陵辱の涙
地下の独房は、湿った腐敗臭と鉄の錆びた匂いが充満していた。
重厚な鉄扉の向こう、松明の灯りさえ届かない闇の中に、俺たちの獲物はいた。
俺の剣が空を切り裂く音を聞く間もなく、見張りの衛兵たちの喉が断たれ、泥濘に沈んだ。
レイラが妖艶に指先を振るうと、重厚な鉄の錠が意思を持つかのように悲鳴を上げて弾け飛ぶ。
軋む音と共に扉が開かれると、そこにいたのは、かつて民衆を導いた聖女の面影など微塵もない、無残な囚人だった。
「ひっ、あ……あぁ……っ!」
埃と汚れに塗れ、鎖で壁に繋がれたエレナは、俺たちの姿を見るなり、魂が口からこぼれ落ちんばかりに震えだした。
恐怖で瞳孔が開き、ガタガタと歯を鳴らしている。
光り輝く信仰の象徴は、今やただの壊れかけの人形だ。
「あら、ご機嫌よう。私の可愛い聖女様」
レイラが嘲笑を浮かべ、エレナの顔を無理やり持ち上げる。
彼女の指先は、すでに殺意に満ちていた。
レイラはエレナの震える左手を掴むと、躊躇なく、その細い人差し指を「ポキリ」と鈍い音を立てて逆方向に折った。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁッ!!!」
独房に断末魔のような絶叫が響き渡る。
エレナは激痛に顔を歪め、引き攣った声を上げるが、鎖がそれを遮る。
レイラは笑いながら、中指、薬指と、まるで花の茎を折るかのように、淡々と、そして執拗に指を潰していった。
「折る音がとても綺麗ね。貴方の心みたいに、脆くて甘美な音だわ」
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、エレナは床を転げ回って悶絶する。
両手十本の指がすべて逆方向を向き、肉が弾けそうなほどの屈辱と痛みに彼女の意識は引き裂かれようとしていた。
すべてが終わり、折るべき指がなくなった時、レイラは不機嫌そうに溜息をついた。
「あら、もう終わり? つまらないわね……じゃあ、おまけをしてあげる」
レイラが妖しい紫の光を放つ魔術を掛けると、折れ曲がっていた指は、魔法のような回復力で瞬時に元の形へと戻っていく。
エレナは、自分の指が勝手に治癒していく光景を見て、恐怖のあまり「ヒヒッ」と異様な笑い声を漏らした。
「……ッ、や、やめて……、お願い、殺して……ッ!」
「殺すわけないでしょう? これからが本番なんだから」
レイラは再び、最初の指に手をかけた。絶望に染まったエレナは泡を吹いて失神してしまう。
レイラは無慈悲な魔術で叩き起こす。
「さあ、起きて。遊びはまだ終わっていないわ」
レイラはエレナの髪を掴み上げ、背後に控えていた俺の方へと突き飛ばした。
エレナは床に這いつくばりながら、俺の姿を見て、恐怖と恥辱に顔を歪める。
「……セリア、様……?」
俺は冷徹な眼差しで、這いつくばる彼女を見下ろした。
以前の俺なら、彼女に慈悲をかけたかもしれない。だが、今の俺にとって、彼女は壊して愉しむための「復讐の道具」だ。
レイラは俺の背中を押しながら、甘く毒のある声で耳元に囁いた。
「御所望のセリアをあげようじゃない? 私のなんだから、特別よ。たっぷりと――あなたの聖女としての誇りを、その肉体ごと汚してあげて?」
俺は無言のまま、汚れた床に膝をついた。
拒絶の言葉などいらない。
ただ、彼女の絶望に濡れた瞳を見つめ、かつて自分を切り捨てた女を、俺の手で、徹底的に陵辱する時が来たのだ。
冷たい石畳の感触が、エレナの頬を伝う。
かつて民衆を癒やし、神の言葉を紡いだその唇は、今はただ震え、無意味な嗚咽を漏らすためだけに動いている。
俺は彼女の顎を力任せに掴み、無理やり俺を見上げさせる。
虚ろな瞳。そこに映っているのは、もはやかつての気高い聖女ではない。ただの、絶望に飼い慣らされた獣だ。
「エレナ。見ていろ」
俺は低い声で告げ、彼女の衣服を剥ぎ取った。布が裂ける音が、独房の闇に空虚に響く。
彼女は抵抗しようと力なく手を伸ばすが、折れた指が痛みを訴え、その動きすらも絶望を深めるだけだ。
「神は、どこへ行った? お前が縋り付いた信仰は、今どこで泣いている?」
俺の問いかけに、エレナは首を横に振り、か細い声で「神様……助けて」と呟く。その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の中にあった冷徹な復讐心が、愉快な悪意となって爆発した。
「神などいない。お前が信じていたものは、俺という軍師を切り捨てたお前の選民意識そのものだ」
俺は彼女の耳元で囁き、かつて彼女が聖女として民衆に与えた慈悲や言葉を、ことごとく冷笑で塗りつぶしていく。
彼女の尊厳を、記憶を、存在意義を。
俺は彼女の肉体を蹂躙するのではない。彼女という人間そのものを、内側から徹底的に破壊し、塗りつぶすのだ。
「……ッ、や、やめて……! そんなこと、言わないで……ッ!!」
彼女の叫びは、独房の中で反響し、彼女自身の心に突き刺さる。
俺の言葉の一つ一つが、彼女が必死に守ろうとしていた聖女の仮面を、容赦なく剥ぎ取っていく。
彼女は自分の汚濁を認めさせられ、かつての自分がどれほど醜く、高慢だったかを突きつけられ、精神の均衡を完全に失っていく。
その様子を、レイラは寝台に横たわるようにして愉しげに眺めていた。
「あら、良い泣き顔。心が壊れる音って、本当に最高ね。ねえセリア、もっと教えてあげて。彼女が今まで信じていたものが、いかに滑稽で、無価値なゴミだったかを」
レイラの扇動を受け、俺はギンギンに勃起したそれを聖女の渇いた口にぶちこんでやった。
「ゴフォっっ」
鈍い空気音をたてて聖女はそれを咥えた。
エレナはもはや、聖女としての矜持などどこにもない。
ただ、俺という支配者の足元で、自らのすべてを汚され、否定されるだけの存在へと成り果てていた。
俺の言葉が彼女の理性を砕き、勃起した棒が口内を弄る度に彼女の魂が、俺という泥に染まっていく。
かつて国を救ったはずの聖女の光は、完全に消滅した。
独房の中に残ったのは、ただ俺に服従することしかできなくなった、抜け殻同然の女だけだった。
「……いいぞ、エレナ。それでいい。その絶望こそが、お前に相応しい居場所だ」
俺は歪んだ笑みを浮かべ、崩れ落ちる彼女を抱きすくめた。
レイラが満足げに拍手を送る。
この地下の闇の中で、王国カナンの最後の希望は、俺たちの手によって完全に死んだ。
次は、この抜け殻を使って、外の世界に残る「信仰」という幻想を、さらに徹底的に嘲笑ってやろう。
レイラが高笑いを始め、衛兵が消えた独房にこだました。




