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復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


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フラグ回収はコーヒーの後に その五

「ガァァァッ!」


メロルスは咆哮とともに、二メートル級のWALKERの頭部カバーを強引に掴み、渾身の力で引き剥がした。剥き出しになった制御基盤へ、さらに重厚な義手の拳を何度も叩き込む。火花が夜闇を散々にと照らし、ついに鋼鉄の獣が機能を停止して地響きとともに崩れ落ちた。


「ふぅー……クソ、手が痺れる……!」


熱を持った両腕の義手を振り払いながら、メロルスは即座に視線をヒューゴへと向けた。

そちらの戦況はさらに苛烈を極めていた。

セラフィム・サードケンタウラが、四本の脚で地を蹴り、恐るべき俊敏さで工場跡地を疾駆する。神々しい女神の上半身は微動だにせず、その右腕のクロスボウが次々と光弾を放っていた。

ドガァン! ドガァン!

着弾するたびに地面がクレーターのように抉れ、猛烈な爆風が吹き荒れる。

ヒューゴはまだ完全に自分の肉体と馴染んでいない漆黒の右腕を庇いながら、瓦礫の陰へ滑り込んだ。


「おいメロルス! あいつのクロスボウ、チャージ速度が早すぎる! 狙いが定められねえ!」


「ワープで翻弄しろよ、天才探偵さんよぉ!」


「カメラのレンズがさっきの爆発で半分煤けてんだよ!」


ヒューゴが毒づく通り、残された監視カメラの映像には激しいノイズが走っていた。ワープの精度が落ちれば、出現した瞬間にあの光弾の餌食になりかねない。

ギチチチ、と不気味な駆動音が響く。セラフィムがヒューゴの潜む瓦礫に狙いを定め、クロスボウを引き絞った。


「しまっ――」


「おらぁぁぁっ!!」


突如、横合いからメロルスが猛烈な勢いで突進した。格闘技の型などない、文字通りの肉体ぶつかり稽古。二メートル級をねじ伏せたその超馬力を乗せて、セラフィムの白い四脚の側面に体当たりを喰らわせる。

ガキィィィン!!

いかに強固なセラフィムといえど、想定外の超質量による奇襲には耐えきれず、その神聖な巨体がわずかにバランスを崩した。クロスボウから放たれた光弾が大きく逸れ、遥か上空の夜空を赤く切り裂く。


「……メロルス!」


「突っ立ってんじゃねえヒューゴ! 右腕が動くなら、さっさとソレをぶち込め!」


メロルスがセラフィムの脚の一本を必死に抱え込み、その駆動を力任せにロックする。金属と金属が擦れ合い、耳を劈くような摩擦音が響く。


「サンキュー、相棒!」


ヒューゴの瞳が、ノイズ混じりの監視カメラの映像を捉えた。セラフィムの真上、崩落しかけた天井に残るカメラ。

一瞬で、ヒューゴの姿が消える。

次の瞬間、彼はセラフィムの真上の空間に出現していた。重力に従って落下しながら、漆黒の右腕を白い女神の首元へと向ける。


「手首のセーフティを、二回ノック……!」


カチ・カチ、と金属音が響くと同時に、至近距離から強靭なアンカーが射出された。アンカーはセラフィムの首元の装甲の隙間に深く、確実に突き刺さる。


「これで逃げられねえぞ、百億の化け物!」


ヒューゴは左手のリボルバーを抜き放ち、その銃口をセラフィムの頭部センサーへと向けた。

――ドン! ドン! ドン!

至近距離で放たれた大口径の銃弾が、セラフィムの女神の顔を模した頭部センサーを直撃する。神々しい純白の仮面が砕け散り、内部の光学素子が不気味な火花を噴き上げた。


「ギ、ガ、ガガガ……!」


セラフィムのスピーカーから、それまでの神聖な電子音とはかけ離れた、悍ましいノイズが漏れる。頭部を破壊された白い怪物だが、その四本の脚はまだ生きていた。暴走プログラムは停止せず、盲目的に右腕のクロスボウを周囲へ乱射し始める。


「うわあああ! 近い近い近い!!」


セラフィムの脚にしがみついていたメロルスは、至近距離を通る光弾の熱線に悲鳴を上げた。両腕の義手を最大出力で駆動させ、強引にその場を転がり出る。


「メロルス、離れろ! そいつ、誘爆するぞ!」


天井から飛び降りたヒューゴが叫ぶ。彼はアンカーのワイヤーを巻き戻し、その反動を利用してメロルスの隣へと着地した。

二人が距離を取った瞬間、セラフィムの機体内部から異音が高まり、純白の装甲が赤熱し始める。

ドカァァァァァン!!

工場の敷地を揺るがす、この夜最大の爆発。セラフィム・サードケンタウラは、その神聖な姿とともに、赤黒い炎と黒煙の彼方へと消え去った。

爆風が収まった後、そこには静寂が戻っていた。立ち込める煙の向こうで、工場の残骸だけが静かに燃えている。


「……終わった、か?」


メロルスが煤けた顔で、熱を持った両腕の義手を見つめる。


「ああ、百億の仕事完了だな」


ヒューゴが漆黒の右腕を軽く振り、リボルバーを腰のホルスターに収めた。まだ慣れない義手の感覚に眉をひそめながらも、その表情には確かな達成感が浮かんでいた。

その時、瓦礫の中から東堂がふらふらと姿を現した。白衣はボロボロで、血と煤にまみれている。彼は燃え尽きたセラフィムの残骸を見つめ、複雑な表情でため息を吐いた。


「私の……最高傑作が……」


「東堂さん、あんたの最高傑作は、街を灰にする一歩手前だったぜ」


ヒューゴが呆れたように言う。東堂は力なく首を振った。


「そうだな……。だが、これで終わったわけではない」


東堂の瞳に、怯えと怒りが混じった色が灯る。


「セラフィムを……私の作品をここまで歪め、この事態を引き起こしたあの『実行犯』……。奴が生きている限り、第二、第三の悲劇が起こるだろう」


東堂の言葉に、ヒューゴとメロルスは顔を見合わせた。

この事件の真の脅威。それは、暴走した兵器ではなく、それを裏で操り、宗玄に五十億もの前金を払わせるほどにブチ切れさせた「ある男」の存在。


「……なるほどな。百億稼いだ後も、まだ仕事は残ってるってわけか」


ヒューゴが不敵に口元を歪め、夜空を見上げる。その瞳はすでに、燃える工場を越えて、次の「獲物」を捉えているようだった。


「クソ、結局また無茶な仕事に巻き込まれるんじゃねえか!」


メロルスは腫れ上がった拳を握り締め、絶望したように天を仰いだ。

赤く染まった夜空の下、二人の賞金稼ぎと、ボロボロの開発者の長い夜は、まだ終わろうとはしていなかった。


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