第百二十一章:遺跡の噂
騒動が落ち着いたある日、カフェ・アルカディアは臨時休業の日を迎えていた。
「今日はお出掛けして思いっきり遊ぼう!」
ミリアはセレスを誘いウキウキした様子で王都の大通りを歩いていた。
「まずは服を買いに行って、その後は美味しいものも食べに行きましょうか?」
セレスも嬉しそうだった。
「そうだね! 今日は一日楽しもう!」
楽しそうなミリアにセレスもつい微笑んだ。
勇者として過ごしてきたセレスはこんな風にお出掛けしたことがなかった。冒険に必要な道具を揃えるためではない、ただ遊んだり楽しむためだけに外出することが新鮮だった。
二人はブティックに入り、ドレスやアクセサリーを見ながら試着を楽しんだ。
「このワンピース、どう?」
ミリアがフリルのついた淡いピンクのワンピースを持ち上げる。
「あなたらしくて可愛いわね。」
セレスが微笑む。
「セレスはこれとかどう?」
ミリアが深い青のエレガントなドレスを差し出す。
「ドレスなんて私に似合うかな?」
セレスはゆっくりと鏡の前でドレスをあてがい、少し恥ずかしそうに静かに微笑んだ。
二人は気に入ったドレスを購入してお店でそのまま着替え、王都で評判のレストランへと向かった。
***
レストランの中は上品で落ち着いた雰囲気が漂っていた。
「この店、すごく美味しそうな香りがするね!」
ミリアは期待に胸を膨らませながら席に着いた。
「エリオットおすすめのレストランだから期待していいはずよ!」
セレスもワクワクした様子だった。
二人がメニューを見ながら選び始めると、隣の席から興味深い会話が聞こえてきた。
「……知ってるか? 最近、王都の外れにある“銀狼の遺跡”で変なことが起きてるらしい。」
「銀狼の遺跡? 戦で荒れ果てた古城の跡だったよな。」
「そう。最近に夜になると遺跡の奥から光が漏れてくるって話らしい。」
「光? あそこは何年も前に全て調査が終わって何も残されてないはずだろ。誰が何をしにあんなところに行くっていうんだ?」
「それが、男爵家に仕えていた騎士とその妻が数日前に遺跡に向かったみたいなんだ。そして行方不明になったらしい。」
「……騎士とその妻が行方不明? そんな話は初耳だぞ。」
「俺の親戚が男爵家の執事をやってるんだがこっそり聞いた話だ。男爵家の跡継ぎの一人がその騎士を信頼して何か頼んだらしい。」
「男爵家の……? なんだかきな臭いな。」
「そうなんだよ。その騎士も優れた実力者だったそうで、妻と一緒に遺跡に入ったまま戻ってこないなんて……。」
「遺跡の中で何かが起きたってことか?」
「おそらく……。一体なんで遺跡なんかに妻を連れて行ったのか。」
ミリアとセレスは目を見合わせた。
「ねえ、セレス。今の話なんだかすごく気にならない?」
ミリアが小声でささやく。
「騎士とその妻が消えた遺跡……。」
セレスは慎重な表情を浮かべる。
「これはきっと何かあるよ!」
ミリアの目が輝く。
「……あなたって本当に好奇心旺盛よね。」
セレスはくすっと笑う。
「でも、もし本当に遺跡に何かがあるなら……?」
「探検するしかないでしょ!」
ミリアはにんまりと笑った。
「……そうね。私も少し気になってきたわ。」
セレスは小さく息をつきながら微笑んだ。
「ねえ、みんなにも話してみようよ!」
ミリアは楽しそうに言った。
「ルシアスやレイヴンが聞いたら“余計なことに首を突っ込むな”って言いそうね。」
セレスは呆れたように言う。
「でも、ワクワクしない?」
ミリアの目は輝いていた。
ミリアとセレスは料理を食べた後、カフェ・アルカディアに戻り“銀狼の遺跡”の噂を店主達に伝えた。




