15話:やめて欲しいけど
研究は今日も続く。それは夢華が死なない限り当たり前の事象だ。だが私は今すぐにやめて欲しいと思ってる。だって可哀想じゃないか。まともな人生を送れないんだぜ?私だったら今すぐ逃げ出す。
「夢華〜、天城の論文の方はどうなったんだー?」
「ん?時華なんて言った?」
「天城の論文〜」
「あぁ、それならばあと少しで完成すると思うよ、あの2人は仕事が早いね」
「だな」
天城の論文ってのは、この私らの能力がどう作用するのかを表す論文だ。完成する頃には煓の実験も終わってるだろうな。そんでもって存在がバレて…って、んなわけないか。
腕を組んで壁にもたれながらもう一つ夢華に質問をした。
「それでさ、お前はあの研究止めれねぇのか?」
夢華が作業をやめて真剣な面持ちでこちらに向き直った。
「止めることは出来るよ。でもやらないよ?私の研究を今止めるわけにはいかない。勿論、政府の人間に止められたならばこの手を止めるのだけれどね」
「ほーん?」
私は夢華に近付いて、夢華が何をしていたのかを確認した。夢華は天城姉妹の論文を読んである程度の予測を立てていたらしい。論文に沢山の線が引かれている。こういうのは真面目なんだよな、コイツ。
「じゃあもし私が政府の人間だったら止めていたってことか?」
「まぁ、止めていたね」
「そんじゃあお前の父さんに言われてもか」
「当然、私の父の言うことは絶対だからね」
よくこんなことを笑顔で言えるよ。こんな奴の気が知れない。正直話が合う気がしないぜ。
「んじゃあよ、私が政府に言ってきてやるよ、もうやめろってな」
「それを私が許すとでも思っているのかい?時華は」
そう言いながら夢華は資料を手に取った。視線は合わない。
「もしかしたら許すかもしれないじゃねえか」
「私は研究が好きだ、辞めるように政府に言わせるのは卑怯だよ。だから私はそれを許したくはない」
そう言いつつも余裕そうに、私を相手にしていないかのようにずっと研究資料を読んでいる夢華。
「…でもさ?私は思うんだよ夢華」
「ん?」
「それが本心に見えねぇなって」
そこで夢華は初めて手を止めてこちらを見た。
「本心に決まってるじゃあないか」
そう言ってにこりと笑って見せた。
「そんなことを私に聞いている暇があれば煓の状態でも確認してきたらどうだい?」
「いや私権限ねえから無理だぜ」
「おっと、すっかり忘れていたよ」
「しっかりしてくれよ…」
私は軽く夢華と話したあと、その場を離れて持ち場へと戻った。
「…辞めることなんて出来ないんだよ」




