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因果因縁【完結】  作者: 七石 和子
因果因縁
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因果因縁 15 マゼランダの不満

マゼランダの延々とした不服なので読み飛ばしても良いかもです

マゼランダはいつも不満だった。

騎士学校の学長を任される家門の、ロドクロー伯爵が母の生家で、マゼランダは優秀に育っていた。

母の兄の伯父は優秀であったのに、家門の跡取りであった為に、帝都の学園に務める事が出来なかった代わりとして、マゼランダに最高の教育を授けてくれたからだ。

伯父は、マゼランダに、帝都の学園か、皇城の女官として務めて貰う事で、無念を晴らそうとしていた。

伯父の期待通り、マゼランダは貴族学園でトップの成績を維持していた。

そして、マゼランダは不満を募らせるようになっていった。

父方の縁で結んだ婚約者が、冴えない男だったからだ。

貴族だというのに、平民のような茶色い髪に、濁った緑の目はドロの色のように見え、いつも猫背で、ひょろりと細長い手足は頼りなく、不健康に見えた。

成績は中の上、ペコペコと安易に頭を下げるし、上位貴族と積極的に関わろうとしない小心者。

会話はつまらない物が多く、マゼランダを退屈させ、贈られる物は男の身の丈に合った物で、マゼランダを満足させる物ではなかった。

周りの女子の、余りに綺羅びやかな婚約者自慢に、マゼランダは苛立ちを堪えて聞くしかなかった。

16歳となったある日、その男の家から、婚約解消の話が舞い込み、マゼランダは一も二もなく飛び付いた。

親の仕事の関係で、縁を結ぶ事になったという謝罪の手紙は、全く興味が持てず、捨てたのか燃やしたのかも覚えていなかった。

これで優秀な自分に相応しい男を選べると、喜び勇んでいた。

だが、16歳は貴族子息子女が結婚しだす頃だ、これはと思える子息は軒並み婚約済みで、ついでに子爵家の生まれが足を引っ張り、次の良縁に恵まれなかった。

伯父を頼って打診して貰っても、他と縁が出来たと断られるか、優秀なマゼランダに怖気づいた謝罪文が届くばかりだった。

いよいよ卒業を控え、マゼランダは爪を噛んでいた。

帝都の貴族学園教諭の試験と、女官試験を落とされ、婚約者も見付かっていない状況に焦っていたのだ。

貴族学園では女生徒は結婚したら卒業出来る仕組みがあったので、同級生が徐々に抜けて行ったのも、焦りの原因の一つだ。

勿論、最低限の淑女であるかの試験を受ける必要はあるが、淑女教育は家庭内でも行われており、大概はすんなり合格する。

6年間通う者は女官や、女性騎士、教諭などを目指す者だけで、16の成人以降は続々と女生徒は減るのだ。

必然的に、男女比に差は出来る。

優秀すぎて妬まれたり、尻窄みしてしまうのだろうと、声をかけて来ない男達を、マゼランダは蔑んでいて、そんな男はお断りだと思っていたが、卒業を間近に妥協して声をかけても、男達はやはりマゼランダに怖気づき、縁談は決まらなかった。

