である。
きょうの1回戦は、ひさしぶりにアキラくんとの対戦となった。お互いに卓につき、対戦の準備を始める──今となっては、こまごまとした所作についても、アキラくんもすっかりと手慣れていた。あの初参加以来、毎週のように大会に出ている経験が身になっているようだ。
試合が始まり、1本目の中盤に差し掛かった頃、ドアベルがカランカランとなるのが聞こえた。
何の気なしに、入口の方に視線を送ると──ぎょっとした。そこにいたのは、パンクファッションというのだろうか、濃い化粧と派手な服装の若い女の子だった。このカードショップにもっともふさわしくない存在と言ってもいいだろう。
そんな彼女が睨みつけるように店内を見回した後、ツカツカと、大会が行われている最中のプレイスペースに近づいてくる。そして、わたしの対面に座っているアキラくんのすぐそばまで来ると、声を上げた。
「アキラ! こんなところで何してんの!」
途端、店内の空気に緊張感が走った。何事だと、他の卓からの視線も集まってくる。
当のアキラくんは、一瞬だけ視線を彼女の方に向けたが、しかし、すぐに自分の手札に視線を戻した。わざとらしいくらいの無表情を作り、ぶっきらぼうにいった。
「こんなところ、ってなんだよ。見りゃわかるだろ。いま、カードゲームの大会に参加中」
普段愛想がいいアキラくんからは想像がつかないほどの冷たい声だった。
その態度に、女の子の方は余計に頭に来たようだった。
「もう飲み会始まってんだけど!」
「オレは飲み会には出ないって、前から伝えてた」
「なんで」
「……あの人たち、ハタチになってない学生も飲ませようとするだろ。そういうの嫌なんだよ」
「別に、そんなの普通でしょ」
「じゃあお前は飲み会に出ればいいだろ。オレは出ない」
「そんなの──」
「あのね、イクミ」と、アキラくんは顔を上げた。そして軽蔑的な声で続ける。「いま、ここは大会をやってるんだよ。お前がいると迷惑で、邪魔だから、どっか行け」
「っ──」
怒髪天、といった形相その形相に、この場にいた思わず身構えた。しかし、彼女はすんでのところで罵声はこらえたようで、怒気のこもった息を低く忌々し気に吐き、プレイスペースの壁際へと歩いて行った。一番端の席に座り込み、スマホをいじりだした──つまりは、大会が終わるまでそこで待ち構えるつもりらしかった。
困惑した空気の中、アキラくんは申し訳なさそうな表情で、こちらを向いた。そして疲れたように溜息を吐く。
「……本当にすいません。空気悪くしちゃって」




