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復讐に行ったら、超能力探偵に出会ってしまった話  作者: 小説書こう


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疑問

「で、でもまだまだ後一つ疑問がありますう」


カテリナは遠慮しがちに答えた。


「あら何?」


「……宗玄さんのお孫さんをなぜ襲ったんですか?」


先ほどまで柔らかな笑みを浮かべていた紫苑の表情が、ほんの少しだけ陰る。


龍牙も壁にもたれたまま、静かに目を閉じた。


「……その話になるのね」


紫苑は小さく息を吐く。


「当然と言えば当然かしら」


数秒の沈黙の後、やがて彼女は、ゆっくりと語り始めた。


「……実はね、私苗字が違うけれど宗玄の孫の一人なのよ」


その一言に、カテリナは思わず目を見開いた。


「えっ……!?」


「驚くのも無理はないわね」


紫苑は湯飲みに手を添え、静かに視線を落とす。


「私の本当の姓は、今とは違う。でも、もう何年も前にその名前を捨てたの」


「ど、どういうことなんですか……?」


部屋にはしばらく静かな時間が流れた。そして、紫苑は昔のことを思い出すように話し始めた。


紫苑は湯飲みを両手で包み込み、湯気の向こうに視線を落とした。

その横顔は、いつもの優雅な微笑みをわずかに失い、どこか遠くを見ているようだった。


「……私がまだ小さな頃の話よ」


静かな声が、部屋に溶けていく。


「宗玄は、家族を『資産』としてしか見ていない人だった。孫たちを厳しく育て、能力や才能があるかどうかを常に測り、価値のない者は切り捨てる。……私は、その中で『失敗作』だったの」


カテリナは息を潜めて聞いている。龍牙は目を閉じたまま、ただ黙って隣に立っていた。


「私には、特別な才能も、強い身体もなかった。ただの、普通の少女。宗玄の目には、存在しているだけで恥ずかしい孫だったらしいわ」


紫苑の指が、湯飲みの縁をゆっくりと撫でる。


「ある日、私は『不要』だと宣告された。屋敷から出され、名前すら捨てることを強要された。……その時、唯一手を差し伸べてくれたのが、天城組よ。そして、私は錦の名を捨てて"天城紫苑"となったという訳。」


彼女は小さく息を吐き、続けた。


「でもね、カテリナさん。私だけが特別だったわけじゃないの。宗玄の血を引く者たちは、多かれ少なかれ、同じ『評価』の対象だったわ」


紫苑の瞳が、わずかに細められる。


「たとえば……錦雷真」


その名を聞いた瞬間、カテリナの肩が小さく震えた。


「雷真さんは……?」


「ええ。あの子もまた、宗玄にとっては『扱いの難しい駒』だったの。次男坊でありながら、野心がなく、争いを嫌い、人の痛みに敏感すぎる。……宗玄からすれば、弱点だらけの孫よ」


紫苑は静かに視線を上げ、カテリナを見つめた。


「だからこそ、宗玄は雷真に『鉄壁の盾』を付けた。霧島剛という男を。……あの男は、雷真を守るために自分の体を改造し、義体装備を埋め込み、命を削ってでも主人を守ることを選んだ。私はそれを見て、思ったの」


「……何を?」


「『ああ、宗玄は、やはり人間を道具としてしか見ていない』と」

紫苑の声には、怒りも憎しみもなかった。ただ、静かな諦観だけが滲んでいた。


「雷真は優しすぎる。だから狙われる。だから守らねばならない。……でも、その『守る』という行為すら、宗玄にとっては『資産の保全』でしかない」


彼女は湯飲みを置き、ゆっくりと指を組んだ。


「私は、雷真のことも同じように思っているわ。あの子がいつか、自分の意志で歩き出せるように。……宗玄の『管理』から、自由になれるように」


紫苑は小さく微笑んだ。その微笑みは、どこか寂しげだった。


「でも、私にはもう、それを直接する資格はない。だからこそ、龍牙と共に、別の道を歩むことにしたの。……記憶を集め、彼を最強に仕立て上げ、いつかこの歪んだ家族の『ルール』を、根底から壊すために」

龍牙が目を開け、ぼそりと呟く。


「……お前、相変わらず面倒くせぇ夢見てんな」


「あなたがいてくれるなら、叶えられるわ」


二人はまた、顔を見合わせた。

そのやり取りは、まるで世界のすべてを二人だけで完結させているかのようだった。

カテリナは、ただその光景を見つめることしかできなかった。

この女の言葉のどこまでが真実で、どこまでが嘘なのかもう、判断することすら恐ろしい気がした。



その瞬間だった。屋敷の入り口から爆発音が爆ぜた。





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