元旦の約束
## 第十話
### 元旦の約束
結衣とのやり取りは、
驚くほど自然だった。
高校時代の先生の話。
文化祭の話。
「あの時の春斗くん、
めっちゃ静かだったよね笑」
「結衣はずっと周りに人いたイメージ」
そんな会話をしながら、
二人は少しずつ距離を縮めていった。
春斗は気づいていた。
無理をしていない。
返信のタイミングも、
言葉選びも、
前みたいに考えすぎなくていい。
それが、
こんなに楽だとは思わなかった。
年末。
二人は勢いで約束をした。
> 「じゃあ元旦、
> 初詣でも行く?笑」
> 「いいよ笑」
たったそれだけなのに、
春斗は少し浮かれていた。
元旦当日。
春斗は朝から落ち着かなかった。
服を選び直す。
髪を整える。
鏡を見る。
外は冷たい空気。
正月独特の静けさが街に流れていた。
待ち合わせ一時間前。
スマホが震える。
結衣からだった。
嫌な予感がした。
開く。
> 「ごめん春斗くん……!」
続けて届く。
> 「親戚のところ行くことになって、
> 今県外いる(汗)」
春斗は、
しばらく画面を見つめた。
そして小さく息を吐く。
> 「そっか笑
> 大丈夫だよ、家族優先して!」
送信。
すぐに既読がつく。
> 「ほんとごめんね!
> また帰ったら連絡する!」
春斗はスマホを閉じた。
怒ってはいない。
仕方ないことだ。
でも。
少しだけ、
期待していた。
玄関で準備を終えたまま、
春斗は立ち尽くす。
数時間前まで楽しみだった気持ちの行き場が、
急になくなった。
テレビでは、
正月番組の笑い声が流れている。
春斗はゆっくり上着を脱いだ。
そしてソファに座る。
窓の外では、
初詣へ向かう人たちが歩いていた。
春斗は苦笑いする。
「……人生こんなもんか」
でも。
この時の春斗はまだ知らなかった。
会えなかった時間が、
逆に二人の距離を近づけることを。




