第56話 節制プロゥビション
「はい、ショウちゃん。
あ~んして♪」
「あっずるいぞ、コノハ。
抜け駆けはしないって約束したじゃないか!
なら、私も……あ~ん」
俺の好物である若鶏の唐揚げを箸で摘み、俺へと迫るコノハ。
上機嫌でケラケラ笑いながらもグイグイ来る。
ただでさえ普段から無防備なのに、今は守備力0の状態だ。
はだけた浴衣から覗く脚が危険な位置まで捲り上がっている。
その隣で何やら愚痴た後、同じく唐揚げを手に俺へ迫るミズキ。
こちらはこちらで、標準サイズの浴衣へと収まりきらない規格外の胸元が大変な状況である。
年頃の二人のあられもない姿。
眼福というよりその警戒心の無さが逆に不安になる。
気分はまるで、おとんかおかんだ。
「お、お前らな……
程々にしておけとあれほど言っただろ?
それに腹いっぱいだから唐揚げはもういいよ」
「む~~~~~~~~!!
ボクの愛情を拒否するんだね、ショウちゃんは!」
「いや――随分と安過ぎないか?
お前の愛情とやら」
「そうだそうだ!
ショウはお腹いっぱいなんだぞ。
ならば――私のを食べるがいい」
「え~っとミズキ?
満腹の意味を理解してる?
だから唐揚げはいらないって」
「なっ……なんだとぉ~
私の誠意は不要なのか、ショウ!」
「いや――随分と油塗れじゃないか?
お前の誠意とやら」
――どうしてこうなった?
色々説き伏せるも、全然会話が通じない。
酔っ払い相手に理性を期待した俺が馬鹿だったのか。
溜息を交えながら……俺はこうなった経緯を思い返すのだった。
親父との死合(試合ではない、個人的に)の後――
ミハルさんが俺の退院祝いにと、母屋に御馳走を用意してくれており、それを皆で食べる事になった。
汗をかいた俺の為に沸かしてくれたお風呂を頂いた後だったので、凄く嬉しい。
疲れた身体が栄養を欲しており腹の音もうるさかったからな。
何故かコノハたちも俺の後に二人で一緒に入浴していたが。
コノハから聞いた檜風呂に興味があるらしい。
女性同士ってそういうところ妙に抵抗がないよな。
温泉気分でミハルさんの用意した浴衣に着替えてたし。
まあ御馳走といっても質実剛健を旨とする我が家。
内弟子として賄いがてら家事をしてくれているミハルさんが用意したのは基本俺の好きな家庭料理の数々だ。
若鶏の唐揚げ。
肉じゃが。
旬の野菜をふんだんに使った天ぷら。
炊き込みご飯に豚汁。
その他箸休めや香の物などを盛りだくさん。
個々としてみれば決して豪華ではない。
しかし一品一品に手間暇掛けられており、本当の意味で馳走という感じがした。
久々に手合わせした俺の腕前に、気難しい親父も納得がいったらしく珍しく同席を申し出た。
こうして旧知の仲であるコノハはともかく新しいパーティメンバーであるミズキを親父に紹介後、宴が始まったのだが……
狂乱の切っ掛けは祝いの酒と称した親父秘蔵の日本酒の登場だった。
有名な蔵元が年に数十本しか卸していない幻の一品。
一流職人が一流食材を贅沢に技巧した品に興味が惹かれた。
そこで親父に頼み込んで一杯だけ貰ったのだ。
飲んだ瞬間俺はびっくりした。
濃厚でありながらフルーティで上品な香りと舌ざわり。
喉を流れるのでなく通り過ぎる様な喉越しに余韻。
まさに一級……否、特級。
感慨に耽る俺を見たコノハとミズキが自分たちも、と騒ぎ出した。
勿論お堅い親父は止めた。
しかし今日は祝いの席だからよろしいじゃありませんか、というミハルさんの何故か強気の押しに負けて、一杯ならば……と二人にも勧めた。
その結果がこれである。
たった一杯で二人ともノックダウン。
完全にクダを巻く始末。
なまじ口当たりがいいのが仇になった。
飲み干した瞬間、にへら~と笑い出すコノハ。
赤ら顔であつい~と胸元に手で風を送り込むミズキ。
笑い上戸に脱ぎ上戸。
とんでもない奴等だ。
まだ素面の俺をターゲットに絡み始める二人を必死にあしらう。
助けを求め親父とミハルさんを探すと、状況の悪化を悟ったのかいつの間にか煙の様に二人とも消えていた。
音も気配もなくどうやって!?
これだから達人は嫌だ。
親父の席に残されたのは諸悪の根源である酒。
ハッと気付くより早く二人はすでに瓶を確保、止める間もなく傾けていた。
その後は冒頭の通りだ。
俺も仲間に引き摺り下ろそうとゾンビの様に群がる二人。
風呂上がりではだけた浴衣に上気した肌。
動くたびにチラチラしており危険がデンジャラスである。
こいつら二次会じゃなく一次会でもイケるタイプだな(溜息)。
絶対禁酒をさせてやる――
俺は二人を相手にご機嫌取りをしながら固く誓うのだった。
昨日、食べ放題に行きました。
するとね、男子中学生一人に対し女の子8人が左の席にぞろぞろ。
何かな~と思ってたら周囲に響くバースデーソング。
ああ、誕生日なのか。
この時点で爆発すればいいのにと思ってましたが……真骨頂はその後。
右隣に座っていた親子連れ。
3歳ぐらいの女の子がでっかいパフェを作ってきました。
ああ、食べ放題だからいっぱい食べたいのかな?
と思ってたら……何故かお母さんと一緒に男子中学生のところに。
困惑顔の男子中学生にパフェを差し出しながら
「は、ハッピーバースデぇ」
と恥ずかしがりながらも告げました。
もおね、レストラン中が大歓声。
どこの天使ちゃんだよ。
黄金の精神か何かなの?
男子中学生も周りの女子に囃し立てられながら女の子に腕を広げハグ欲求。
照れながらも抱っこされる女の子。
イケメンは顔だけじゃなく心もイケメンなのね。
結論から言うと……リア充なんて爆発すればいいのに(涙)




