頑張れ!兄さん
眼下で黒髪の少女と言い合っているリアンにテイラーは思わず目を見張った。
「あ、リアン君じゃーん。」
そうザルフが無遠慮に指をさす。
「そうだけで、なんか言い争ってね?」
「うん、何か言い合ってるね。」
二人は身を屋根にひそめながらおとなしく?話を聞くことにしたようだ。
「じゃあ今すぐ敵のところに向かおうぜ。このままだと出られないのかもしれないんだろ?」
「だめです。まだ私たちのほかに生存者がいるかもしれません。彼らをまずは探しましょう。」
「だがなぁ、もう三十分も歩いてる。もう俺らのほかに生存者なんていないだろ?」
人影しかない周りを見渡しリアンが諦めたように言う。
「まだ半分も回っていません。これからです。」
「うかうかしているともう現実に戻れなくなるかもしれないぞ?」
「はぁ、猶予は一日あります。まだまだ大丈夫です。」
「本当にか?」
ぶすっとリアンが文句を垂れる。
その瞬間黒髪の少女から冷気なようなものがもれ出る。
「何か言ったかしら?」
振り向いた少女の人を殺しそうな笑みにリアンはただただ首を振ることしかできなかった。しかし、それを屋根の上から眺める者もいる。
「君の兄、なんか印象違くない?」
「ああ。なんか情けないというか。」
「嫁の尻に敷かれる夫ってあんな感じなのかね?」
「あー、そうなるとうちの兄は一生嫁の尻に敷かれてそうだな。」
そう陰で陰口を言っていたとき、少女が抜き放った剣の切っ先をこちらに向けてきた。
「そこの屋根の上にいるもの!今すぐ降りて来い!」
「あ、ばれちゃったね。」
「しゃあない、降りるか。」
いかにもだるそうに屋根の上で起き上がり、そのまま飛び降りる。
「やあやあ麗しき少年少女。初めましてであり久しぶりでありまた会ったね。」
華麗に一礼を決め少女に向き直る。
「ワタクシの名はありませぬが皆さまがつけた名前でいうのならば【夜】でしょうか。」
少し首を傾けたテイラーはリアンと少女にとってはひどく不気味に見えた。
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