第百二十章:王の決断
王城の扉が静かに開かれた。
カフェ・アルカディアの店主、ルシアス、エヴァン、ミリア、レイヴンの五人は堂々とした足取りで謁見の間へと進んでいった。天井が高く厳粛な雰囲気の中、彼らの前には紫紺のローブを纏い王座に座るアウレリウス王がいた。
「よく来たな。」
王は静かに口を開いた。
その隣には宰相が控えており近衛兵たちが整然と並んでいた。しかし、その視線には警戒ではなく敬意の色が見える。
「カフェ・アルカディアの皆に礼を言わねばならぬ。」
王の声が響く。
「ヴァルムトの陰謀を暴き王都の商人たちを呪刻から解放したと報告を受けた。」
「光栄です、陛下。」
店主が一歩前に出て深く一礼した。
王は微かに頷くと視線をルシアスへ向けた。
「そして——流石は元魔王だな、ルシアス。」
ルシアスは余裕の笑みを浮かべた。
「どうせなら俺の力を見せつける機会も欲しかったのでな。」
王は軽く笑った。
「お前がこの国のために動いたことは決して忘れはしない。」
次に王の視線がレイヴンへと移る。
「そして……レイヴン。」
レイヴンは軽く頭を下げる。
「陛下。」
王の目が鋭く光る。
「お前はカイゼルの腹心として動いていた。しかし今はカフェ・アルカディアの仲間としてこの国を守るために活躍したと聞いている。」
「……はい。」
レイヴンは静かに答えた。
「貴様をどう処するべきか迷っていた。」
王の言葉に一瞬、謁見の間の空気が張り詰める。
ミリアが息を呑みエヴァンはわずかに眉をひそめた。ルシアスは変わらぬ笑みを浮かべながら腕を組んでいた。
「だが——」
王の言葉が続く。
「商人たちの証言も聞いている。」
レイヴンはじっと王の言葉を聞いていた。
「カイゼルへの復讐心もあったのだろうが、結果としてはお前はこの国の未来を救ったのだ。」
レイヴンはゆっくりと頷いた。
「はい。」
王は微笑むと玉座の隣に控えていた宰相に視線を向ける。
「レイヴンを正式にこの王国の市民として認めよう。」
「!!」
ミリアが嬉しそうに顔を輝かせた。
エヴァンも小さく頷き、店主は微笑みながらレイヴンを見つめる。
王は続けた。
「カフェ・アルカディアと共にこの国を守るために必要な者としてお前を歓迎する。」
「……ありがとうございます。」
レイヴンは深く頭を下げた。
彼にとってそれは「赦し」ではなく「新たな出発」の言葉だった。
***
謁見の後、カフェ・アルカディアの仲間たちは王宮を後にした。
「よかったね、レイヴン!」
ミリアが明るい笑顔で言う。
「……ああ。」
レイヴンは静かに頷く。
「これでカフェ・アルカディアの一員としてようやく胸を張れるな。」
店主が微笑んだ。
レイヴンはカフェ・アルカディアの入り口を見つめる。
かつては敵対していたこの場所が今では帰るべき場所になっていた。
「さあ、帰ろう。」
店主の言葉にレイヴンは静かに微笑み頷いた。
こうして彼は本当の意味で仲間として受け入れられた。




