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死にたがりのあなたがいちばんすき〜自殺を止めてあげたのに、あの女の子は知らんぷり。もういいって背を向けたら、「いかないで」と泣きついてきた〜  作者: 光
第二章 三奈木光と呼ばれたりしていて【side光】

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第18話 いつも一緒

 お昼になればお弁当を食べて、閉館三十分前に建物を出た。それからわたしの家まで一緒に歩いて、別れた。土日は、そんな二日間だった。


 月曜日は休館日なので、家で勉強をすることにした。朝になっても、昼になっても稜月ちゃんは来なくて、逆に変な気分だった。ずっと一緒にいたから、落ち着かないようなところもあった。

 家では教材がなくて、勉強は捗らなかった。ずっと身体がそわそわしていて、どんな文字を見ても、ノートを読んでも頭に入ってこなかった。指の爪を噛んでいることに気づいて、気晴らしに外に出た。夏の午後はしんとしていて、わたし以外に動くものはなかった。庭を出て立ち尽くしていると、湯気のような熱気がスカートの中を上ってきた。


 家の外にも、稜月ちゃんはいなかった。一瞬、あの子の家の方に行ってみようかなんて考えて、振り払った。今日は休館日だって知ってたから、学校に行ったんだろう。明日になれば、また顔を見せるはず。困ったことに、ほんと、困った。


 行く当てもなく、気づけばあの廃寺にやってきていた。ここは静かで、人もこない。真夏なのにひんやりしてるから、時間を潰すのにちょうどいい。どうせなにもやることは、ないけど。

 中に入ると、稜月ちゃんがいた。壁を背もたれにして、座っていた。


「あはっ、光来た~。本当に会えるなんて、やっぱり赤い糸で繋がってるのかな?」


 五度目ともなると、あまり驚きもなかった。なんなら、もしかしたらいるかもくらいに思っていた。そしたら本当にいた、それだけだった。


「学校はどうしたの? 今日は早かった?」

「んー、いいよ、そういうのは。光のほうがずっと大事だからね」

「大事なわけないでしょ。いつから休んでるの? 家の人は?」

「もちろん、あの日からだよ。あーあ、光のせいで私悪い子になっちゃったぁ」


 稜月ちゃんは、くだけた調子で笑った。全然真剣味がない。わたしのせいだなんて、こっちは全然笑えないのに。


 よくない気分のまま、稜月ちゃんの隣に腰を下ろした。

 すると稜月ちゃんはわたしの腰と、顔を交互に見比べて、こんなことを言ってきた。


「隙間に、手置くのやめたんだね」


 手は膝の上にあった。隙間ってなんのことだろう。稜月ちゃんの言ってることは、よくわからなかった。


「ねえ、手触っていい? もう、びっくりしないよね」

「ん、うん、優しくなら……」


 重ね合った手を、二人の間においた。

 あんまり会話もなく、午後の時間は流れていった。


 その翌日からまた勉強の日々は始まった。もちろん稜月ちゃんはいた。親がいるとキッチンが使えないとかで、その日はお弁当抜きだった。残念、じゃなくて、稜月ちゃんは学校に行くべきで……でも、せっかく来てくれるなら、お昼はあった方がいいのかも。なら、たまには、わたしも作ってみようかな。ちょっとくらい失敗しても、美味しいって言ってくれそうだ。


 次の日、自分の分と一応、稜月ちゃんの分もおにぎりを握っていった。お昼時、稜月ちゃんは目を輝かせて、それを頬張っていた。塩だけの味付けなのに、おいしい、世界で一番美味しいって、何度も言ってくれた。その日は、一段と暑さが厳しかった。


「はぁぁ、幸せ。毎日ごはん作ってくれるなら、一生学校なんて行きたくない」

「だからそれは絶対だめだって。わたしのせいで留年なんてしたら馬鹿みたいだよ」

「みたいじゃなくて、お馬鹿だもん」


 稜月ちゃんは茶目っ気たっぷりに笑った。


 次の日は稜月ちゃんが、その次の日はわたしが、そうやって交互にお弁当を持参した。もう少し手の込んだものを作ろうかなと思ったけど、やめておいた。本当に離れられなくなってしまいそうだ、稜月ちゃんが。


 稜月ちゃんは、わたしに付き合ってずっと退屈な時間を過ごしていた。本人はそれを

充実していると言うけれど、そうは思えなかった。

 稜月ちゃんが休み続けて、もう二週間になる。学校や家庭の事情は知らないけど、平気だとは思えない。ちゃんと言おう、やんわりとじゃなくて、ハッキリと。よし言おう、昼時に言おう、やっぱり帰りに言おう、いや、今日は日が悪いから、明日にしよう。そうしよう。


 そして、その明日、金曜日になった。いつも通り、開館時間にわたしは図書館へとやってきた。

 いつもと空気が違った。外にいた職員のおばさんが挨拶をしてくれて、それだけだった。


「あれ」


 稜月ちゃんが、いない。

 日差しの照りつける駐車場にも、日陰になってる入口にも。


 見回してみても、やっぱりその姿はどこにもなかった。

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