第71話 拠点コントラクト
「1683万円になります」
工房内にある換金所。
工藤さん達へ感謝の言葉と共に装備を返却した俺達はウルカさんから告げられた売却額の値を聞いて凍り付く。
確かに頑張ったな、とは思った。
魔核だけじゃなく俺達に役立たたないドロップ品も道中沢山回収したし。
しかしそれを売却した結果がこんな額になるとは……
三等分したら単純に一人頭561万円。
ちょっと学生が稼いで扱うには想像外の値段だ。
「? どうしたのですか、皆様?
もしかして売却額に不満があったでしょうか?
一応市場価格に合わせて適切に買い上げた筈ですが……」
「いえ、不満じゃなくてですね。
なっ二人とも」
「うん」
「あまりの金額に驚いてるんです、私達」
「皆様……どうか御自覚下さい。
あまりそういった認識はないのかもしれませんが――あなた方はトップクラスの探索者なのですよ?
実力と運気を兼ね揃え修羅場を潜り抜けてきた本物の。
通常ならば階層主メタルキングを討伐する事は極めて難しいです。
それを皆様は三人で成し遂げた。
同様な事を可能にする探索者がこのタガジョウにどれだけいると思います?
50に満たぬ上位陣、ホンの一握りですよ。
わたくしは依怙贔屓は致しません。
適正なものを適切な価格で買い上げる。
それが信頼第一の換金所の誇りです。
なのでどうぞ自信を以てお受け取り下さい」
慇懃無礼に一礼し受領を求められる。
怒られてしまった。
二人に目配せした俺は溜息後領収書にサインする。
これで後は自動的に三人の口座へ振り込まれるのだ。
いや、トップクラ探索者が稼げるとは思ったがここまでとは。
自分で稼いでおいて少々引く。
アオバダンジョンは最下層近くで200万前後。
それでもパーティで分割したら50万以上の稼ぎにはなっていた。
でもタガジョウダンジョンは違う。
より業魔の侵攻が激しい(リスクが高い)分、リターンも大きい。
いかん、このままだと金銭感覚がマジで狂いそうだ。
気を付けなくてはならないだろう。
古来より貴金属・金銭は人を狂わす魔物なのだから。
金銭などは所詮道具。
使う事はあっても人が使われてはならない。
ならば精々有意義に使わせてもらおう。
「そういえばウルカさん」
「なんでしょうか、狭間様」
「ホームの手配ってここで出来ます?」
「可能ですよ。
マンション型にされますか?
それとも独立ハウス型になさいますか?」
「今後もパーティの拠点にしたいのでハウス型で。
契約期間は一ヶ月更新で」
「了解しました。
それでは前金として敷金込みで30万掛かりますが……」
「――はい。
俺の口座から差し引いてください。
あっ、あと今日は初日なのでパーティセットも」
「畏まりました。
パーティセットの方はサービスしておきますね」
「よろしいんですか?」
「フフ……お得意様だけの特典ですよ?
どうかご内密に」
目元がヴェールに隠され見えないというのに、ドキッとするような艶っぽい笑みを浮かべ端末を操作し始めるウルカさん。
俺はそんな彼女の手元を黙って見つめる。
すると疑問に思ったのかコノハが聞いてきた。
「ねえねえ、ショウちゃん」
「――ん?」
「いったい何を手配したの?」
「ああ、ここって俺達の家からは遠いだろう?」
「うん」
「だからベースとなる家を借りた。
4LDK家具付きの一軒家になる」
「はあ!?
い、家を借りたって!?」
「それは別に珍しくないんだぞ、コノハ。
私も双子と共同生活をしていたし……今後の事を考えたらその方が良いと思う」
「共同生活って、ミズキちゃん……」
「ミズキの言う通りだ。
パーティ単位でダンジョンにアタックする際に集合場所がバラバラだと、意外に無駄なロスになる。
スタンピードなどの緊急時に集合できないと困るしな。
あとは……パーティ間の連携を深めるという意味合いもあるな。
寝食を共にすればおのずと互いを知り合い呼吸を把握できる。
なのでここに限らず行政機関はそういった宿泊施設の手配もしている。
ちなみに全てダンジョンまで徒歩10分圏内。
今後の事を考えたらホームを用意した方が絶対お得だ」
何を驚いてるのか口を開けて眼を丸くするコノハに俺は解説する。
ミズキもミズキで頬を赤くして俯いてるし。
そんな二人を何故かウルカさんが痛々しい目線で見た後「鈍感は罪ですよ、狭間様」と窘められた。
俺は何か対応を間違ってしまったらしい。




