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超次元勇士ゾーンG(グレート)ロボ  作者: 道化師
第三章次元獣総進撃編 ―前編―
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次元獣追跡記録と休息

――午前10時。


秘密基地ゾーン・ハイド・ベースには、緊張感とは少し違う、いつもの三人の空気が流れていた。


「おっしゃ、揃ったな!」


中央の巨大な多画面システムモニターの前に、タケル、ケン、モンタが並ぶ。モニターには、これまで相対してきた"次元獣"たちの記録が鮮明に映し出されていた。


「さて、まずは復習といこうじゃあねぇか!」

「…はいはい」


タケルが腕組みをしてモニターを見上げると、ケンはやや呆れ顔を見せつつ、さも当然のようにコンソールへ歩み寄る。カチャカチャと小気味よい音がベース内に響き渡った。ケンの指先はキーボードの上で迷いなく踊り、"次元獣"のデータが次々と切り替わっていく。


【次元獣No.01:ドニューノ】


「まずは、最初に出てきたコイツだ!人型植物の次元獣、ドニューノ。……正直、今思い返しても不気味だったな」


画面には、蔦を絡ませ、禍々しい緑の植物の触手を放つドニューノが映し出された。


「ドニューノ……全長52メートル。あの時の衝撃は忘れもしないよ。ビルがまるでスナック菓子みたいに崩れていったんだよね」


モンタが苦々しげに言うと、ケンが冷静にデータを追記する。


「そうだね。それにあの時の僕たちははまだ、ゾーンG(グレート)ロボの操作もまだ、完全に慣れてなかったからね」


ケンはキーボードを叩きながら、ドニューノのデータを詳細に展開する。


「データを確認すると、コイツの最大の特徴は、全身のつるの硬度と柔軟性だ。鞭のようにしならせて広範囲を薙ぎ払うかと思えば、一本に束ねて巨大な槍のように突き刺す。植物のくせに、機動力と破壊力が両立しすぎてるんだよ」

「槍の突き刺し攻撃、危うく俺の自慢の腹筋が貫かれるところだったぜ!」


タケルがドヤ顔で冗談めかしに言うと、ケンが「タケル、それは自慢の腹筋というより、ただ、運が良かっただけだからね」と即座にツッコミを入れられた。


【次元獣No.02:ガボラス】


次に表示されたのは、首回りに強固なヒレのような甲羅を持つ、ガボラスだ。


「コイツは硬かったな。ゾーンG(グレート)の物理攻撃がなかなか通らなかったのを思い出すぜ…」


タケルが回想すると、モンタが「ゾーンG(グレート)のバトルアックスが跳ね返された時は、ビックリしたよねー」と肩をすくめた。


「ガボラス…コイツの電磁シールドは本当に反則だった」


タケルがモニターを指さす。


「…ハァ、それだけじゃない。装甲強度が異常に高く、G(グレート)ロボのバトルアックスの攻撃を弾く程だからね。首回りのヒレが盾の役割を果たしていて、弱点を狙うのが難しかった」


ケンがため息混じりに言うも続けて、ケンは図面を操作した。


「ガボラスの6枚のヒレは、電磁気学的に見ると巨大なコンデンサーなんだ。閉じることでエネルギーを溜め込み、展開することで放電を行う。あの時は、全方向に放たれる超高圧電流攻撃を回避するだけで精一杯だった」

「あのスパークを見た時は正直、終わったって、思ったよ」


モンタの率直な言葉にケンはふっと、冷ややかながらも納得したような笑みを浮かべた。


「同感。だけど僕たちは諦めなかった。タケルがガボラスの攻撃を受け止めつつ、僕が考えた案でヤツが開いた隙を見て、タケルがガボラスが再びヒレを閉じようとした瞬間を狙い、腕を直接入れて 『バースト・グレネード・パンチ』で見事倒した」

「えへへ〜♪」


タケルは褒められて、ニヤケ顔をしつつも、ケンはキーボードを叩き、ガボラスが放電と同時に爆発四散する戦闘ログを再生した。三人はモニターに釘付けになり、当時の激闘の記憶を追体験する。


「おっしゃ、次は―」


タケルが声を上げると、モニターの映像が暗転した。そして、静かに、しかし威圧感を持って浮かび上がったのは、あの――リゾートアイランド〘ティル・ナ・ノーグ〙を地獄絵図へと変えた、あの人型次元獣の姿だった。


【次元獣No.03:名前未定】


「コイツか…」


タケルがポツリと呟く。画面の中の次元獣は、他の荒々しい怪獣とは一線を画していた。その立ち居振る舞いはまるで貴族のように優雅で、それでいて冷酷な理性を宿しているように見える。


「あーそう言えば名前、どうする? まだ正式に決めてないよね」


モンタが頭をポリポリと掻きながら尋ねると、タケルは頬を掻き少し考えた後、口を開いた。


「いや〜…アイツ、俺たちの攻撃をまるでダンスみてぇに回避してただろ? なんかこう、立ち居振る舞いがこう……あー、もう!だからさ、コイツのことは"バロン"(男爵)って、名前なんかはどうだ?」

「"バロン"、ね。……ネーミングセンスはさておき、響きとしては悪くないね」


ケンは素早く入力コマンドを打ち込み、ファイル名を『()()()』へと書き換えた。


「で、この"バロン"だけど…解析すればするほど頭が痛くなるよ…」


ケンが画面に表示されたデータを指さし、苦々しい表情で続けた。


「見てくれ、このデータ。ゾーンGグレートロボの装甲は、通常兵器なら、かすり傷一つ付くはずがない」


しかし、メインモニターに映し出されたグレートロボの胸部中央には、深く鋭い一筋の亀裂が刻まれていた。鋼鉄を容易く切り裂く傷跡。


タケルが息を呑む。


「あの装甲をこれほど深く傷つけるとか」

「それだけじゃない。これが一番厄介だ」


ケンが映像を拡大する。そこには、先ほどの戦闘でバトルアックスによって両断されたはずの次元獣の右腕が映っていた。切り裂かれた傷口からは、ドロリとした禍々しい紫色の体液が溢れ出している。だが、それは流血ではなかった。体液は空気に触れるや否や、瞬時に硬質化し、まるで生き物のように蠢きながら新しい皮膚を形成していく。


