第1話 深淵
気になった箇所があればまた改善、編集していきます(。_。*)
身体がゆっくりと沈んでいくのを感じる……
目を開けているのか閉じているのか、自分でもよく分かっていない……
自分が上を向いて沈んでいるのか、下を向いているのか…………
『……………………!』
『………………』
『……?……』
遠くの方で何か聞こえる気がする…………
けど、なんでも良いや……
『その方に触れるな!!!!』
………?
その声だけが僕にはっきりと届いた____________
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上も下も右も左もこの空間では何の意味も持たない。
ただ、光の届いている場所からは水面のようなものが見える。あの水面の向こうは恐らく白の空間と呼ばれる世界と世界を繋ぐ場所なのだろう……。稀にこの世界には異物な存在が水面から落ちてくるのだ。
またこの不安定な世界に何かが堕ちてきたのは感じていた。
いつもなら特に何も気にしないのだが、今回に限っては何やら様子がおかしいと思った。
光の届かない世界から水面までを認識出来る者なんて、この空間に何人いるのだろうか……
ああ、またあの幼稚で愚かなマガイモノが神なんて名乗っている……。本当に身の程知らずも良い所だ。どこまで神を冒涜すれば気が済むのだろうか……。
いつもならあの無礼者が何をしていても不快でしかないのだが、どうやら珍しく上手く事が進んでいないようで見ていて滑稽だった。
ふむ…………。
あの少年の目には、何か力が宿っているな……。少量だが確かに神聖な魔素を感じる…………。
恐らくあの少年には視えているのだろう。あの紛い物の吐き気のするような魔素が。
おや、正体を言い当てられただけで、もう魔素の制御が出来ていないじゃないか。本当に見苦しいな。
しかし、あの少年…、このまま堕ちても消失してしまうしかないが……。
この精神世界は人間にとって生きられる環境では無い。肉体は消失し、精神は彷徨い、そのうち私達のような者に喰われる。
私の知った事では無いが…………
気まぐれに、最期の食われる瞬間まで見届けてやろうと思ったのだ。……思っていたのだ。
一瞬、光りの粒子が少年の身体から舞い散りだしたかと思うと、突然少年から光が溢れ出し、身体を覆い包んだ。
これはっ.......!!
私がこの光を最後に見たのは何時だっただろうか.......
世界が崩壊した後に数回見たくらいだろうか.......
しかし、ここ数百年では決して目にしていない光......。
紛れもない神の光だ。
あの少年は一体.......
神に加護を授かった人間など見たことも無い.......
私の記憶だけで言えば神の力を有する者など、神竜か世界樹か...いくつかの特異的な地点でしか見たことが無い.......
光は数秒少年を包んだ後、身体の中へ消えていった。
私は自分では気づかないうちに笑みを零していた。
『おい、こいつ人間じゃねぇか!』
『本当だ。珍しいな…』
『なんでこんな場所に?身体もまだ残ってる...』
暗闇を堕ちていく少年の周りに精神を喰らおうと虫が集っていた。
『その方に触れるな!!!!』
『『『ギャッッ!!!』』』
私は勢いそのままに虫ケラ共を燃やした。
少年と呼ぶことは既に失礼だろう.......光輝な魔素をその身に宿したあの方をどうお呼びすれば良いかも分からない。今は、ただそのままに光の君とお呼びしましょう。
全く.....力を見極められない虫共は嫌なんだ....
光の君が穢れてしまう.......。
私はそれからも光の君へ近付く愚か者を消していった。
ああ...あの方はどこまでも深く、私でさえ入ることの出来ない空間へ堕ちてしまう...。しかし.......
神の加護を授かっているあの方はいずれ、表層世界へと顕現することになるでしょう.......。
『フフッ...私もそろそろ表層世界へ顔を出してみましょうかね.......』
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不意に身体の沈んでいく感覚が無くなり気が付いた。
あたりはやはり真っ暗で何も無い.........................
.......?
何も無いと思っていた空間に何か巨大な存在を感じた。
山だ。と思った。あまりにも多いくて全貌が分からなかったからだ。
『こんな場所にも変化、というものはあるものだな.......』
それはとても低く、威圧感、存在感を感じさせる声だった。
こんなにも低くて威圧感があると、以前の僕なら恐怖を感じていただろうに………
全く何も感じないのは全てがどうでも良くなっているからだろうか…?
『なるほど…天然女神の加護か…』
どうやら僕は観察されているようだった。
目なんて何処にあるんだろう。
長い間何もしないでいると、体というものは動かなくなるようだ。今の僕は沈んできた体勢のまま海底に着地している感じだろうか…。実際に海底まで沈んだ事は無いから分からないけど。
『目もなかなかのものを授かっているな。あの邪鬼が騙せないはずだ。ただ、持ち主が腐ってしまっているせいか本来の力を発揮できていないようだが…』
(………………)
『邪気はな、水面近くを彷徨って、お前のような転移者や転生者を捕まえては神と名乗り、徒に力を与えるんだ。そうして世界がどのように変化するかを楽しんでいる。仮染の力だがな。だからこそ、力の大きさと本人のバランスが合っていないせいで、寿命が短かったり、全力を出せば死ぬ、なんて奴もいた。それなりに活躍したり、知識を世界に広めた者達もいる。今のこの世界の形は皆、異世界から来た者達の知識の上で成り立っている事も事実であるしな。邪鬼は暇潰しの為にそうやっているんだろうが…… 世界の均衡が崩れることを期待しているのかもしれんな……』
(……………………)
僕はただ聞いていた。何も応えはしなかったが、相手はそれでもお構い無しに話し続けた。
『……お前の世界はそんなにも酷なものだったのか?』
突然、僕に質問が投げ掛けられ、もう一度、声が発せられている場所を探した。と言っても頭も動かせないのでら視界で確認出来るギリギリの範囲までなんだけど……
やはりどこから声が聞こえてくるのかはわからず、何かドス黒いオーラみたいなものが一面を覆っていることだけが分かった。
(…………)
どうなんだろうか……僕の生きていた世界は、きっと人によってはとても住みやすくて平和で、一方では明日生きているかも分からないほどの地獄な世界だったと思う……。僕は……。
僕にとっては……先の見えない暗闇をただひたすらに……いつ壊れてもおかしくない1本の吊り橋を延々と歩いて行くようなものだったから……。
僕はきっと僕の生きていた世界のことをほとんど知らないし、僕の世界は……母が全てだったと思うから…。
『世界と言うよりも、環境か……』
まるで僕の思考が見て取れるかの様な発言をした。
『お前は今まだ何も考えたくないと思っているのか?』
どうなんだろう……。かなり長い間意識が浮き沈みしていた気はするけど……。
『この空間で時間という概念はかなり歪んでいて不確かだが、こちらの世界ではだいたい60年かかってここまで堕ちてきているぞ。もっと分かりやすく言えば、邪鬼とお前が喋ったのは60年前だ』
…………僕は知らないうちにおじいちゃんになってしまったようだ…。
『この空間では時間の経過と体の成長、退化は関係無い。お前の姿も何ら変わりない。』
なるほど。
『………………この世界について話しようか。それでお前がこの世界に興味を持って、その目に光を宿してくれるなら』
そうして大きな存在は語り始めた。




