第70話 連続レベルアップ
階層主メタルキングが完全に消滅していくのを見届ける。
断末魔すらなく業魔は魔核を失うと掻き消すように滅びる。
まるでその存在が泡沫のごとく、とでも言わんばかりに。
色気のない事を言えばおそらくオーバーロード達が何かしてるのだとは思う。
ただそれに甘えて油断してはならない。
階層主が斃れた事で発動する罠や召喚陣があるかもしれないのだ。
気息を整えながら振り抜いた太刀を返し、ゆっくり納刀する。
いつでも行動に移れるよう残心は忘れずに。
物音一つない周囲。
どうやら危険は去った様だ。
張り詰めていた神経を緩め、俺は深々と息を吐く。
するとそれが合図だったようにコノハとミズキがはしゃぎだす。
「やったね、ショウちゃん!」
「やったな、ショウ!」
「――ああ、二人のお陰でな。
見事な突きだったぞ、コノハ。
アレなら大概の業魔は貫ける筈だ。
ミズキもさすがだな。
あの一撃で完全にこっちのペースに入ったよ」
「褒めて褒めて~♪」
「――ふむ。
私達の連携も形になってきた、ということか」
「そうだな。
ミズキが前衛で暴れまわり、コノハが中衛から隙を貫く遊撃役。
そんな二人を俺がバランサーとしてサポートする。
なかなか良い感じに仕上がったもんだ」
「ふふ、皆の心が一つになってきたからね」
「コノハの言う通りだ。
今回頂いた装備の力も無論あるだろう。
しかしアオバダンジョンの魔将クラスほどでなくとも、それに匹敵する階層主を一方的に斃す事が出来るようになるなんて、な。
自分たちの成果に驚かされる」
「個々の力はどれだけ優れていても所詮は1だ。
でもパーティになれば連携する事で1+1を4にも8にも出来る。
群体生命体の様に個々が結び付けば、強靭な一にすら勝るのさ」
「ショウが以前から定説していた理論だな」
「人間は弱い生き物だ、ってショウちゃんいつも言ってたもんね」
「正確に言うと人はイレギュラーに弱いから群れろ、だな。
今回俺達はたまたまコノハの自爆呪文を使わない縛り探索をしてきた。
だからこそ呪文が効かないメタルキングに当たっても冷静に対処出来た。
これが最初から自爆呪文頼りだったら今頃どうなっていたと思う?」
「あっ……」
「――かなり苦戦してたな」
「まず間違いない。
イレギュラーっていうのは、絶対起きてほしくない時を狙い澄ましたかのように起きるもんだ。
特に俺はそのことを身を以て知ってるからな。
面倒かもしれないが今回の探索でその事を二人にも理解してほしかった」
「――うん」
「――ああ。
充分理解したつもりだ」
「よし――ならば帰還するとしよう。
ほら、奴の魔核が人数分の蒼いリボンになったろ?
アレを持てば今後迷宮のゲート魔方陣が使えるようになるし、階層主を斃した経験値も入る筈だ」
「――え? そうなの?」
「まあ騙されたと思って拾ってみろ。
多分、凄い事になる筈だ」
疑心暗鬼の二人に断ち斬られた魔核が変容したリボンを指し示す。
恐る恐るリボンを拾う二人。
俺も二人に倣う。
次の瞬間――体中の細胞が叫びを上げる。
周囲を染め上げるほど眩い閃光が連続で輝く。
「こ、これって久々の……!?」
「連続レベルアップ――だと!?」
「ああ、そうだ。
メタル系の業魔は斃すのが難しい分、実は経験値が美味い。
俺が初戦でメタルスライムを斃したのは知ってるだろ?
かなり苦労したがその甲斐もあって一気にレベルが上がった。
今回でおそらくミズキも踏破者の仲間入りだ」
「私が……クラスチェンジを?」
「――ああ。
だがまずは帰還するのが先だな。
ほら、この先にある魔方陣。
リボンを持った状態であの上に乗れば地上まで移送されるらしい。
魔法陣の先は専用ゲートで、自衛隊のおっさんと武闘派看護師さんが手招きして待ってるけどな」
「それは……怖いかも」
「延々と5時間戻るよりマシだろ?
さっ――行くぞ。
まずは今回の探索成功の祝杯をあげなくちゃな。
ミズキのお祝いもしたいし……どうだ?」
「さんせ~い」
「異議なし、だ」
「よし、じゃあ地上へ行くぞ」
互いの健闘を称え魔方陣に乗った俺達。
勿論、無事に地上へ転移したのは語るまでもなかった。
待ち受ける看護師さんの話は語ると長いので……省略する事にする。
ただ――
世の中には迷宮主や親父より怖い人がいる事を俺はこの日知った。
っていうか骨の髄まで理解させられた……トホホ(;´д`)




