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超次元勇士ゾーンG(グレート)ロボ  作者: 道化師
第三章次元獣総進撃編 ―前編―
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鍵の開いた玄関と母の香水。

リゾートアイランド〘ティル・ナ・ノーグ〙で次元獣との死闘から帰還し、タケルやモンタと別れたケンは、日常の空気に包まれた住宅街を歩いていた。長いようで短かったリゾートでの時間は終わり。重たい足取りで自宅の玄関まで辿り着き、ポケットから家の鍵を取り出す。

鍵を鍵穴に差し込み、回そうとしたその時だった。


「……ん?」


ふとした違和感がケンの背筋を掠めた。ケンは恐る恐る、鍵を回す前にドアノブへ手を掛け、軽く手前に引いてみた。


 カチャリ――。


拍子抜けするほど軽い音を立てて、ドアは抵抗なく開いた。鍵は掛かっていなかったのだ。


(開いて、る…?)


 二階建ての我が家の中で、ガサリと何かが動く音がした。ケンは息を呑み、身構えながら一歩中へ足を踏み入れる。しかし、リビングから漂ってきたのは、緊迫した空気などではなく、どこか懐かしく凛とした、微かな香水の香りだった。


「あら、おかえりなさい」


 リビングの入り口でケンを出迎えたのは、見慣れたはずの、しかし今この場所にいるはずのない人物だった。


「……母さん?」


 そこに立っていたのは、石谷いしたに 香織かおり


 父と離婚して以来、女手一つでケンを育て上げてきた逞しい母親だ。その容姿は、まるで時が止まっているかのように美しい。漆黒の艶やかな黒髪は緩くウェーブを描き、首元で上品に整えられている。凛とした顔立ちに、知的な光を宿した瞳。

 OLとして第一線で働く彼女の身体は、タイトなスーツ越しでも分かるほど引き締まっており、健康的で洗練された大人の女性の気品を漂わせていた。

 仕事人間である母親が、平日のこの時間に家にいることは、あの時――()()()()()()()()()()()()()の時、その時はちょうど休みだった為、家に帰って来ていたが…それ以外では普段、あり得ないことだった。


「どうして……母さんがいるの? 仕事は?」


 ケンが呆然と尋ねると、香織はふっと優しく微笑んだ。その眼差しには、母としての深い愛情が隠されていた。


「会社に無理を言って休暇をもらって、すぐに飛行機に飛び乗ったわよ。リゾートアイランド“ティル・ナ・ノーグ”での騒動、ニュースでも随分と話題になっていたもの。息子がちょうどそのリゾートアイランドに友達と一緒に向かった島と知ったら、仕事なんて、手につくわけないでしょう?」


 香織はケンの肩にそっと手を置き、労わるように続けた。


「……怪我はないでしょうね? あなたは私のたった一人の息子なのよ。もう、本当に心配で……生きた心地がしなかったんだからね」


香織の言葉に込められた母の愛情が、ケンの心の奥底までじわりと染み渡る。


「心配かけてごめん、お母さん。僕は本当に大丈夫だから。こうして、ちゃんと帰ってこられたんだから」


ケンがそう言うと、香織はケンの肩から手を下ろし、ふっと少しだけ視線を逸らした。恥ずかしさを隠すような、けれど安堵に満ちた表情だった。


「そう、ね。なら、まずは荷物を置いて手を洗ってらっしゃい。あなたが帰って来るまでの間に、久しぶりに母親らしくあなたの好きなもの、作ってはいたんだけど…作りすぎてしまって……お腹、空いているでしょう?」

「うん!」


その日の夜は、穏やかな時間が流れた。食卓を囲み、香織は決してリゾートでの"詳細"を根掘り葉掘り聞くことはしなかった。ただ、ケンがどれだけ楽しかったか、友達とどんな話をしたかといった他愛のない日常の断片を聞き、満足そうに頷く。


戦いの後の張り詰めた心は、母が作る温かい食事と、変わらない家庭の匂いによって、少しずつ解きほぐされていくようだった。香織が片付けをしている間、ケンはお風呂に入って、それから風呂に上がってから着替えを済ました後、自室のベッドに寝転がり、枕の側に置いておいた、スマートフォンを手に取った。


画面を開くと、真っ先に目に入るのはティル・ナ・ノーグ滞在中にやり取りをしていた花見さんからのメッセージだ。


【花見】:『石谷くん、無事に帰れたかな? ニュースで島の騒動を知ってから、すごく心配してたんだよ。返信は急がないから、落ち着いたら連絡をくれると嬉しいな(´;ω;`)』


数時間前のものだろうか。その文面から、彼女からの心配と気遣いが伝わってくる。ケンは指を滑らせ、打ち込み始めた。


心の中で言葉を整理しながら、あえて()()()G()(()()()()())()()()での戦いには触れず、しかし嘘ではない、彼が島で体験した緊迫感と無事を伝えるための文面を完成させていく。


【ケン】:『花見さん、心配させてごめんね。無事に家に帰宅しました。連絡ありがとうございます。

ティル・ナ・ノーグでは……正直に言うと、到着した初日の時は皆と楽しく、見て回りました。だけど最終日に次元獣が現れて、観光客の人達皆、大慌てで避難し、僕も避難してけど、タケルやモンタと一緒だったから心強かったし、幸い怪我もひとつもしていないから安心して。帰って来たら、母さんがニュースを見てわざわざ心配して、会社に無理を言って休暇をもらって、すぐに飛行機に飛び乗ったって。ビックリしたよ』


「送信、と」


ケンが送信ボタンを押して、しばらくすると画面に既読がつき、すぐに返信が返ってきた。


【花見】:『本当によかった……!怪我がないって聞いて安心したよ(´;ω;`) 最終日は本当に災難だったね。けどタケル君たちと一緒で本当によかったね。それにしても、お母様がわざわざ飛行機で駆けつけてくれたなんて、すごく素敵な母親だね。ケン君が大切にされているのが伝わってきて、なんだか私まで温かい気持ちになっちゃった。まずはゆっくり休んでね(人•͈ᴗ•͈)♡』


スマホの画面越しに伝わる彼女の優しさに、ケンは自然と口元を緩める。


【ケン】:『ありがとうございます。今は久しぶりの実家の空気の中で、ようやく落ち着いてるところです。花見さん、もし時間に余裕が出来たら、いつもの図書館でそこでお互い話をしましょう』

【花見】:『うん、わかった。余裕が出来た時に返事を送るから。それじゃあ、おやすみなさい、石谷くん』


【ケン】:『はい。おやすみなさい』


最後の一言を読み、返事を返し終え、ケンは画面を閉じた。スマートフォンのライトが消え、暗い部屋の中に静寂が戻る。

リビングからは、香織がテレビを消し、片付けを終えて寝室へ向かう足音が聞こえてきた。その物音さえも、今のケンには心地よい子守唄のように感じられた。

ケンは布団の中へと潜り込む。シーツの冷たさが次第に体温で温まり、柔らかな感触が全身を包み込む。次元獣との戦いの最中、極限状態で張り詰めていた神経が、ようやく完全に休息モードへと切り替わっていくような気がする。


あの日、島での出来事は、決して忘れることはないだろう。だが、こうして守られた日常に戻り、眠りにつける幸福をケンは噛み締めていた。

やがて重たい瞼がゆっくりと閉じていく――ケンの意識は、深い安らぎの底へと静かに沈んでいった。









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