第百二十五章:秋の収穫祭
翌日、ミリア達はカフェ・アルカディアの皆に早速シルヴァを紹介することになった。
「まさかフェンリルの子供を連れて帰ってくるとはな……。」
店主は驚いたようにシルヴァを見下ろす。
「これが神獣……。」
エヴァンが感心したように呟いた。
「番犬……いや、番狼としてはこれ以上ないくらいの存在だな。」
お気楽なエリオットがシルヴァを観察しながら笑う。
シルヴァはカフェの入り口で堂々と座り客や商人たちを見守るようにしていた。
「……言葉は理解しているみたいだし、しっかり番をしてくれるなら問題ないな。」
店主が小さく笑った。
「それにしてもカフェ・アルカディアの守護獣とは粋な話だ。」
訪れていた商人たちも興味津々だ。
「さすがカフェ・アルカディア。普通の店とは一味違うな!」
「神獣が見守るカフェなんて聞いたことがないぞ。これはますます人気が出るんじゃないか?」
「むしろこの店に来れば神獣に会えるという噂が広まれば客足が増えるかもしれないな。」
ミリアは誇らしげにシルヴァを撫でながら笑った。
「よーし、これからはシルヴァはカフェ・アルカディアの守護神!お店の番狼としてよろしくね!」
シルヴァはミリアの言葉に応えるように「くぅん」と小さく鳴いて尻尾を振った。
***
その日の午後、エヴァンとエリオットがカウンターで向かい合って話し込んでいた。
「エヴァン、実は前から考えていたんだが……」
「なんだ?」
「王都の秋の収穫祭にカフェ・アルカディアが出店するってのはどうだ?」
エヴァンは少し考え込みながら顎に手を当てた。
「収穫祭か……。それはおもしろいかもしれないな。」
「そう!収穫祭で俺たちカフェ・アルカディアの名をもっと広げるってわけだ。」
エリオットの提案にエヴァンは興味を示しながら頷いた。
「なるほど……面白いな。」
「出店するとなると何を売るかが重要だな。」
「そこはもう考えてある!」
エリオットは勢いよくテーブルにメニュー案を書いた紙を広げた。
〜秋の特製メニュー〜
・収穫祭スペシャル・パンケーキ
― かぼちゃとシナモンを使ったふわふわのパンケーキに特製メープルシロップを添えて
・森のきのこスープ
― 旬のきのこをたっぷり使った濃厚なクリームスープ
・焼きリンゴのカラメリゼ
― じっくりと焼いたリンゴにキャラメルソースをかけて
・カフェ・アルカディア特製ホットドリンク
― 焙煎した香ばしいスパイス入りホットワイン
「さすがだな……。秋らしくいいラインナップだな。」
エヴァンは感心したように頷いた。
「これなら客の目を引けるし寒くなってきた季節にもぴったりだ。」
「でしょ? 俺の料理を王都の人たちに振る舞うんだ!」
エリオットは自信満々に笑った。
エヴァンはメニューをじっくりと眺めて改めて考え込む。
「ただ、出店するならけっこうな準備が必要だな。場所の確保、食材の調達にスタッフの手配……。」
「そこは手分けしてやるさ!」
エリオットは気合を入れて言った。
「確かに出店すればカフェ・アルカディアの名も広まるし、今後の集客にもつながるかもしれない……。」
エヴァンは少し考えた後、店主に向き直った。
「店主はどう思う?」
店主は少し考えるように目を閉じてゆっくりと頷いた。
「いいんじゃないかな。」
「じゃあ、決まりだな!」
エリオットが興奮気味に声を上げた。
「まずは王都の収穫祭の実行委員に出店の許可を取る必要があるな。俺が話をつけてこよう。」
エヴァンは腕を組んで言った。
「その間に俺は試作品を作るぜ!」
エリオットはすぐに厨房へ向かった。
***
その日の午後、ミリアはシルヴァと一緒にカフェの庭で遊んでいた。
「ねえ、シルヴァ。カフェ・アルカディアの看板犬ならぬ看板狼として頑張らなきゃね!」
シルヴァは「くぅん」と小さく鳴きながら尻尾を振る。
「そうだ、収穫祭にシルヴァを連れて行こうよ!神獣フェンリルの子供がいるってなったらそれだけで話題になるでしょ?」
「……お前、単純だな。」
レイヴンが呆れながら近づいてきた。
「いいじゃん!どうせなら盛り上げた方が楽しいでしょ?」
「まあ……確かにシルヴァがいることで注目はされるだろうな。」
レイヴンは静かにシルヴァを見つめる。
「……こいつ、本当にお前のことが好きみたいだな。」
「えっ、そ、そうかな?」
ミリアが少し頬を染める。
「えへへ、レイヴンが認めてくれるなんて珍しい!」
「別にそういうわけじゃない。役に立つなら問題ないと言っているだけだ。」
レイヴンは目をそらしたが、その表情はどこか優しかった——。




