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宇宙科学の進化先  作者: 硴里りま
第一章
14/18

14話:管理AI

 最近はどうだ?研究の成果は出たか?という文面のメールが父から届いた。私の父は中国政府に携わる人間だ。私の研究施設の管理も軽く行なっている。まぁ中国政府の研究施設の大部分は私の管轄なんだけどね。


『研究の成果は一切出ていない、現在視点を変えて試行錯誤しているところだよ』

『そうかい、精々頑張るんだよ』

『ありがとう、頑張らせてもらうよ』


 申し訳ないけどコイツ()と政府の為に研究するなんて本当にやりたくない。父さんはともかく政府の方は絶対悪用するとわかっているからね。

 そしてこの今送られて来たメール的に、研究成果の発表の催促だろう。きっとアメリカを上回ろうと必死なんだ。

 幸いこの情報は日本と中国のごく一部の人間しか知らない。つまりこれを研究しきれば日本と中国の経済も財政も一気にアメリカへと近付ける。それ故にこの研究は極秘、そして焦っている政府の成長の格好の的。簡単に言えば面倒だということだ。


「夢華研究所長、システム修正を行ったから多分データが飛んでる。てことでバックアップ取っといた。ちゃんと管理してて」

「助かったよ咲、今日もありがとう」

「…別に」


 咲から手渡されたのは一つのUSB、まさかあの膨大なデータがこれに収まってるとでも言うのかい…?私が改めてパソコンを開くと咲の言った通りデータが吹き飛んでいた。私がこのUSBを受け取る前にこの光景を見ていたら流石にパニックを起こしていたかもしれない…。

 私はUSBメモリをパソコンに挿入して昨日と何ら変わらない研究データを眺めた。


 だが私はそこで見知らぬ何かが画面に映っていることに気が付いた。


「こんにちは、夢華。私はデータ管理補佐AI RIRI、今後良きようにお使いください」

「…あぁ、AIか、人間が閉じ込められたのかと思ったよ」

「……人間が画面にいるわけないでしょう」

「あれ、君音声拾えるのかい?AIなのに不思議だね」

「そういうタイプの物なんですよ…それではデータの整理を行います、以前と同様『Chinese dragon』を規制しておきます」

「助かるよ」


 同意とみなされたのだろう、その言葉を発した瞬間画面に複数のタブが出て、私の取り逃した情報がどんどん付け足されていく。そしてなんの違和感もないように情報が整理されていく。

 AIに任せるのは少し不安だが、ハッキングされない限り情報が漏れることはないだろう。ならもうこれ全部AIに任せても良いのでは…?いやでもそんなことしたら自分が把握できないか…。やめよう、今まで通り自分でもちゃんとやらないと。


「助かったよRIRI、ここからはちゃんと自分でやるね、どこかおかしな点があれば言ってくれる?」

「お任せください」


 それだけ伝えるとRIRIは消えた。


「…不思議なAIだ」


 不意に背後から羽ばたくような音が聞こえた。何事かと振り返れば、そこには咲がいた。


「あ、夢華研究施設長、データ残ってた?」

「あぁ、しっかり残っていたよ」

「それならよかった」

「ここにいるということは何か伝えたかったんじゃないのかい?」

「んー、別に。確認しにきただけ」


 咲は私の部屋の入り口の横の壁に軽く凭れかかった。確認しにきただけにしては随分と寛いでいる様子だった。


「咲の方は最近どうなんだい?」

「どうって?」

「体の不調とか、仕事の様子とか」

「別に普通だけど」


 咲からはよく反抗期の子供のような何かを感じる。いや身長高めなだけで魅凪とそこまで歳変わらないから年相応なんだろうけど。そういえば魅凪の方が2歳年上だったはず…。だとすれば、魅凪はだいぶ幼い感じだし、身長も低い。発育が遅いのか…?

 いやでも咲は鳥年齢(?)かもしれないし…。


「夢華研究施設長、ここ面白くないよ」

「えっ?急に何を言っているんだい…?」


 咲は壁に凭れるのをやめて、こちらに近付いてきた。


「面白くないよ、夢華研究施設長、なんで貴方は研究を続けているの?分からないことが多すぎて全く面白くない。何のためにここがあるの?何のために私は人間にされたの?なんで種族を変える実験、能力の開発をしてるの?頭おかしいよ」


 そこまでいい終えると、咲は私の耳に手を触れた。


「貴方は機械か何か?」


 私は咲を引き剥がした。


「違うよ、私は自分の意思で研究している。それにしてもどうして急にそんなことが気になったんだい?捕食でもしたくなった?」

「貴方を捕食するわけがないでしょ、ふざけないで」


 展開が読めない。この子はどうしてこんなに私に詰め寄っている?何か伝えたいことがあるわけでも、脱走を宣言するわけでもない。じゃあ何故?咲のいう面白さとはいったい何だ?

 引き剥がされた咲はまた私に近付こうとすることはなかった。


「もっと悲惨な子を増やしても良いのなら、面白くできるよ?」

「は?」

「無駄なく研究すればすぐに退屈さなんてなくなるよ、だからまず君の面白くない、を詳しく教えてくれないかい?」


 咲は押し黙った。もう言うことはなくなったらしい。私の顔を数秒見つめた後静かに去っていった。


「なんだったんだ?一体…」


 何が面白くないというんだろうか。私はこの実験施設が楽しくて楽しくて仕方ないよ。最奥の方でも見に行こうかな。もしかしたら異常をきたしているかも知れないし。

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