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第6話
午後の店内。
『綾瀬さんは俺にとって大事な人だった』
その言葉がまだ胸に残りつつ。
棚の上にある箱に手を伸ばしていると。
すっと腕を伸ばすだけで、箱を簡単に取る人がいた。
ふと顔を上げると、蓮先輩と目が合った。
優しく細められた目。
どこか嬉しそうな表情。
気づけば私も笑っていた。
言葉はない。
でも、お互いに目をそらさない。
蓮先輩は照れたように少しだけ息を漏らすと、そのまま満面の笑みを浮かべた。
その笑顔につられて、私も自然と笑顔になる。
何も話していないのに。
ただ見つめ合っているだけなのに。
さっきまであった不安が、胸の奥がじんわり温かくなっていく。
「……。」
「……。」
数秒だったはずなのに、とても長く感じた。
「おーい。」
突然、後ろから声が飛んできた。
「二人とも、仕事中だよ?」
スタッフの一言に、私たちは同時に我に返る。
「あ……!」
慌てて視線を外す私。
蓮先輩も照れ笑いを浮かべながら、「すみません」と頭をかいた。
私は箱を抱えたまま顔が熱くなる。
さっきまで見つめ合っていたことを思い出すだけで、恥ずかしくてたまらない。
そんな私を見て、蓮先輩はもう一度だけ優しく笑った。
その笑顔を見た瞬間。
また胸がどきりと鳴った。




