#30 諦念
知らない世界
一歩隣は分かり合えない
わからない同士がせめぎ合って
織られてゆく平等な世界
孤独なのはみんな一緒
そういう意味ではみんな平等
貴賓の差はあれど
人間一人は所詮一人でしかない
老いてゆけば死は免れないし
与えたものは返ってこないかもしれない
神様の所在は誰も知らないし
相手の心さえどこにあるのかもわからない
美しいとしか言いようがない
どうにもならないから
完璧としか言いようがない
そこに何かを覗くのはきっと
なにも知らないから
何かを知ろうともがいている
宇宙の縁をなぞるように
他人との境界線を歩いてみる
良くできていると言うしかない
なにも変わらないから
非の打ち所がないと言うしかない
そこに何かを望むのは
なにも変わらないと知っているから
期待を寄せて安心しようとしている
大きな海に揺蕩うように
世の中の波の中で微睡んでみる
寂しさは埋まらないよ
それに悲しむ必要もない
どう思っていたとしても
ここはなにも変わらないのだから
その欠けたものを
無理に埋める必要もないよ
結局どうやったって
埋めることはできないのだから
僕らはあまりに満ち足りすぎているんだ
だから欠けたものに気づいてしまう
自分の深淵を思い出してしまう
満ち足りすぎているから
負ってきた傷が目立つんだ
ふとした瞬間に怖くなるんだ
足りないものに怯えてしまうんだ
だから結局どうやったって
欠けたものは埋めることができないんだ
悲しむ必要はない
寂しいのは仕方がないんだ
それは変わらない
免れないし、変える必要もない
ただ忘れたふりをして
笑っていれば
なにも変わらない明日は
いずれやってくる
変わらないことは辛いことじゃない
悲しいことじゃない
そういうものだから。
ある意味それは
幸せなことなのかもしれない。




