新・家
「さて、今日からここがお前の住む所だ。」
そういって紹介されたのは男とあった酒場だ。
「ここに住むのか?」
「ああ。二階の一室を使ってくれ。マスターの許可は取ってる。」
「あんたの家じゃないのか?」
「それはムリだ。血の気が多いやつが多いからな。」
「ふ~ん。」
恐らく仲間だろうなと予想する。
「ま、いつも通りに生活してくれればいいさ。ああ、その髪色と目の色は変えた方がいい。」
「まあ、流石にな。意地張ってちゃあ見つかるからな。」
「じゃあまた。」
「んじゃ。」
バタンと扉が閉められ部屋を見渡す殆ど元の家と同じ間取りの部屋だ。
「さて、詐欺師。」
「何だい?」
「尋問のお時間だ。」
「神にかい?背信者もここまでくると凄いね~。」
茶化すようにベッドの上でじたばたしながら呑気に言う。
「俺の思考を誘導したのはお前か?」
その言葉ににやりとザルフは顔を歪める。
「だとしたら?」
「お前を殺す。」
対面に椅子を持ってきて座ったその顔は逆光によって見えないが少なくとも不機嫌なのは確かだ。いや、怒っている。
「たしかに、君の思考を誘導したのは僕だよ。」
その瞬間、ザルフが持ち上がった。血を吐いている。腹のあたりからも血が出ているので透明な何かで腹を刺されて持ち上げられているのだろう。
「神の僕を殺すことができると思っているのかい?」
尚も余裕の笑みで挑発するザルフの方にテイラーは顔を向ける。その顔は光に当たっているにもかかわらず真っ暗だった。
「はったりだな。それはお前も良く知っているだろう。」
「それも含めて大丈夫だと言っているんだよ。」
さっきよりも少し緊張した面持ちでも余裕の笑みでザルフは言葉を返す。
「さあな。だがこれは今、世界で一番凶悪な刃であることは確かだ。」
やはり、テイラーの顔にかかる闇は揺らがない。
「フ、フフフ、やってみるかい?」
「ああ、やってみるか。」
そうしてさらにザルフが上に上がる。腹からさらに血が出てきている。少し苦痛に顔を歪める。それを見て少し闇が深まった気がした。
「カオス理論。」
小さくザルフが呟いた。
「何だって?」
ありえないことを聞いたかとのようにテイラーが聞き返す。いつの間にか顔の闇は晴れていた。
「僕の権能さ。」
「俺の過去も知ってるってわけか。」
忌々しそうにテイラーが椅子に腰を落とす。いつの間にかベッドの上にザルフが落ちていて平気そうな顔をして起き上がる。
「やれやれ、災難だったよ。」
「あぁ、そうだな。お前の権能を教えろ。」
「えー、さっき言ったよ。」
「詳細に、だ。」
急かすようにテイラーがザルフを掴む。
「やめてよー。まだ傷治ってないんだから。」
「嘘こけ。」
「はいはい、え~とね、」
その後、朝まで尋問は続いた。
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