ハイテンションすぎるカイゼル
ヒューゴ達がキーリオスに戻ったのは、夜が完全に更けてからだった。
車を降りる。ネオンの光が湿ったアスファルトに反射している。ヒューゴが肩を回し、メロルスがため息をつき、カテリナが小さく伸びをした。リシアは無言で端末を確認している。
「やあ!!戻ったか!!」
いきなり、明るすぎる声が飛んできた。
建物の入り口に、黒髪スーツの男が仁王立ちしていた。腕を組むでもなく、むしろ両手を広げて待っていた様子だ。カイゼル・エルディオン。相変わらずの太陽みたいな笑顔を浮かべている。
「ヒューゴ!!メロルス!!カテリナさん!!それにリシアも!!」
「……きた」
ヒューゴが露骨に嫌そうな顔をする。メロルスは「またか」という目をし、カテリナは少しだけ後ずさった。リシアだけが、静かに一礼した。
「お疲れ様。無事に戻れてよかったわ」
「ああ!リシアも相変わらず冷静だな!いいぞ、その落ち着き!SHLDの誇りだ!!」
カイゼルはリシアに向かって親指を立てると、すぐにヒューゴへ向き直った。距離を詰めてくる。
「で!どうだった!巌巌会の件は上手くいったのかい!?報告書はまだでもいい!まずは感想を聞かせてくれ!!」
「……疲れた」
「疲れたか!いい疲れか!?成長を感じる疲れか!?」
「ただの疲れだ」
「そうか!それでもいい!!」
カイゼルは全く気にした様子もなく、メロルスの肩をポンと叩いた。
「義手は無事か!?戦闘で壊れてないかい!?」
「壊れてねぇよ。……お前、テンション高くね?」
「高いとも!君たちが戻ってきたんだぞ!?もちろん高い!!」
カテリナがおずおずと顔を出すと、カイゼルはさらに目を輝かせた。
「カテリナさんも元気そうだ!よかった!怪我はないかい!?無理してないかい!?」
「だ、大丈夫ですぅ……」
「よし!その返事が聞きたかった!!」
ヒューゴが「もういいだろ」という顔で手を振る。
「で、用は何だ。ただ出迎えるためだけに来たのか」
「もちろんだとも!!」
カイゼルは胸を張った。
「君たちが戻ってきたと聞いた瞬間、飛んできたんだ!報告は後でいい!まずは『おかえり』を言いたかった!!」
「……は?」
「おかえり、ヒューゴ!!」
真顔で、しかも大声で言われた。ヒューゴは額に手をやる。
「やめろ。恥ずかしいだろ」
「恥ずかしくない!男同士、素直になるべきだ!!」
「誰が男同士だ」
「僕と君だ!!」
メロルスが小さく吹き出し、カテリナも思わず口元を押さえた。リシアは「この人は昔からこう」という目で見ている。
カイゼルは満足したように頷くと、少し声のトーンを落とした。といっても、まだ十分に大きい。
「なあ、ヒューゴ。今度こそ、本気で一回スパーしないか?足技と拳、ちゃんと勝負だ」
「だから来んなっての」
「また来る!!」
「来んな」
「約束だな!?」
「してねぇよ!」
カイゼルは楽しそうに笑いながら、手を振って去っていった。その背中は、夜のキーリオスの中でも妙に目立っていた。
ヒューゴは深く息を吐き、メロルスを見る。
「……相変わらずだな、あの男」
「ああ。太陽みたいな戦闘狂」
カテリナが小さく呟く。
「でも……少し、安心しましたぁ」
リシアも、わずかに唇の端を緩めた。
「帰ってこられて、よかったわね」
四人は並んで、建物の中へ入っていった。




