表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/61

箱入り娘と運び屋 その三

三日後のスラム地区、廃倉庫街。レイナと美鈴は、路地裏の屋台で焼き串を食べていた。


「美味しいです!」


「三本目だぞ、お前」


「幸せです!」


「安上がりな奴だな」


あまりの美鈴の可愛さに、レイナはなんだかんだと言いながら、ずっとポケットマネーで彼女の面倒を見ていた。

その時、レイナの端末が短く震えた。

反射的に画面を確認する。裏社会で懇意にしている情報屋からの連絡だった。

文面は、一言だけ。


『逃げろ』


「……は?」


怪訝に思うレイナの元へ、続けざまにメッセージが届く。


『ヒューゴ・ヴァレンタインが動いた』


その名を目にした瞬間、レイナの顔色が変わった。

ヒューゴ・ヴァレンタイン。

表向きは探偵兼便利屋、実態は厄介なトラブルメーカー。

そして、このスラムの裏社会には、彼を呼ぶ別の名があった。

追跡者(トラッカー)”と。



その数分前。寂れた探偵事務所。


「五百万リアル」


提示された金額に、ヒューゴは思わず聞き返した。


「はい?」


『NISIKI』の秘書が冷徹に頷く。


「成功報酬です」


ヒューゴの思考が一瞬、固まった。


「五十万じゃなくて……?」


「五百万です」


「……!」


「ただし、美鈴様を無事に保護していただければ、ですが」


ヒューゴは勢いよく椅子から立ち上がった。


「今すぐ行きます!」


「即決ですか?」


「五百万ですから!」




「レイナさん?」


突然押し黙ったレイナを見て、美鈴が不思議そうに首を傾げる。

レイナは焼き串を放り出し、弾かれたように立ち上がった。


「行くぞ!」


「え?」


「今すぐだ!」


「どうしてですか?」


「いいから来い!」


珍しく切迫したレイナの声に、美鈴は息を呑んだ。



数時間後――。

レイナは美鈴の手を引き、必死に逃走を続けていた。

スラムの複雑な路地、入り組んだ地下道、知る人ぞ知る抜け道を網羅し、追跡を振り切ろうとする。

だが、言いようのない違和感がレイナの背筋を伝っていた。


「おかしい……!」


「レイナさん……?」


「なんで、先回りされてるんだ……!?」


どれだけ不規則にルートを変えても、網の目を狭めるように“追跡者”の影が迫ってくる。

ついに逃げ込んだ先の古い廃工場で、レイナは絶望と共に足を止めた。


「……嘘だろ」


そこに、ヒューゴがいた。

工場の中央、ぽつんと置かれたパイプ椅子に腰掛け、缶コーヒーを優雅に飲んでいる。


「おっす」


ヒューゴは、まるで待ち合わせでもしていたかのように気楽に手を振った。

彼がスラム中に張り巡らされた監視カメラの映像をハックし、すべての動線を完全に掌握していることなど、レイナは知る由もない。


「なんで場所がわかったんだ……?」


レイナが鋭く睨みつけるが、ヒューゴは平然と缶コーヒーを啜るだけだ。


「悪いんだけどさ、その子、返してくんね?」


気怠げな声に、美鈴は怯えるようにレイナの背中へと隠れた。

そして、きっぱりと言い放つ。


「嫌です!」


即答だった。

ヒューゴが少し意外そうに、片方の眉を上げた。


「へぇ」


「帰りません!」


「なんでさ?」


「レイナさんと、一緒にいたいからです!」


真っ直ぐなその言葉に、レイナの心臓が激しく跳ねる。

ヒューゴは二人を見比べ、少しだけ困ったように頭を掻いた。


「面倒だなぁ……」


次の瞬間、工場内の空気が爆発的に張り詰めた。レイナの野生の勘が、目の前の男の変化を捉える。さっきまでのダラけた雰囲気は霧散し、底の知れないプロの眼光が二人を射抜いていた。


「最後に聞くけどさ」


ヒューゴのトーンが一段下がる。


「本当に、帰らない?」


美鈴はレイナのシャツをぎゅっと握りしめ、強く首を振った。


「帰りません!」


「そう……。他人の恋路の邪魔なんて、したくないんだけどねぇ」


ヒューゴは深くため息を吐くと、右腕を水平に構えた。その視線の先で、金属質の義手に仕込まれたワイヤー射出口が、冷たい鈍色に光る。

レイナの背中を、一筋の冷たい汗が伝い落ちた。

違う視点から見た主人公っていいよね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