↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐に行ったら、超能力探偵に出会ってしまった話  作者: 小説書こう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/116

ハイテンションな理由、、、

数時間前の昼頃のカイゼル。

キーリオスのスラム区画。

カイゼル・エルディオンは倉庫の陰に身を寄せ、息を潜めていた。隣にはレオが無表情で立っている。髪飾りは今日も青い花だ。


「人数は?」


「中に十二。表に二人。裏に三人」


レオが短く答える。カイゼルは小さく頷いた。


「例の男は?」


「奥の部屋。電気を帯びてる気配がする」


「……パノプティコン出身の脱獄囚だな。能力は電気。だが、本当に厄介なのは怪力の方らしい」


カイゼルは拳を握りしめた。指の関節が小さく鳴る。


「レオ。表は任せる。僕は奥へ行く」


「わかった」


二人は同時に動いた。

表の見張りが気づく前に、レオの銃口が正確に火を吹く。二発。足を撃ち抜かれ、男たちは悲鳴を上げて倒れた。カイゼルはその隙に倉庫の側面を蹴破る。金属の扉が内側へ折れ曲がり、粉塵が舞う。


「SHLDだ!降伏しろ!!」


声が倉庫内に響き渡る。ギャングたちが慌てて銃を構えるが、カイゼルはすでに中へ踏み込んでいた。最初の男がナイフを振り上げた瞬間、カイゼルの拳が腹へめり込む。男の体がくの字に折れ、壁に叩きつけられた。


「一人」


次の男がショットガンを向ける。カイゼルは身を捻り、弾をかわしながら距離を詰める。拳が顎を捉え、男の意識が飛ぶ。


「二人」


背後から金属バットが振り下ろされる。カイゼルは肘で受け止め、そのまま相手の胸を掌底で突き上げた。鈍い音。男が後ろへ転がる。


「三人」


倉庫の奥から、低い笑い声が聞こえた。


「……随分と派手に来るじゃねぇか」


奥の部屋の扉がゆっくり開く。出てきた男は、肩幅が異常に広く、両腕に青白い電気がチチチと走っていた。パノプティコンの脱獄囚。


「SHLDか。面倒くせぇのが来たな」


男が腕を振る。青白い電撃が床を伝い、周囲の金属を焦がす。カイゼルは一歩も引かなかった。


「君が例の用心棒か」


「ああ。で、お前は?」


「カイゼル・エルディオン。今日は君を連れて行く」


男が鼻で笑う。電気がさらに強く迸る。


「連れてく? この俺を?」


次の瞬間、男が両手を叩いた。

バチィィィッ!!

青白い電撃が直線でカイゼルを襲う。避ける暇もなく、全身に電流が走った。筋肉が勝手に痙攣し、視界が白く弾ける。


「がっ……!!」


カイゼルの膝が折れる。だが、彼はすぐに歯を食いしばって立ち上がった。髪の毛が逆立ち、指先から薄い煙が上がっている。


「効くじゃないか……!」


「まだまだだ」


男が再び電気を放つ。カイゼルは今度こそ横へ跳んだが、電撃は床を伝って足を捕らえた。再び全身が跳ねる。歯の根元が痺れ、呼吸が乱れる。


「くっ……この感触……!」


男が近づいてくる。怪力の腕が振り下ろされる。カイゼルはそれを腕で受け止めたが、同時に男の掌から直接電流が流れ込んできた。至近距離の放電。カイゼルの体が大きく仰け反る。


「がぁっ……!!」


それでも彼は倒れなかった。むしろ、瞳孔が開いたまま、ゆっくりと笑みが浮かぶ。


「……いい」


「あ?」


「いい感触だ……!!」


男が眉をひそめる。カイゼルは痙攣する指を握りしめ、自ら男に向かって突っ込んだ。拳を叩き込む。男も怪力で返す。拳と拳がぶつかり、同時に電気が走る。

毎回、殴るたびに電流がカイゼルの神経を焼く。

毎回、焼かれるたびに、カイゼルの呼吸が荒くなり、目が輝いていく。

どうやら向精神作用があるようだ。


「もっと来い!!」


「お前、正気か!?」


「正気だとも!!」


電撃がカイゼルの肩を貫く。筋肉が跳ね、口から涎が滴る。それでも彼は止まらない。むしろ加速する。男の胸を打ち、腹を打ち、顔を打つ。そのたびに青白い光が二人の間で炸裂した。

レオが遠くから銃を構えて様子を伺っているが、割って入る隙がない。二人の殴り合いは、電気の閃光に照らされながら、あまりに正面から続いた。

やがて、男の動きがわずかに鈍る。カイゼルはそれを見逃さなかった。最後の一歩を踏み込み、全身の力を乗せたストレートを放つ。同時に男も最後の大電流を流し込んできた。

バチィィィィッ!!

二人の体が電光に包まれる。カイゼルの髪が完全に逆立ち、服の端が焦げる。だがその衝撃の中で、彼の拳が男の顎を正確に捉えた。

男の体が大きく仰け反り、コンクリートの床に背中から倒れた。

沈黙。

カイゼルは肩で息をしながら、男を見下ろす。全身が小刻みに痙攣し、指先からまだ薄い電気がチチチと残っている。視界の端が時々白く瞬く。心臓が異常な速さで打っている。

それでも彼の顔は、晴れやかに笑っていた。


「……最高だった」


男は天井を見つめたまま、苦笑する。


「……お前、マジでクレイジーだな。電気くらいながら笑ってんじゃねぇよ」


「褒め言葉として受け取ろう」


カイゼルはポケットから拘束具を取り出し、男の両手を固定した。指先がまだ痺れていて、うまく動かない。それでも彼は満足げに息を吐いた。

レオが近づいてくる。


「終わった?」


「ああ。終わった」


「顔、真っ赤だよ。髪も逆立ってる」


「電気の余韻だ」


レオは呆れたように鼻を鳴らした。だが、カイゼルの目はまだ完全に冷めていない。拳を握ったり開いたりしながら、彼は倉庫の出口へ歩き出す。歩くたびに、神経の奥で小さな電流がチクリと残響する。

外に出た瞬間、昼の光が目に刺さった。

カイゼルは空を見上げ、深く息を吸う。体の芯が、まだ熱い。電気に焼かれた神経が、興奮を持続させている。


「……ああ、いい気分だ」


この高揚感は、簡単には冷めない。

夜になっても、きっと残っているだろう。

ヒューゴたちが帰ってきたと聞いた時、彼が過剰なまでにハイテンションだった理由はただ、それだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。