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俺はもしかしたら妹が好きかもしれない  作者: 大崎真


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30/31

30、大橋兄妹、フェリーを堪能するの巻

 俺と成海は着替えやバスタオルを持つと、部屋の鍵をかけて、展望大浴場へ向かった。

 家では、リビングにいても風呂場から成海の歌声が聞こえていたので、


「大浴場では歌うなよ」


 と言うと、


「我慢するしっ」


 と、成海は漫画みたいに頬を膨らませて、ぷんすかぷんぷんと真剣に怒ってきた。


(本当は歌いたいんだ……)


 俺は笑いそうになったが、嫌われたくないので、どうにか苦労しながらもこらえた。

 二人だけで並んで歩いていると、ふと錯覚してしまう。まるで、二人で旅行に来ているような気分になった。


 エントランスを抜けた先には、男湯と女湯ののれんが垂れ下がっていた。フェリーに乗っているのに、まるで温泉旅館に泊まっているような感覚になり不思議だった。

 俺は、「じゃあ、また後でな」と言って成海とそこで分かれた。






 脱衣所には人がまばらにいた。

 素っ裸になり、大浴場の扉を開けると、一気に熱気と湯気が迫ってきたが瞬時に消えた。


 眼の前に広がるそこは、だだっ広い横長の大空間だった。全面の大きな窓ガラスには、青空と港町と海が映し出されている。窓際に沿って備え付けられた横長の湯船には、すでにまばらに人が浸かっていた。


 俺は全身を洗ってスッキリすると、湯船に入って、早速、窓際に寄ってみた。

 下を覗いてみると、眼下には港に停泊している何曹かのフェリー船が穏やかな波の上で揺らいでいる。まだ日は沈んでおらず、白い太陽が水面みなもをキラキラと輝かせていた。

 と思ったら、いきなり地響きがして、


(なんだなんだっ?)


 と、戸惑っていると、ゆっくりと港が遠ざかっていくではないか。どうやらフェリーが動き始めたらしい。

 あっという間に、窓の向こう側は、空とキラキラ光る水面と水平線だけになった。


(すげー……。船の旅って楽しいもんだなぁ……)


 遠くまで広がる水平線をのんびりと眺めながら、俺はにんまりとした。


(お父さん、家族旅行、楽しいよ。マジでありがとう)


 俺は心から感謝した。






 大浴場からあがって部屋に戻ると、まもなく明石海峡大橋あかしかいきょうおおはしを通過するという放送が流れた。


「俺、見てくる!」

「成海も行く!」


 俺たち二人は甲板に出ると、頭上に架かる明石海峡大橋を見上げた。迫りくる巨大な橋の下をフェリーが一定の速度で通り過ぎていく。


「「おお〜~~っ!!」」


 二人で感嘆の声を上げながら、俺たちは大迫力のくぐる瞬間を堪能した。

 のんびりと夜の海も堪能したいところだったが、如何いかんせん、甲板は潮風を感じられないほどの強風が吹き荒れていた。


 そのこともあって、俺たちは、めちゃくちゃテンションが上がってしまい、一緒に笑い合った。風に押される成海が心配で、俺は思わず手を繋いで引き寄せた。間近でお互いの乱れる髪を見て、また一緒に笑い合った。

 先程まで白かった眩しい太陽は、いつの間にか日も暮れて辺りは陰り、海は群青色になっていた。






 六時半になったのでレストランに行くと、すでに多くの客で混んでいた。お父さんとお母さんが手を振って、俺と成海を手招きしてくれている。

 大橋家は席を確保すると、早速、料理を取りにいくことにした。


 ブュッフェには目移りするようなメニューが所狭しと並べられていた。

 ローストビーフやお寿司、わら焼き鰹のたたきや季節の料理や郷土料理が盛りだくさんで、大橋家の四人はまたもや、わーいわーいとなって、何度もおかわりをした。 


 成海は、いちごと抹茶とバニラのアイスを制覇したくせに、また同じものをおかわりして食べている。満足そうにスプーンですくって食べる成海に、


(よくお腹を壊さないなぁ〜)


 と、俺は感心した。






 食事を終えてレストランを出ると、エントランスに売店があったので四人で立ち寄った。フェリーの形の箱に入ったクッキーを買うと、大橋家は部屋へ戻ることにした。


「明日の朝五時半に港に着くから、それまでにトランクに荷物を積めて準備をしておくんだぞ。くれぐれも寝坊しないようにな。では、また解散!」


 お父さんの号令で、大橋家は二つの部屋の前でまた二手に分かれたのだった。






 部屋に戻り、お互いのベッドに座ると、


「なんのカードゲームをするんだ?」 


 と、俺は成海に声をかけた。

 