「自己再生……傷口を塞ぐどころか、新しい皮膚を生成している……」


ケンは顎に手を当てながら、難しそうに顔して分析する。


さらに映像が切り替えられ、モニターには、両目から放たれた紫色の光線がゾーンG(グレート)ロボの全エネルギー解放――『ゾーンG(グレート)ビーム』が、バロンの放つ紫色光線と激突する映像が流れる。


「これを見て。光線同士がぶつかった瞬間だけ若干、空間が歪んでいるように見えるんだ。ほら」


ケンが画面の一コマを拡大し、静止画で固定し、指を差した。確かに、光線と光線がぶつかり合う一点を中心にレンズ越しのようにぐにゃりと僅かに空間が歪んでいた。


タケルはケンが指を差した方によーく、目を凝らしてモニターを眺めたが、首を傾げた。


「……えーっと、ケン? つまり何だ? ゾーンGロボのビームとバロンの光線がぶつかって、その…空気と言うか、空間が歪んでるって、こと?」


ケンは深く溜め息をついた。


「……タケル。君は本当に戦闘のセンスは天才的なのに、物理学的なセンスは絶望的だね…」

「へへっ、照れるぜ!」

「褒めてないよ?!」


ケンはついツッコミをするも直ぐに眼鏡の位置を直し、さらに複雑な数式を弾き出す指を止めた。


「いいかい、簡単に言うよ。バロンの放つ光線は、ただのエネルギーじゃない。あれは()()()()()()()()()()みたいなものなんだ。僕たちの『"ゾーンG(グレート)ビーム"』がぶつかった時、バロンの光線とゾーンG(グレート)ロボのビームがぶつかった際に発生した、言わば《"次元の隙間"》が出来たわけ」


タケルはケンの解説と説明を聞いてもまだ、ピンときてない様子で首を傾げる。


「……つまり?」

「はぁ~…つまり、タケルにわかりやすく、簡単に言えば空間に僅かな穴が開きかけていたって、こと。わかる?」

「あー!なるほど。それならわかるぜ!」

「僕もなんとなく、わかった気がする」

「モンタまでわかってなかったんだ…」


ケンは呆れた表情をするも直ぐ様、モニター画面の方に向き直す。


「ふぅ……さて、次元獣の分析はこれくらいにしておこうか。これ以上の次元獣のデータを凝視していても、今の僕たちが知っている範囲での情報と分析、生態に関して、ここまでだね」


ケンはキーボードから手を離し、大きく背伸びをした。画面の中では、なおも不気味に蠢くバロンの残像が揺らめく。


「所で――肝心な事を聞き忘れてたけど…」


モンタがコンソールの端に寄りかかり、少し心配そうな表情でケンを見つめる。


「"()()()G()(()()()()())()()()"の修理どうなってるの? 次の次元獣の襲撃がいつ来るかわからないし…」


モンタの意見にタケルも釣られて表情を引き締めた。


修理は基地の心臓部だ。ケンの報告次第では、のんびりとコンビニへ――なんて、言っていられないかもしれない。


ケンは少しだけ口角を上げ、確かな自信を込めて答えた。


「それなら、心配ないよ。右肩の装甲換装と、主動力炉のエネルギー出力安定化は完了済みだ。バロンに付けられた胸部の亀裂も修復を施した。ついでに修復の際に以前よりも、更に装甲強度を20%アップしてみたんだ」


「えッ?!強度20%アップ……! それはつまり、バロンみたいな鋭い爪の攻撃を受けても今度は傷を受けても、貫かれないって、ことか?」


タケルが目を輝かせると、ケンは眼鏡のブリッジをくいと押し上げた。


「まあね。あとは、バロンとの光線をぶつけた際に引き起こした次元の隙間をこじ開けるような光線、つまりは膨大なエネルギー攻撃に耐えられるだけの、エネルギーパワーを更に増加するぐらいかな。それは追々、作業を再開するよ」


「よしっ! 修理が順調なら安心だな!」


タケルが弾むように立ち上がると、伸びきった体をぐるりと回した。


「さーて、とッ!腹も減ったし、頭も使いすぎた! 修理のことはケンに任せて、今日はコンビニでパーッとやろうぜ! そうだ、俺はフォミチキン二つは確定な!」


「もう、相変わらず、タケルは本当に食い意地が張ってるんだから」 


ケンは呆れながらもその顔には笑みが浮かんでおり、モンタもつられて「僕は甘い物が食べたい気分かなー」と声を弾ませる。


「二人ともコンビニのメニュー選びで盛り上がるなんて、本当に気楽だよね」


そうケンも言いつつも、自身も満更でもなく、二人の輪に入り、嬉しそうに表情を変える。


こうして三人は顔を見合わせ、基地の無機質な空気から解放されるように、明るい声と、ともに出口へと歩き出した。モニターの光が消え、秘密基地ゾーン・ハイド・ベースには静寂が戻る。


――だが、格納庫の奥では、修理中のGロボが鈍い銀色の光を放っていた。その胸部には、次元獣バロンの傷跡を克服した新たな装甲が、次なる激闘を待ちわびるように微かな稼働音を響かせていた。










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