そして、とうとう就職先も婚約者もないまま、卒業してしまった。

研究所への就職活動も失敗し、生家で暮らしながら、見る目のない周りに更に不満を覚えたところに、伯父が声を掛けてきたのだ。

寮の管理人が空いたからどうか?と。

騎士学校という、平民が多く通う学校である事には不満があったが、2つ下の弟が結婚し、生意気な弟嫁に睨まれていたマゼランダは、そこに縋る他なかった。

僅かにいる貴族令嬢に、自身の知識を与え、その者と家族に感謝される事で、不満を和らげていたが、平民の多さにはやはり不満があった。

そんな日々を12年も嫁げずに過ごし、異国から編入生が来た。

貴族学園は12歳が入学年齢で、馴染めなかった者が入れるようにと、騎士学校の入学年齢は13歳以上。

中等学校も受け皿ではあるが、そちらはよほど勉強に自信が無ければ、試験は通らない。

普通なら、自身の年齢に見合った学年に編入するのが常だが、その者は15歳でありながら、1年生へと編入して来た。

異国の準王族の養女だというその娘は、金属のような銀髪を、令嬢にあるまじく短く整えていて、細い緑の目と唇が、悔しい程に綺麗だった。

だが、いくら養女とはいえ、準王族の縁者が、なぜ異国の騎士学校に来たのかと、マゼランダは怪しんだ。

編入試験では、義理の祖父が付き添いとして、編入前の手続きと準備には使用人が来たが、本人が寮に到着した日は、使用人と騎士だけ。

その使用人と騎士も、寮の門で別れていて、本人一人で学長と寮の管理人に挨拶したのみ。

きっと、祖国で問題行動を起こし、摘まみ出されたのだと思った。

でなければ、帝都の貴族学園に編入するのが妥当だし、最低でも中等学校に行く筈だと納得していた。

勉強も鍛錬の授業もソツなくこなし、問題らしい問題を起こさない様子だが、いつまで猫をかぶっていられるのかと、楽しみにしていた。

だが、1か月過ぎても猫はかぶられたままで、マゼランダは爪を噛んでいた。

その娘の悔しい程の綺麗な目が、いつも冷えた目で自分を見て来て、自身の行き遅れを馬鹿にされているのだと気付いたからだ。

だから、同級生に囁いた。娘は挨拶にお供を連れて来なかったから、何か不始末をしたのかも知れない。気を付けてと。

悔しさが増していた頃に、娘の国の使者だという従者が週末に通うようになった、熊のような恐ろしいほどの大きな男で、赤い目は目付きが鋭く、下品な赤い金の色の髪は長く、見ただけで品性のない従者なのだと分かった。

その男と娘が、週末毎に外出する事で悟った。祖国であの男と通じて、養父母に疎まれ、異国の平民の通う学校に、放逐されたのだと。

そう考えると、胸のすく思いがした。

同級生にそれを教えてやれば、皆が注視し、頻繁に外出する二人を、多くの者が目撃した。

あの娘の淫らな様子を周知させる為に、外出の許可は喜んで与えた。

その噂は、すぐにマゼランダにも届き、笑いを抑える事が難しかった。

そしてその娘の同級生が相談して来た、ふしだらな娘が、そしらぬ顔で居座っている事が我慢ならない。他の真面目な生徒の為にも、あの娘をどうにか困らせて、報いを与えたいのだと。

だから、不純異性交遊の証拠を見つけて貰うべく、部屋の合鍵を渡し、大事にしないようにと言い含めた。

あまり大事にされては、寮の管理人としての管理責任が問われるので、それだけは譲れなかった。

納得している仕事ではないが、今更他の仕事を探すのは難しいのだ。

だが、愚かな二人は、幼稚なハンカチ1枚のみを盗んだだけだった。

なんの証拠にもならないと、不満が爆発し、すぐに焼却炉に向かい、火を入れている用務員に火を貰い、直接火をつけ、焼却炉へと放った。

すぐに管理人室に戻り、次こそは。と思っていた頃、何やら騒がしくなった。

生徒達が囁き合う声を拾えば、あの問題の娘が、焼却炉へ走って行ったのだと分かった。

いつも澄ましている娘が、珍しくも廊下を走るという規律違反に、そこまで取り乱せる事が出来たのだと、歓喜が広がった。

あの娘が騒ぎを起こしてくれたなら、追い出す事も可能だと悟り、目撃者が増えるまで待ち、ゆっくりと焼却炉へ向かった。

そこに、見知らぬ男が二人、地面に這いつくばっていて、男を引き入れたのなら、処分も簡単だと、ほくそ笑んだものの、庭の惨状に悲鳴が上がった。

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