「じゃじゃ〜ん! 《UNOフリップ》〜!」


 ドラえもんみたいに言いながら、成海は大きな巾着袋からUNOフリップを取り出しては配り始めた。

 俺は成海のベットに移動すると、向かいあって胡座あぐらを組み、配られたカードを手にした。嬉しそうに笑う成海に、俺もつられて笑ってしまった。


 しかし、始めたもののお互いになかなか終わらず、何度もひいてはひっくり返しの繰り返しで、だんだん事務作業みたいになってきた。やっと成海が先にあがり、


「UNOフリップはもういいや……」

「そうだな……」


 となった。大人数なら楽しそうだが、二人でやるにはやや盛り上がりに欠けるカードゲームのようだ。


「次は?」

「《音速飯店おんそくはんてん》!」


 やってみたら、こいつはなかなか楽しかった。負けてしまったので、


「成海、もう一回しよう」

「うん、いいよっ」


 と返ってきたので、結局、十回も楽しんでしまった。このカードゲームは結構、気に入ったぞ。


「次は……《SETセット》をしよう!」

「ええ〜……」 


 巾着袋を覗いて《SET》を取り出した俺に、成海は嫌そうな顔をした。成海はこれが苦手なのだ。俺は人差し指を立てて、


「一回だけ付き合って」


 とお願いすると、


「分かった〜……」 


 と、成海は唇を尖らせ、不承不承ながら準備をしてくれた。

 そして、案の定、俺がボロ勝ちしたのでニヤリとすると、


「ハイハイ、片付けますよ〜」


 と、成海が唇を尖らせながら、さっさと片付けるので、


「勝ったのに、なんでこんな気持ちにならなきゃいけないんだよ〜」


 と、俺も唇を尖らせてみた。


「次は何するんだ?」

「トランプで大富豪をしよう!」

「反対反対。二人でやって何が楽しいんだ? 相手の手の内が見えて楽しくないだろ」

「お兄ちゃんはダメだねぇ。四つに分けて、二回、戦えばいいんだよ」


 俺は思わず目を見開いた。


「成海は天才だな! 大発明だ! お兄ちゃん、世界中にこのやり方を広めて世界を救ってあげたいよ!」


 俺たちは大富豪をエンジョイした。


「最後は……じゃじゃ〜ん! 《はぁって言うゲーム2》だよ!」


 言いながら、成海は意気揚々と準備を始めた。どうやら、これが一番楽しみだったらしい。


 カードをめくると、お題は『にゃー』だった。『大暴れの猫』や『可愛い猫』など様々な種類の猫の中から、俺は成海が何を演じているのかを当てなければならない。

 成海は演じる種類のカードをひくと、少し考えて俺を見た。


「じゃあ、お兄ちゃん、いくよ〜」

「うん」

「にゃー!」


 成海は両手の指先を曲げ、上目遣いで俺を見てきた。


(可愛い……!)


 どう考えても可愛かった。

 俺の妹、マジで世界で一番可愛い。なんという尊さであろうか。

 いやいや、そんなことはどうでもいい。どうでもいいというわけでもないけど、そんなことより俺は当てなければならない。 


「大暴れの猫?」

「違うよ。それは、にゃ━━ッ!でしょ」

「なるほど。……もう一回やって」

「にゃー!」

「かわいい猫?」

「違うよ。それは、にゃ〜!でしょ」

「なるほど。……結構、ムズいな。もう一回やって」

「にゃー!」

「さびしい猫ではないな」

「それは、にゃ……でしょ」

「甘えた猫は?」

「にゃ〜〜っ」

「震えてる猫」

「にゃ〜〜……」

 なんでも期待に応えてやってくれる成海に、俺は思わず、ふはっと笑ってしまった。


「分かった。残ったやつの、元気な猫」

「正解!」

「次は俺か」


 カードをめくると、俺のお題はロックシンガーの『愛してるよ』になった。


「成海、いくぞ」

「うん!」

「愛してるよー!」


 成海は、ボウッと真っ赤になった。

 違う違う、俺はロックシンガーだから、と思った。

読んでくださって、ありがとうございました。

遅くなって、すいませんでした。

次回に続きます。

ちなみに、私の時は明石海峡大橋をくぐる船内放送はなかったです。乗るご予定の方はお気をつけください。

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