誘拐
大変申し訳ございません。
主人公の兄、リアンの名前をリアムと表記していたので訂正いたします。
2026年6月13日22時50分
その日は雨だった。
雷鳴がとどろき、窓の硝子を雨水が叩いた。
まず、吉日ではないことは確かだろう。
◆▲◆
「兄上、当分は雨はやみそうにないですね。」
「ん~、そうか。残念だなぁ。今日は父上が剣の稽古をつけてくれると言っていたのに。」
「まぁでも、明日にはやむと思うので明日やればいいんじゃないんですか?」
「ま、そうだな!」
ニカッと笑って、さっきまでの雰囲気が嘘のように明るくなる。
「でも、なんか嫌な予感がするんだよなぁ。」
案外、リアンの勘は当たる。
流石は主人公という事だろうか。
「何で?あ、もしかして父上が剣の稽古の約束をすっぽかしたからとか?」
「いやないでしょ、父上ああ見えて約束は守るタイプだから。」
「ふふふ、そうだね。」
それでも少し不安そうな顔でリアンが言う。
「ん~、でもなんか落ち着かないから部屋に戻って剣でも振っとくよ。」
「わかった。じゃあミュロス、兄上を部屋まで送り届けてくれる?」
壁際に控えていたメイドを呼び寄せた。
「承知いたしました。」
「お、ありがとうよ。」
ミュロスを付けたのは寄り道をさせないためだ。
困ったことにうちの兄は好奇心旺盛どころじゃないほど好奇心旺盛ですぐ寄り道をしてしまうのだ。
「あ、僕は昼ご飯まで書庫で本を読んでるからそれだけお願いね。」
「わかりました。」
それだけ言ってミュロスはリアンと共に去っていった。
「やっぱり、雨の日は何か落ち着かないな。」
窓の外を見つめながらふぅと小さくため息を吐く。
いつ『教団』から誘拐されるか分からないので最近の僕はピリピリしている。
(今思えば、この道もだいぶ慣れたなあ。)
少ししてから書庫に行く道を歩いている。
もう四年も書庫に通っているのだ。自分の部屋からの行き方など当然暗記している。広い廊下に響くのは僕の足音だけなのでどこかむなしさを感じる。
「おい、抵抗はするな。」
その言葉を認識すると同時に自分の首元にナイフが添えられていることを知覚する。
「なんで?」
「貴様が知る必要はない。」
平坦な声。まさしく暗殺者というべき無機質な声だ。
「じゃあ僕も抵抗しないと、ねッ!」
懐に隠していた短剣をを振り向きながら抜き、暗殺者の心臓に突き立てようとする。
しかし、いとも簡単によけられ、無防備な胴、ではなく腕をつかまれ、そして、意識が落ちた。
視界の端では、ミュロスが蒼い顔をして叫んでいるのが見えた。
そして、数人の騎士に囲まれていたリアンもいた。
(あにうえ、あにうえの勘は当たったね。)
◆▲◆
はぁ~。
やってしまった。
これは完全に俺の落ち度だ。書庫に早く行きたいがために抜け出さなければこんなことにはならなかったとは思う。いや、どっちにしろあのまま部屋にいても同じようなことになっただろう。
あぁ、父上にちゃんと護衛いりますって言わなかったからだなぁ。
でも、どうしようか。
今俺が恐らくいるのは『教団』施設だろう。目が覚めたら独房に入れられていた。正直言って、怖い。多分ここは地下なのだろう。声を上げても返事はなかったし、音も何もしない。
まず、今は何日なのだろう。
それだけが知りたい。
でも、なぜか眠い。ということは今は夜なのだろうか?
まあいい。とりあえず、寝よう。
お世辞にも寝心地がいいとは言えないベッドでも疲れがたまっていたようで思いのほかぐっすり眠れた。
◆▲◆
「おーい、起きろ。」
そういって身体を揺さぶられる。
すると、不思議なことにベッドはなく、自分の独房の床で寝ていた。
まわりを見渡すと、そこには見目麗しい少年少女たちが俺のことを取り囲んでいた。
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