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迷い迷って、選ぶ色

期末テストも終われば学校に行くのは僅か数日。


その場にいるときはゆったりとしていた時間も、振り返ればあっという間で、僕らは気がつけば冬休みに入っていった。


いつもの階段へしばらくの別れを惜しんで、僕は自室で本を読んでいた。




「パパ〜、もうすぐクリスマスだからプレゼントにゲーム買ってー」


「流石に無理だ。そういうのはお母さんに頼め。僕はせいぜいケーキを用意するくらいだ」




妹の海(うみ)は頬を膨らませて不機嫌そうにこちらを見る。


昔パパと呼ばせてたら小さい頃からの癖というのは抜けないらしく、言っても聞かないため中学生になった今でも呼ばれ続けている。




「それにクリスマスは一応予定があるんだよ」


「えー……バイト?」


「友達と遊びに行く」




 僕がそう言うと、一瞬、海の動きが止まって……




「うっそだぁ、パパ友達なんていないじゃん」


「友達っていうか……後輩かな」


「もしかして……女?」


「まぁ……女だけど……」




そう言いながら海の方へ向くと、口と目が大きく開かれていた。




「えぇー?!!うそ?!!パパがデート?!!」




瞬間、ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえて。




「うそだろ?!陸がデート?!」




海の叫ぶ声を聞いたのか、弟の空(そら)まで僕の部屋に集まった。




「相手は?!どんな子なの?!」


「陸のどこに惚れる要素が?!」


「お前ら落ち着け。そんで空は後で説教な」




やべっと言い残して空はその場を後にした。




「で?!相手はどんな子なの?!」




海の方はまだお祭りモードが抜けない様子。




「普通の後輩——」


「でもデートなんでしょ?!」




間髪入れずに言葉を割り込まれる。




「まぁ……一応……」


「信じられない……けど、パパ。お金は?服は?ちゃんとあるの?」


「金は余裕あるよ。服はいつものがある」


「そういうことじゃなくて……」




なんでわかんないかなぁと頭を掻かれてしまった。




「デート用の、お洒落な服とかないの?」


「おいおい海。僕をなんだと思ってる?」


「馬鹿」


「よーし、説教するやつが増えたようだ〜。それでまぁ、服だろ?ちょっと待ってろ」




そうして僕はクローゼットから服を取り出す。




「ほら、この服なんてどうだ?裏地が温かいんだ。寒い冬にはもってこいだろ?」


「……お洒落って知ってる?」




冷ややかな目をしながらありえないと言わんばかりに僕にそう尋ねる。




「その服じゃ機能性だけでなんにも特徴がないの!ちょっとどいて!」




僕を押しのけてクローゼットを漁りだす。




「うっわぁ……パパ、ほとんど黒の服ばっか……仕方ない……ちょっと着いてきて」


「何しに行くんだ?」


「服!!海ちゃんが選んであげるから!!」




僕の腕を掴んで無理矢理外へ連れ出される。


なんでこんなに元気があるのか……海のおせっかいは相変わらずというか、なんというか……




◇◇◇




服を選ぶというのは、なかなかに面倒なもので。




「うーーん……パパって本当に明るい色似合わないよね〜……色に顔が負けちゃってる……」


「悪かったな暗い顔で」


「ほんとに、反省してよね」




そう言って次の服を選んでいる。


暇だな……


服を見て笑うカップル。


丁寧な説明をする店員。


周りを見渡すと僕以外の人は真剣に、楽しそうに服を選んでいる。ただ立っているだけの僕が、この場所で浮き彫りにされたみたいだ。




「はいこれ!次の服!これ着てみて!」


「はいはい……」




そんなこんなで、僕は数時間の間、海の着せ替え人形になっていた。


そう言えば、二宮は今頃何をしてるのだろうか。


服を大量に持ちながらそんなことを考える。案外、服に興味なくて、僕みたいに適当にしてたり……なんてことはないか。あいつも女子だし。




◇◇◇




最近、秋葉の様子がおかしい。


前は常に影をまとっているようで、母さんたちも心配していた。


しかしここ最近は笑顔も増え、声も明るくなっていた。それはええと思う。





やけど!!最近の秋葉の顔は……なんというかその……恋する乙女みたいな顔なっとる!!


スマホ見ながらニヤけとるし、かと思ったら耳の先まで赤なっとるし!!


兄貴として、秋葉が悪い男に騙されとらんか確認せなあかんよなぁ?




「夏芽(なつめ)〜……妹の部屋を覗き見するもんちゃうぞ〜?秋葉かて女の子なんやから」


「うっさいわ親父。今ええとこやねん話しかけんといて」




そうして俺がもう一度のぞ……観察していると、ドアの隙間に秋葉の顔がドアップで映し出されとった。




「な〜つ〜にぃ〜??」


「ち……違うんよ秋葉……お兄ちゃんは秋葉が悪い男に騙されとらんかって心配しとるだけで……」


「アホ!!ボケ!!人の部屋覗くなつにぃが一番悪いわ!!」




大きな音を立てて秋葉の部屋は閉ざされてしもた。


やから言うたやろ……と親父が語っとる気がした。


秋葉……お兄ちゃんはお前が心配や……




◇◇◇




「うっさいわ……ばかなつにぃ……」




服を抱えながら言葉が漏れる。あのアホにバレたら絶対うっさいもん……心配してくれるんは嬉しいけどシスコンすぎるんよ。


けど、付き合うってなったら家族に紹介せなあかんよね……


なつにぃにも、ママにもパパにも……




「って!気ぃ速いんよ!!」




手足が勝手に動いてまう。


明日……明日が勝負なんや。


うちは明日……センパイに……告白する。




「そのために!!はよ服選ばな!!……こんなん着てったらセンパイ……褒めてくれるんかなぁ……」 

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