第68話 的中ターニングポイント
快進撃は続く。
道中当たった業魔を片っ端から撃破し俺達は探索を進める。
武器の扱い方にも徐々に慣れたせいか、魔核を破損しない斃し方を習得した。
あまりにも順調すぎて――怖い位だ。
元々のレベルが高かったのもあるが、やはり一番の要因は俺達の装備している【漣】のお陰だろう。
ダンジョン探索は様々なトラブル遭遇の連続である。
罠だけじゃない。
怪我、毒、麻痺、石化、呪い。
状態変化や身体に異常をきたす外的要因の数々。
それを対処する為にHPやらMPやらのリソースをつぎ込むわけだ。
だがこの精神感応魔導金属はその概念を覆した。
恒常的な治癒術式が動く度に発動してるのだ。
分かりやすく言えば常時リジェネ、異常回復効果付属状態。
ポーションのような即効性はない。
しかし歩くだけで最高のコンデションを保てるというのはあまりにも大きい。
ダンジョンで物を言うのは最終的には体調管理だからだ。
どんな達人もHPとMPがなくては戦えないのだから(※例外在り)。
この【漣】が量産化されれば、まさに探索という概念が変わるだろう。
そんな事を二人と話しつつ5時間。
俺達はついに第十階層を護る階層主のフロア前までやってきた。
このフロアにいる階層主を斃せば、ダンジョン内にある移送の扉が解放される。
外からこの十層に来ることも出来るし、行った事のあるフロアならば一方的にだが転移する事も可能。
つまりここがターニングポイントである。
「さて、準備はいいか二人とも?」
「ああ、私は構わん」
「順調~順調♪」
「こらこら。
調子に乗ってると足元を掬われるぞ、コノハ。
少しはミズキぐらいの落ち着きを持て」
「む~確かにそうかも。ゴメン」
「いや、謝る事じゃないんだ。
俺達は確かに強くなった。
でもそれは実力以外のものもある。
せっかくこうやって探索に赴いているんだ。
謙虚に進んで行こう……二度と悲しまないように」
「――うん」
「ところで、ショウ」
「ん――?」
「このエリアの階層主はどんな姿をしてるんだ?」
「ああ、ミズキは前回ここまで潜らなかったんだな」
「そうだ。
このタガジョウダンジョンは階層深度より手ごわい業魔が出現する。
安全マージンも比例して高くなるからな。
前回双子と来た時は第七階層で止めておいたんだ」
「――懸命な判断だったな。
おそらく先へ進んでいたらいつか全滅してた筈だ。
俺達も装備品に助けられてるから実感がないかもしれないが……
このタガジョウダンジョンの欲求する適正レベルは最低階層+3。
安全マージンを取るならおそらく+5は欲しいところだ。
さすがは中級者向けなだけある」
「そんなに……」
「新装備が無ければ、こっちではコノハの自爆呪文に頼りっきりだっただろう。
それじゃ健全な探索とはいえないし、コノハに何かあれば終わりだ」
「ほお……ならば今は適正な探索といえるな」
「ああ。
で、肝心の階層主だが――二通りあってな」
「二通り?」
「外れ……っていうか、通常ならスライムキング。
第一階層で出会ったやつじゃない、アオバダンジョン風のやつな。
あれが複数合体して巨大化するんだと。
これならそこそこのパーティでも協力すれば斃せる」
「ならば当たりなら――?」
「当たりというか――例外はメタルキング。
俺が探索開始直後に出会い死に掛けたメタルスライム。
あれが複数合体して巨大化した恐るべき業魔になるらしい。
まあ、通常なら全滅レベルだわな。
階層主のフロアに入ったら脱出系アイテムは無効化されるし……何せ魔法が効かない。
コイツ相手には残念ながらコノハの自爆魔法も通じないって訳だ」
「――ふむ。
ならば外れを引く事を祈ろう」
ミズキの言葉に頷く俺達。
階層主が鎮座する重々しい扉を開き、入室する。
光り苔の影響で充分明るかったダンジョンと違い、暗い室内。
順々にフロアの壁に掛けてある松明が燈っていく。
魔法的な力で施錠される扉。
こうなると階層主を斃すまで物理的手段で開くことはない。
「――ビンゴ、だな」
「うん」「ああ」
盛大に嘆息したいの堪え、俺は鯉口に指を這わし呼吸を整える。
鋭く睨み付ける視線の先――そこにはメタリックな巨躯を象の様に震わす業魔が威容を以て俺達を睥睨していた。




