第63話 貞操クライシス
「これでボクたち、もっと頑張れそうです」
「本当にありがとうございました」
精神的なデメリットがあるものの、素晴らしい装備を用意してくれたマイスター二人へと礼を述べるコノハとミズキ。
タイプは違えど美少女二人の真摯な礼に、魔女は上機嫌だ。
工藤さんも「どういたしましてェ~」と愛嬌のあるウインクで応じる。
「頑張ってね、二人とも」
「はい、レイカさん」
「これからもお世話になります」
「うんうん。眼福だわ♪
こういう役得があると仕事の励みになるのよね。
そうそう、もしそこのケダモノに何かされそうになったら相談なさい。
……捻り潰して役立たせなくするから」
「あはは。
それはまだ大丈夫ですよぉ……多分」
「……そうだな」
「なんで急に自信なさげなんだよ、二人とも!
そこは嘘でもいいからフォローしてくれよ!」
「だって……ねえ?」
「――ああ。
ショウは無自覚なのをそろそろ改善すべきだ」
うんうん、と瞳で通じ合う二人。
意味が分からない。
「あらん、大丈夫よぉ~?
もしそうなったら、アタシがたっぷり可愛がってあ・げ・る」
「全力でお断りさせて頂きます、はい」
童貞より先に処女を喪いたくない。絶対に(涙)
真剣に貞操の危機を感じた俺は二人を促し工藤さんの執務室を後にする。
さてレイカさんとの遭遇で順番が逆になったが、装備を受領したなら次は手続きが必要だ。
アオバダンジョンとタガジョウダンジョンでは認可先が違うのである。
探索者証は共有しているのでそんなに時間は掛からないらしい。
だが申請書類などに記載する手間を考えるとうんざりしそうだ。
ああいうのって、簡略化できないのかね?
「そう簡単にはいかないのですよ、狭間様。
それが行政機関の既得権益なのですから。
面倒でもご理解下さい」
そんな雑談をしながら工房を回る俺達に声を掛けてくれたのは、換金所の主ことウルカさんだ。
パチンコの換金所風からお洒落な質屋の換金所風にバージョンアップされているカウンター内で俺達に向かい頭を下げる。
慌てて返礼する俺達。
そうか、レイカさんが言っていた通り彼女もこっちに来てたのか。
ミズキ達の救出劇以降会う機会がなかったが、彼女の依頼が無ければミズキ達を救えなかった。
さらに彼女の提供してくれたハイポーションが無ければ幾人か命を落としていたかもしれない。
まさにパーティの恩人だ。
「お久しぶりです、ウルカさん」
「こないだはありがとうございました!」
「ショウ達に私達の窮地を知らせてくれたのはウルカさんだと聞きました。
お陰様で命を救われました」
「はい。
皆さま、お元気そうで何よりです。
それと倉敷様。
わたくしは顔馴染みである貴女方を救いたいと思っただけ。
我儘な私情なのですから。
どうかその事は気に病まないでほしいです。
こうしてお会いできて――本当に良かった」
「それでも……それでも礼を言いたい。
私を……何よりもミアとミイを救ってくれて、本当にありがとう」
最前線で戦う俺達は誰よりも知っている
ダンジョン探索は無慈悲で残酷だという事を。
俺も知り合いを幾人も、何よりパーティメンバーを亡くしている。
だからこそ予想外の善意には最大限感謝するのだ。
涙もろいのかミズキは感涙しウルカさんの手を握り幾度も礼を言い、ウルカさんも笑顔で肩を支え応じている。
二人のこの姿を見れただけでも命を賭した価値はあったな。
コノハと見つめ合いこっそりサムズアップをくっつけた。
ただ、いつまでもこうしてはいられない。
ミズキが落ち着いた頃合いを見計らい、今日からダンジョンに潜る事を告げる。
安全第一で頑張って下さい、と激励された。
後ろ髪を引かれつつも工房を出た俺達は、酒場前に設けられた業務カウンターで申請し、順番を待つ。
職員達のいかにもお役所仕事な対応に辟易しつつも、これも探索業の一環か……と諦め建設的な事に時間を使うことにする。
ミズキはともかく俺達はタガジョウダンジョン初挑戦だ。
探索中の立ち回りなどを改めて確認する打ち合わせをし始めたその時――
「……生まれる前から好きでした!
結婚を前提にお付き合いしてください!」
「うあああああ!!
何々!? 何が起きたの!?」
コノハが、変態に襲われた。




