咆哮する次元獣を追え! 対次元獣防衛チームの決意
大型輸送ヘリ“チヌーク”が轟音を響かせながら山岳地帯の空域を疾走すること――15分。
機体は目的地の上空へと到達した。
激しい振動の続く機内の中、氷助匠は重厚なタクティカル・ヘルメットのバイザーを上げ、壁面に備え付けられた丸い円形の窓から外の様子を鋭く伺う。
「……見えたぞ。目標、直下に確認」
氷助のその一言に、他のメンバーも次々と窓へと引き寄せられた。トニー、聖、ジョージ、そして南方宗二の四人が、それぞれの円窓から外を覗き込む。
そこにあったのは、彼らの想像を遥かに超えた光景だった。
――ドスンッ……! ドスンッ……!
大地を揺るがす凄まじい足音が、上空を飛ぶチヌークのエンジン音をもかき消すように響き渡る。
視線の先を歩くのは、黒光りする硬質なウロコに包まれた異形の巨獣――次元獣だった。額の一本角が不気味な赤い光を放ち、その周囲の木々や岩石を虫けらのように踏みにじりながら進んでいる。
「なんて、デカさだ…!」
トニーが思わず息を呑み、拳を固く握り締める。聖も無言のまま、険しい表情でその巨体を凝視していた。
そんな中、南方宗二は分厚い眼鏡のブリッジを押し上げ、冷徹なまでの分析眼で次元獣のシルエットを測るように見つめると、淡々と言い放った。
「ふむ…全高はおよそ“52メートル”といったところだね。なかなかの巨体だ」
「52メートルだって…!? 笑えない冗談だな、南方。あんなのが暴れ回ったら、ひとたまりもかねぇぞ!」
ジョージが即座に手元の端末で周辺の地形データと次元獣の移動予測ベクトルを弾き出しながら、声を荒げた。
「だからこそ、我々が少しでも、ここで足止めしなければならない」
氷助はガチャリとアサルトライフルの安全装置を解除し、仲間に視線を向けた。
「パイロット! "次元獣"の進行方向を先回りしつつ、奴から少し離れた安全圏の尾根伝いに着陸しろ! これより降下する!」
『了解! 急降下する、しっかりつかまって下さい!』
チヌークは大きく機体を傾け、猛烈な風圧を切り裂きながら、次元獣の進行ルートから外れた木々の生い茂る開けた斜面へと急接近する。
ゴオオオッ――!
吹きすさぶローターの嵐の中、機体が荒々しく地面に着地した。
リアカーゴのハッチがガチャンと轟音を立てて開き、冷たい山気が一気に機内へと流れ込む。
「よし、行くぞ!」
氷助の号令を合図に、対次元獣防衛チームの五人は次々とチヌークから飛び降り、それぞれの足でしっかりと大地を踏みしめた。
五人の足が山道に定着したその瞬間から、各自の得意分野を活かした極限の作戦が開始される。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
氷助は、ありったけの重火器とロケットランチャーを収納したコンテナから、ロケットランチャーと弾薬を担ぎ持ち上げ、前方の射撃ポイントへと疾走する。
トニーはアサルトライフルと爆薬を携え、次元獣の足止めトラップを仕掛けるべく、崩落した斜面の脇へと回り込み、霧島は持ち前の高い身体能力と直感を活かし、周囲の安全確認と、もしもの際、避難誘導ルートを確保するために高台の岩場へと駆け上がる。
ジョージは、携帯型の戦術ターミナルを広げ、次元獣の弱点となり得るエネルギー反応の解析データと、気象・風向きのリアルタイム演算を猛スピードで処理し始める。
南方は、危険も顧みず、次元獣が撒き散らす特異な生体粒子や土壌のサンプルを採取するため、特殊な採取ケースを手にしながら一歩一歩、その巨大な背中へと息を潜めながら近づいて行く。
各自それぞれの役割分担で行動するも、背後で大地を揺るがす唸り声を響かせながら、次元獣はなおも不気味な咆哮をあげながら、破壊の足取りを緩めることなく、ひたすら前へと進み続けていた――。




