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歓迎会

「ワー、デッケー」


お手本のような棒読みをするテイラーの目の前には体育館のような大きさの建物がある。正確には約二倍の大きさだが。


豪華絢爛なその見た目にたがわず中も豪華絢爛だった。ギラギラと輝いているわけではないのでちょうどいいだろう。もう新入生歓迎会は始まっているようで貴族の生徒が真ん中でダンスを踊っていたりする。平民の者はどちらかと言うと用意されているご飯を食べているものが多い。俺がいるのは少し上のバルコニーから見ているので顔が良く見える。


(それにしても、あのしけた面はどうにかならんかねえ。)


ほぼ真ん中。そこに、ひと際人が集まっている。顔が知らないものが多いがその中で一人だけ知っている顔があった。赤い髪に瞳をもった俺の兄、リアン・シュヴェーアトだった。沈んだ顔をしている。この楽しいパーティーにはいささか似合わない。おそらく、周りにいるのは高位貴族や王族だろう。


(仕方ない、兄の為に一肌脱いであげますか。)




そういって、俺は建物を出て寮に戻り、着替え始める。ここまで、僅か五分。俺の使う魔力によって身体強化をし、全速力で走る。そうすると、スポーツカー並の速度が出る。俺が着るのは俺が持っている服の中で一番高級で、一番使わないと思っていたものだ。貴族のパーティーに出席するときのためのものだ。俺の髪と瞳の色である群青色が多く使われている。


建物に戻ると、まだ続いておりあいかわらずリアンは沈んだ顔をしている。やれやれ俺が一肌脱いでやるか。


情報屋は相手にそこにいると悟らせないようにいるのが大事だ。なので俺は隠密に秀でている。昔は隠密に秀でていなかった時に痛い目見たからな。だが、そのおかげで誰にも止められることなく会場に入りリアンの少し遠くに立つ。


かなり成長したと思うがまだまだ子供だな。俺はリアンの3m60cm前の椅子に座った。誰も気づいていない。


「フフッ」


俺は、微笑と共に席を立ち兄上がくれたフリージアの花をまき散らしながら俺はリアンの下へと歩いて行った。視界の中で高位貴族が目を見開いてこちらを凝視している。それもそうだ。突然知らないやつが花をまき散らしながら出てきたのだ。驚くだろう。


「兄上、どうしたんですか?沈んだ顔をして。この会にはとても似合いませんよ。」


「あ、え」


信じられないものを見るかのような目で俺の方を見る兄上の手を取って椅子から立たせる。その目を見ながら少しはにかむ。そうすると、リアンは顔を赤くした。


「な、なあ。テイラー。」


「はい。何ですか?兄上。」


意を決したようなその問いかけに笑顔で答える。ちゃんと笑顔ができているだろうか。少し不安になる。


「お前、ずっとどこにいたんだよずっと。探してたんだよ。なぁ、戻って来いよ。また一緒に過ごそうぜ。」


「あ、あはは。それはムリですね。」


「何でだ?」


「でも、大丈夫ですよ。ずっと、兄上のことは見守っていますから。寂しがらないでください。」


「それはどうい・・・」


「おっと、それ以上はだめです。」


何かを言おうとしたリアンの口に人差し指をそえ、黙らせる。


「そろそろ、お別れです。でも、大丈夫。ずっと見ていますよ。だから、そんな顔しないでください。でも、どうしても会いたくなったら探してみてください。見つからない自信があるので。それでは。お暇させていただきます。」


「え、おい。テイラー!」


そう言って、リアンが手を伸ばしてくるがその手が届くわけもなくテイラーは虚空に消えた。しかし、その手にはあの日送った花が握られていた。

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