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町中で声をかけられるほどイケメンな彼を振ってしまった  作者: Yoakira


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7/10

第7話


午後の仕事を終えて家に帰っても。


今日の出来事が、頭から離れなかった。


棚の上の箱を取ってくれたこと。


見つめ合ったこと。


そして、あの優しい笑顔。


「……。」


思い出すたびに、頬が熱くなる。


私は洗面台の鏡に映る自分を見つめた。


「……もう少し、可愛かったらな。」


ぽつりと漏れた言葉。


次の日。


仕事帰りにドラッグストアへ寄った。


化粧品売り場には、たくさんの色や道具が並んでいる。


ファンデーション。


アイシャドウ。


リップ。


何を選べばいいのか分からないまま、それでも初心者向けと書かれたコスメを少しだけ買って帰った。


家に着くと、スマホで「初心者 メイク」と検索する。


動画を見ながら、一つずつ真似してみる。


「えっと……こうかな。」


スポンジでファンデーションをのばしてみる。


でも、なんだかムラになってしまう。


次にアイライン。


慎重に引いたつもりなのに、左右で全然違う。


「あっ……。」


慌てて直そうとして、余計ににじんでしまった。


鏡に映る自分を見て、小さくため息をつく。


「……変。」


何度やり直しても、うまくいかない。


最後にはクレンジングで全部落としてしまった。


鏡の中には、いつもの自分。


私はタオルで顔を拭きながら、小さく笑う。


「やっぱり……私には向いてないのかな。」


少しだけ期待していた分、胸が痛かった。


買ったばかりの化粧品を、そっと引き出しへしまう。


「……もう、いいや。」


そう言ったはずなのに、胸の奥は少しだけ苦しかった。


可愛くなりたかった。


ただ少しでも、あの人の隣で恥ずかしくない自分になりたかった。


ベッドへ横になり、目を閉じる。


だけど、浮かんでくるのは。


棚の上の箱を取ってくれたこと。


優しく目を合わせてくれたこと。


そして――あの笑顔。


「……また、会いたいな。」


小さくつぶやいた声は、静かな部屋に溶けていった。





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