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第九十三章:ミリアの決意

読んでくださってありがとうございます!

翌朝、王都の空は澄み渡り朝陽が石畳の道を柔らかく照らしていた。


「カフェ・アルカディア」は開店と同時に忙しさを迎えていた。

店主は厨房で手際よく朝食の準備をし、セレスはホールの臨時スタッフたちに指示を出していた。

ルシアスは相変わらず余裕の表情でカウンターの隅に座り店内を見渡していた。


「……結局、昨日のミリアはどうするつもりなんだ?」

ルシアスが店主に問いかける。


「まだ返事はないが……」

店主はフライパンを返しながら答える。


「ふむ、なら待つしかないか。」


その時——。


カフェの扉が勢いよく開いた。


「おはようございます!」


明るく響く声が店内に広がる。


店主が顔を上げるとそこに立っていたのはミリアだった。

彼女は凛とした姿勢で店内を見渡し、そのままカウンターに向かって歩いてくる。


「昨日の話だけど……」

彼女は真っ直ぐに店主を見つめながら言った。


「ここで働かせてもらうわ。」


店主は少し驚いた後、ゆっくりと微笑んだ。


「……決心したのか。」


ミリアは頷く。

「昨日、一晩考えたの。自由に動けなくなることが怖かったけど……」

彼女は一度息を吐き出し意を決したように続けた。


「でも、それ以上にこの店で学べることが多いって気づいたの。こんな場所で商売を学ぶ機会なんてそうそうないわ。」


ミリアの目は真剣だった。

商人としての勘が、この店の可能性を感じ取っていた。


***


ミリアが昨夜、自室で考え込んでいたのは深夜を過ぎても続いていた。

窓の外には静まり返った王都の街並みが広がっている。

遠くに見える「カフェ・アルカディア」の灯りが消えていくのをぼんやりと眺めながらミリアはため息をついた。


「……本当にここで働くべきなの?」


心の中ではまだ決めきれないでいた。

彼女は幼い頃から家業を手伝い多くの商人たちと取引を重ね、王都の市場の仕組みを肌で感じて育った。

自由に動きより広い世界を知ることが彼女にとって「商売を極めること」だと信じていた。


しかし、店主の言葉が心に引っかかっていた。


「ここはただのカフェじゃない。ここで働くことがお前にとって新しい学びになるとは思わないか?」


あの一言が何度も頭の中で反芻された。


——確かに「カフェ・アルカディア」は特別な場所だ。

商人だけでなく貴族、軍、役人たちが出入りし、ただの商談ではなく王都全体の経済がここで動き始めている。

こんな場所、他にはない。


「でも……本当に私にできるの?」


ミリアはベッドに座り込み、机に置かれた帳簿をじっと見つめた。


彼女の父は王都でも有名な商会を経営している。

幼い頃から教えられてきたのは「己の商才を活かし、どこまでも広がる市場で勝負すること」。

しかし、その考えを持ったまま「カフェ・アルカディア」にとどまるのは本当に正しい選択なのか?


「……自由に動けなくなるのは嫌。でも……。」


迷いに迷った末、彼女はふと気づいた。


「今まで私は、“自分が商売を極める”ことしか考えてこなかった。」


しかし、店主の言葉を思い出す。


「ここはただのカフェじゃない。」


そう、「カフェ・アルカディア」はすでにただの店ではない。

商売人たちが集い、経済を動かし、王国の未来を変えつつある。

そして——ここで働くことはただの店員になることとは違う。

商売の最前線に立ち王都の中心で「商売の流れを作る側」になれるということ。


「……もしかして、これは私にとっても”商売を極める”ことになるんじゃない?」


それに気づいた瞬間、ミリアの迷いは消えた。


「よし……決めた。」


彼女は勢いよく立ち上がり、エプロンを手に取り朝が来るのを待った——。


***


「なるほどな。」

ルシアスが薄く笑う。

「お前の判断、悪くない。」


「ふふ、元魔王に褒められるなんて光栄だわ。」

ミリアは軽く肩をすくめながら微笑む。


「じゃあ、早速働いてもらおうか。」

店主はエプロンを手渡しながら言った。


「ええ、任せて。」

ミリアはそれを受け取り、エプロンをきゅっと締める。


こうして、ミリアは新たなホール担当として正式に迎え入れられた——。


「……ところで、何からやればいいの?」

ミリアは軽く首を傾げる。


「まずはホールの動線を見直すことからだな。」

店主は腕を組みながら言う。


「昨日の指摘通り、テーブルの配置やホールスタッフの動きを最適化する必要がある。まずはそこを調整してみてくれ。」


「了解。やりがいがありそうね。」

ミリアは店内を見渡しながらすぐに動き出した。


ミリアはまずホールスタッフたちを集めた。


「みんな、ちょっとこっちに来て。」


彼女の呼びかけに臨時のスタッフたちが集まる。


「昨日私が見た限り、この店のホール業務にはいくつか改善すべき点があるわ。」

彼女は持っていたメモ帳を広げる。


「例えば注文を取る人と料理を運ぶ人が混在していて動きが無駄になっている。だから役割分担をはっきりさせるの。」


「注文を取る人、配膳する人、片付ける人。それぞれの役割を明確にしてスムーズに回せるようにするわ。」


スタッフたちは頷きながら話を聞いていた。


「あと、席の配置も少し変えましょう。」

ミリアは店の中心に立ち店主に向かって言う。


「商談をする人たちはできるだけ静かで落ち着いた場所に。食事だけを楽しみたい客は賑やかなエリアに分けた方がいいわ。」


「それができれば商人たちがより快適に取引できるようになる。」


店主は満足げに頷いた。

「……さすがだな。」


「当然よ。」

ミリアは自信満々に笑う。


「じゃあ、みんな!早速配置を変えていくわよ!」


彼女の指示のもとスタッフたちはすぐに動き出した。


——それから数時間後。


ホールの動きが一気に改善され店の回転率が上がった。

商人たちは商談に集中できるようになり客の満足度も向上していた。


店主はその様子を見ながら静かに微笑んだ。


「すごいな……。ほんの数時間でこんなに変わるとは。」


「でしょ?」

ミリアが得意げに笑う。


「……お前、俺の店を乗っ取る気じゃないだろうな?」


「どうかしら?」

ミリアはいたずらっぽくウインクした。


店主は苦笑しながらカフェの看板を見上げた。


「これで本当に『カフェ・アルカディア』は一段上のレベルに進んだな。」


「まだまだよ。もっと良くできるわ。」

ミリアは胸を張る。


「まぁ、それはおいおい考えるとして……。」

店主は肩をすくめた。


「今日からミリアはこの店の正式なホール担当だ。よろしく頼むぞ。」


「ええ、期待してて。」


彼女の商才と行動力はこの店に新たな風をもたらすことになるだろう——

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コメントもいただけたら返答しますのでよろしくお願いします!

書き溜めていた物語なのですが興味もっていただけていたら反応あるとすごくはげみになります。お願いします。

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