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第百十八章:仲間

カフェ・アルカディアの扉が開いた。

ルシアスは腕を組んで興味深そうにカフェ・アルカディアに入るレイヴンを見つめる。


「おかえり!」

ミリアが駆け寄った。


「レイヴン、大丈夫?」

ミリアの手が彼の腕を軽く掴む。


「……ああ、心配かけたな。」

レイヴンは苦笑いを浮かべたがその表情は以前とは違っていた。どこか穏やかで、どこか……安堵したような顔をしている。


「カイゼルは?」

エヴァンが静かに尋ねる。


「もう終わったよ。」

レイヴンは短くそう答えた。


店主はカウンターの向こうで腕を組みながらじっとレイヴンを見つめていた。

「……それで、お前はこれからどうする?」


店主の問いにレイヴンは少し目を伏せる。

「……俺はここにいたい。」


その言葉にミリアがぱっと顔を上げる。

セレスもレイヴンを見つめる。


「俺は……ずっと影として生きてきた。」

レイヴンは静かに言葉を紡ぐ。


「命令を受け、裏切られ、捨てられ……それでも俺は誰かに従うことでしか生き方を知らなかった。だけど少しずつ変わったんだ……」

レイヴンが真っ直ぐ店主を見据える。


「お前たちと過ごした時間は……楽しかった。」


静寂が店内に満ちる。

レイヴンの言葉に誰もがそれぞれの思いを巡らせていた。


そして——


「……なるほどな。」

ルシアスが笑いながらグラスを傾けた。

「お前、そんな殊勝なことを言えるようになったのか。」


「……うるさい。」

レイヴンが少しだけ頬をかすかに紅潮させながら睨む。


店主は考えるように目を細める。

そして、カウンターからゆっくりと歩み寄り、レイヴンの前で立ち止まる。


「一つ、聞かせてくれ。」


「……なんだ?」


「お前はカフェ・アルカディアの仲間になったら何をしたい?」


「……」


レイヴンは少しだけ目を伏せ、考えた。


店主たちと過ごすうちにそこに流れる温かさや絆を知り、レイヴンの中で何かが変わり始めていた。ここでなら自分の過去に縛られずに新たな人生を歩めるかもしれない。


彼は誓った。「この店を守るために戦う」と。それがレイヴンにとっての新たな生き方だった。


「……俺は、この店を守りたい。」


その言葉にカフェの皆が驚いた表情を浮かべる。


「俺は誰かのために動くのではなく、自分の意思でこの場所を守りたい。ここはただの店じゃない。お前たちが築いてきた特別な場所だ。」


レイヴンは拳を軽く握る。


「俺はここにいたいんだ。」


静寂が流れた。


そして——


店主がゆっくりと微笑んだ。


「ここにいてもいいぞ。」


「!!」


ミリアの顔がパッと明るくなる。


エヴァンは小さく頷き、セレスもほっとしたような表情を浮かべた。


店主がレイヴンの肩に手を置く。


「まずはミリアに一人前と認められるように仕事を覚えるんだ。」


レイヴンは頷いた。


「よし。」

店主は満足そうに笑いレイヴンの肩を軽く叩いた。


「今日からお前はカフェ・アルカディアの一員だ。」


その言葉に店内の空気が一気に和らぐ。


ミリアが満面の笑みを浮かべる。

「やった!!」


エヴァンは軽く微笑みながら、手を差し出した。

「これからよろしく、レイヴン。」


「……ああ。」

レイヴンは静かにその手を握り返した。


「歓迎するぜ、新入り。」

ルシアスがニヤリと笑いながらグラスを掲げた。

「お前がこの店のために何ができるのか、しっかり見極めさせてもらうがな。」


「……望むところだ。」

レイヴンの口元にも小さな笑みが浮かんでいた。


「さて、皆んなもお腹空いてるだろうし歓迎会の料理でも作るか。」

エリオットは笑いながら食材を並べはじめた。


カフェ・アルカディアの仲間として——

レイヴンが新たな道を歩み始めた瞬間だった。

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