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俺はもしかしたら妹が好きかもしれない  作者: 大崎真


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35/36

35、お兄ちゃん、おはよう!

「浩平、成海ちゃん、来てくれ〜!」

「二人とも手伝って〜!」


 庭から聞こえたお父さんとお母さんの声に、俺と成海はリビングの掃き出し窓から外を覗いてみた。


 庭でできた蕪(カブ)が大きくなりすぎたため、引っこ抜くのを手伝ってほしいと二人が助けを求めている。巨大な蕪の葉が、庭の地面を這うように茂って伸びていた。


 蕪の葉を掴むお母さんの腰にお父さんが、お父さんの腰に俺が、俺の腰に成海が掴まり、四人で「うんとこしょ、どっこいしょ」と引っ張り、ようやく蕪は抜けたのだった。


「みんな、ありがとう〜!」

「こんな立派な蕪ができるなんて、紫織さんの家庭菜園は凄いなぁ〜」 


 嬉しそうに笑うお父さんとお母さんに、俺と成海も「ほんとほんと〜」と笑い合う。

 ほのぼのとしたいつもの大橋家で、それはそれで別に良かったのだが、成海はいつまでも俺の腰にしがみついたままだった。


「成海、蕪は抜けたから、もう離れていいよ」


 そう言ったが、成海は「えへへ〜」と笑ったまま、いつまでもしがみついている。


「成海、離して〜」

「もうちょっとだけ〜」

「いやいや、もう離して〜」

「お願い、あとちょっとだけ〜」

「頼むからマジで離して〜っ」


 言いながら、俺は腰にしがみつく成海の腕をほどこうとしたが、ふと、あまりにも現実味のある感触に思わず目が覚めた。


 まだ重い瞼(まぶた)をこじ開けながら腰を見ると、成海の腕が本当にしがみついている。


(え……?) 


 思考が止まった。

 辺りを見渡したら―――ここは成海のベッドだった。


「ごめんっ、間違えたっ」


 謝ったものの、


(ん?)


 と、我に返る。 


(確か、ベッドを交換したから、俺はあってるよな?)


 疑問に思いながら首だけ後ろを振り返ると、成海はすやすやと幸せそうな顔で俺にしがみついたまま寝ていた。


(マジか……)


 思考が追いつかない。なぜこんなことになったのか。

 身体を動かそうとしたら、成海はほっぺたを俺の背中にすりすりと擦り寄せてきた。


(やば……! めちゃくちゃ可愛いことをしてくる……! どうしよう……!)


 一つの布団でこんなことをされたら、めちゃくちゃヤバイと思った。

 成海の体温と匂いを間近で感じる。しかも困ったことに、あまりの密着具合に、俺の背中には成海の胸の感触があった。


 ヤバイ――! このままでは、今日はしてなかったのに朝勃ちをしてしまう――!


 俺は絶体絶命の危機に陥った。

 瞬時に無理やり身体の向きを変えて成海と向かい合わせになった。


「成海っ、なんでここにいるんだよ」

「……あれ? おはよう……」

「おはよう」

「お兄ちゃんだ〜……おはよう……」

「おはよう。なんでここにいるんだよ」

「なんでだろ〜……?」

「うん、なんで?」

「なんでだろ〜……? なんでだろ〜……? ななな……おはよう……」

「おはようはもういいから、最後のなんでだろうをちゃんと言うて」


 困った。寝起きだから、全然、話が進まない。

 成海は、ぽやぽやした顔でのんびりと視線を辺りに彷徨(さまよ)わせた後、ようやくぽつりと呟いた。


「あ、間違えた……」


 そうして、起きるのかと思ったら、もう一度、目を閉じると、何事もなかったかのように、すやすやと眠り始めた。

 美少女の天使の寝顔だが、楽しい夢を見始めたのか、突然、にんまりと微笑んだので笑ってしまった。


 見た目は成長しているが、やっぱりパン太郎みたいだな、と思う。寝顔も出会った頃とそのままだ。

 もう高校二年生で子供というより女性に近い年齢になったが、まだまだおぼこい姿におかしくて笑ってしまう。


 その時、 


「成海ー、起きなさーい」


 と、階下からお母さんの声が聞こえてきた。階段をスリッパで上がってくる、パタパタという足音も聞こえてくる。


 俺は、(ヒィ━━━!)となった。


(ヤバイ! ちょっと待て! ベッドを交換してることお母さんたち知らないし)


 慌ててベッドから出ようとしたが、成海は俺にぴったりと抱きついてきた。


「成海っ、成海っ」


 揺すって起こしたが、全く起きようとしない。

 焦る俺をものともせず、重そうに瞼をこすりながら、


「なに~~……?」


 と、生返事をして、のんきに欠伸(あくび)なんかしている。

 その時、あっさり成海の部屋のドアが開いてしまった。


「キャー!( 〃▽〃) 浩平くん、成海に夜這いしてたのー!?(*ノ▽ノ)」

「違う違うっ! 誤解誤解っ!」


 全くの事実無根だと、俺は慌てて説明する羽目になった。






 あれから、宮島という名のあいつは逮捕され、当然ながら、学校には一度も来なかった。


 成海が言うには、最初の頃は風邪だと思っていたクラスメイトも、あまりに長い休みに不思議がっていたようだ。ある日、担任が、「宮島は親の転勤で別の県へ引っ越した」と説明をしたらしい。


 しかし、どこの世界にも情報屋は存在するようで、「宮島はどうやら逮捕され、学校は退学になって家族は引っ越したらしい」という説明だけが小鳥のさえずりのように方々(ほうぼう)に流れ始めた。


 最初は噂も続いていたが、確かな情報もないためか、さほど長続きもしなかったらしい。

 やってくる期末に意識がいき、あっという間に宮島の存在は消えてなくなっていったようだ。


 期末が始まり、慌ただしく終わると、そのまま俺と成海は長い長い夏休みに入っていった――

読んでくださって、ありがとうございました。

次回に続きます。

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