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町中で声をかけられるほどイケメンな彼を振ってしまった  作者: Yoakira


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第4話 

「……ごめんなさい」


その言葉だけが、帰り道も頭の中で何度も響いていた。


私は蓮先輩を振った。


好きなのに。


好きだからこそ。


自分には隣にいる資格がないと思ってしまった。


翌日。


朝から気持ちは重かった。


制服に着替えながら鏡を見る。


相変わらず地味な自分。


「……何やってるんだろ。」


小さく呟いて家を出た。


今日はバイトの日だった。


一番会いたくて。


一番会いたくない人がいる。


店に着き、更衣室へ入る。


「おはよう。」


スタッフが次々に挨拶をする。


私も笑顔を作る。


「おはようございます。」


着替えを終えてホールへ向かう。


ドアを開けた瞬間。


「おはよう、美咲さん。」


聞き慣れた声だった。


顔を上げると、蓮先輩がいつも通り立っていた。


まるで何もなかったように。


「……お、おはようございます。」


私は目を合わせられなかった。


きっと気まずい。


そう思っていたのは私だけだった。


開店してしばらくすると、お客さんが一気に増えた。


「美咲さん、オーダーお願い。」


「はい!」


「アイスカフェラテ二つです!」


「了解。」


蓮先輩は普段と何も変わらない。


仕事中はいつも通り。


分からないことがあれば教えてくれる。


忙しければフォローしてくれる。


その優しさが嬉しくて。


同時に苦しかった。


(どうして普通でいられるんだろう。)


私は振った側なのに。


こんなに苦しいのに。




昼のピークが終わり、店内が落ち着いた頃。


スタッフたちはカウンターの奥でドリンクを飲みながら雑談をしていた。


「蓮くんさ。」


大学生のアルバイトの一人が笑いながら言う。


「そういえば最近、美咲ちゃんと帰ってない?」


「前はよく一緒だったじゃん。」


私はグラスを拭く手を止めた。


(やめて……。)


そんな話題になってほしくなかった。


蓮先輩は洗い物をしながら、「ああ」と短く返事をした。


「最近は別々。」


「え、なんで?」


「ケンカ?」


「もしかして振られた?」


冗談半分で笑いが起きる。


普通なら、蓮先輩は笑ってごまかすと思った。


でも。


「うん。」


その場が静まり返る。


「え?」


「振られた。」


あまりにもあっさりした口調だった。


みんなが目を丸くする。


「え、マジ?」


「蓮くんが?」


「誰に?」


蓮先輩は私の方をちらりと見た。


私は固まって動けない。


そして、蓮先輩は何でもないことのように言った。


「美咲さん。」


空気が止まる。


全員の視線が私に集まった。


「えっ……。」


誰かが小さく声を漏らす。


「え、ちょっと待って。」


「蓮くん、本気だったの?」


「うん。」


蓮先輩は迷いなく頷く。


「俺、美咲さんが好き。」


「今も。」


その一言で、更衣室の前まで静まり返った。


私は顔が熱くなるのを止められなかった。


「れ、蓮先輩……。」


「隠すことじゃないし。」


蓮先輩は少し笑う。


「振られたのは事実だから。」


「でも、好きなのも事実。」


誰も何も言えなかった。


いつも蓮先輩に話しかけていた女子スタッフでさえ、驚いた表情で私を見ている。


「……なんで美咲ちゃん?」


その言葉が胸に突き刺さる。


やっぱり。


みんなもそう思うんだ。


"私なんか"って。


私はずっと、それが怖かった。


蓮先輩の隣に立ったら。


きっと誰もが思う。


「もっと可愛い子がいるのに。」


「釣り合ってない。」


だから断った。


好きだったから。


好きだからこそ。


蓮先輩が笑われるのが嫌だった。


その言葉に、蓮先輩は少しだけ眉をひそめた。


「"なんで"じゃないよ。」


静かな声だった。


「好きになるのに理由なんて、人に説明できるものじゃない。」


少し間を置いて、続ける。


「可愛いとか、美人とか。」


「そういう話じゃない。」


「仕事に一生懸命で。」


「間違ってることはちゃんと注意してくれて。」


「ちゃんと人を見てくれる。」


「そういうところを好きになった。」


私は俯くしかなかった。


嬉しい。


でも、それ以上に恥ずかしかった。







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