第66話 魔力エクスプロレーション
「タガジョウダンジョン第一層の主な業魔は毒を持つスライムらしい。
それで間違いないんだよな、ミズキ?」
「――え?
ああ、そうだが……」
「聞いたな、コノハ。
工藤さんたちから頂いたこの万能鎧【漣】なら大概の毒を弾き返す。
でも油断は禁物だ。
解毒薬やポーション類は道具袋に入れてきたが……
何が起きるか分からないのがダンジョンだ。
慎重に探索を開始するとしよう」
「は、は~い」
ゲートを潜ると同時、俺達の前には石造りの回廊がどこまでも伸びていた。
オーソドックスな典型的ステロタイプダンジョンだ。
ただしここタガジョウダンジョンは不思議シリーズ仕様。
毎回内部構造が組み変わるのでマッピングの意味があまり無い。
しいていうなら撤退時ルートの事前確認くらいか。
勿論そうならないことを祈るが。
それにしても第一層から毒持ちとはね……
初心者向きなアオバダンジョンとの差を改めて実感する。
ゲームならともかく現実世界の毒はかなり厄介だ。
汎用解毒薬があるからいいものの、通常なら一時間もしない内に意識不明、半日でお陀仏である。
毒スライムと対峙の際は、細心の注意を払わねばなるまい。
(ちょ、ちょっといいか?)
(うん?
どしたの、ミズキちゃん?)
(ショウの奴――いったいどうしたんだ?
ダンジョンに入ったら急にしっかりしてやる気に満ちて)
(ああ――多分アレも現実逃避の一種だよ。
きっと探索業に没頭する事でさっきの出来事を上書きしてるの。
だから気付かない振りしてあげて)
(なるほど……触らぬ何とやら、だな)
(そうそう)
何やらこそこそ話し合う二人。
いったい何を話しているのやら。
まあ、たぶん俺には関係ない事だろう。
雑事に耳を貸さず神経を研ぎ澄ましていく。
眼に視えない魔力が俺から放たれ、水面に投げた石波紋の様にうねりを上げて広がっていき、曲がり角に潜む毒々しいスライムを補足する。
その数三体。
ちょうどメンバーと同じ数だ。
「ふたりとも、その先曲がり角に毒スライム三体だ」
「ショウちゃん、分かるの!?」
「ん……最近【円】に目覚めた」
「本当に!?」
「まあそれは嘘だが……似たような力を操れるようになったのは確かだ。
どうもあのダンジョンマスターとの接戦で簡単な魔力制御を覚えたらしい。
攻撃に転換できるほど強くはないが、探査は可能だ」
「凄いな、ショウは。
盗賊系職、形無しじゃないか」
「本職には劣るさ。
俺が出来るのはあくまで敵の補足だけ。
宝箱の開封や罠の解除は出来ない」
「それでも凄いよ。
人間ソナーな感じ?」
「そこまで便利じゃないけどな。
まあ入院している間、時間だけは沢山あったんでな。
のんびり休養していた訳じゃないのさ。
それでどうする?
俺達と同じ、ちょうど三体だ。
ひとり一体ずつで担当しようと思うが……構わないか?」
「OK]
「異存はない」
「うし。
あと、もう一点なんだが……
今回の探索は、緊急時以外コノハの自爆魔法は封印しておこうと思う」
「――うえ?」
「――どうしてだ、ショウ。
アレは便利だろう?」
「その利便性ゆえに、だ。
アレに慣れると速攻強くなれるが――中身が追い付かない。
力量に技量が及ばなくなるんだな。
俺達は十分以上に強くなった。
だからしばらくは実戦で勘を養った方がいい」
「――なるほどな。
ならば久々に斧を振るうか……【武装】!」
「そういうことなんだね。了解~【武装】!」
俺の解説を受けた二人が武器を顕現させる。
鋼をも穿つ鋭い槍に巨岩をも断ち切る剛斧。
こうしてみると壮観の一言だ。
俺も腰元に佩いた刀の鯉口に指を掛ける。
「んじゃ、気軽に行くとするか」
「は~い」
「了解した」
軽い助走からターゲットへ向け全力疾走。
戦闘が始まった。




