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復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


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49/61

箱入り娘と運び屋

百合っていいよね

キーリオス南部スラム


ネオンも届かないような薄暗い路地を、一台の大型輸送車が走っていた。


レイナ・クロウ


二十代後半でスラムでは少し名の知れた運び屋だった

運ぶ物は様々。武器に部品に食料。時には企業の裏取引の荷物も運ぶ。ただし彼女には一つだけルールがあった。


「人は運ばない。特に女」


理由は単純。面倒だからだ。荷物なら黙っている。

だが人間は喋る。

泣くし、裏切る。だから嫌いだった。


「今回の依頼は楽で助かるね」


レイナは煙草を咥えながら助手席の端末を見る。

依頼内容。

冷蔵庫サイズの箱一個。運送先はスラムの一角。

報酬は異常に高い。


「……逆に怪しいな」


冷蔵庫ほどもある白い箱が荷台に積まれていた。

精密機器扱いで開封厳禁。振動注意。典型的な秘密の荷物だった。だが運転を始めて三十分。

レイナは違和感を覚えた


コン


箱の中から音がする


「……あ?」


コン

コン


明らかに箱の内側から聞こえてくる

レイナは車を止め、拳銃を抜き、荷台へ向かう


「おいおいまさかね」


嫌な予感しかしない。


ガチャ。


ゆっくり扉を開く


そして


「……は?」


中には少女がいた。

まるで高級店のショーケースに飾られる人形のように


短い黒髪

上質なワンピース明らかに高級品の装飾品をつけている。年齢は十八歳ほど。少女は箱の中で体育座りをしていた。

そして開口一番。


「わあ外だ……!」


目を輝かせた


「え?」


「本物の外!」


「え?」


「空気が違う!」


「嘘!」


少女は箱から飛び出す。


「すごい!」


「待て待て待て待て」


レイナが頭を抱える。


「お前誰だ?」


少女は胸を張った。


「宗玄の孫です!」


レイナの思考が止まった。


(うっそー、まじで?宗玄の孫ってあれでしょ?

NISIKIグループを統括してる会長でしょ!?)


数秒後。


「帰るぞ」


「嫌です」


「帰るぞ」


「嫌です」


「帰れ帰れ帰れ帰れ」


「絶対嫌ですぅ!!」


レイナは空を見上げた。


 (今日は厄日だ)


こうして運び屋レイナ・クロウと、箱入り娘の錦美鈴(みれい)は出会ったのである。


レイナは煙草を咥えた。

火を点けた。一吸い


そして悟る。


(ダメだコイツ)


話が通じない。


「アンタの下の名前は?」


「美鈴です!」


目の前の少女――錦美鈴は箱から脱走したことに一切罪悪感を感じていなかった。


むしろ


「わぁ……」


目がキラキラしていた。

スラムの汚い倉庫街を見てキラキラしていた。


「何がそんなに嬉しいんだよ?」


「初めて見るんです!」


「何を」


「全部!」


レイナは頭が痛くなった。


「お前今まで何して生きてきた」


「家にいました」


「どれくらい」


「十八年間」


「は?」


「ほぼずっと」


「は?」


レイナは本日二回目の思考停止をした。


「学校は?」


「家庭教師です」


「友達は?」


「いません」


「恋人は?」


「いません」


「趣味は?」


「本を読むこと!」


「終わってんなアンタの人生」


「ですよね!」


美鈴は元気よく頷いた。

レイナは空を見上げ


(なんで嬉しそうなんだ)


理解できない


全く理解できない!


だが少しだけ、少しだけ気になった。


「アンタ」


「はい!」


「何かしたいことある?」


美鈴は即答した。


「コンビニ行きたいです!」


「ちっさ」


夢が小さすぎた。


もっとあるだろ?


世界旅行とか…


自由になるとか…


そういうの…


「あとゲームセンター」


「おう」


「映画館」


「おう」


「ファストフード」


「おう」


「あと」


「おう」


「恋愛とか」


その答えにレイナがむせた


「ゴホッ!!」


「大丈夫ですか!?」


「いやお前急に何言ってんだ」


「本に書いてありました!」


「どんな本読んでんだ」


「恋愛小説です!」


「教育失敗してるぞ会長」


心から思った。

その時だった。美鈴がレイナを見上げる。


「レイナさんって」


「なんだ」


「綺麗ですね」


「……は...///」


今度は本当に固まった。

美鈴は悪気なく言う。


「かっこいいですし」


「……」


「優しいですし」


「……」


「美人ですし!」


「……」


レイナは煙草を捨て顔を逸らした。


少しだけ、本当に少しだけ耳が赤かった

なぜならレイナ・クロウは女が好きだった


そして、



十八年間箱に入っていた世間知らずのお嬢様から無自覚に爆弾を投げられていた。


「お前な」


「はい?」


「そういうこと簡単に言うな……////」


「?」


「危ないからっ」


「?」


全然伝わっていなかった。


レイナは再び悟る。


(こりゃダメだ)


宗玄の家が厳重だった理由が少し分かった。

この娘放っておいたら三日で変な奴に騙されるぞ


いや下手したら一日だ。


「……しゃーねぇ」


レイナは立ち上がる。


「え?」


「コンビニ行くぞ」


美鈴の目が輝く。


「本当ですか!?」


「その代わり」


レイナは指を立てた。


「勝手にどっか行くなよ」


「はい!」


「知らない奴について行くな」


「はい!」


「変なもん食うな」


「はい!」


「私の言うこと聞け…///」


「はい!」


「よし」


美鈴が満面の笑みを浮かべる。

その笑顔を見てレイナは少しだけ後悔した。


(あーあ)


(これ絶対面倒なことになるやつだ)


だが


その時の彼女はまだ知らなかった。


この後、いなくなった孫に気づき錦宗玄がキーリオス中の情報網を使って孫を探し始めることを。


そして、ある探偵の事務所へ。一件の依頼が届くことを。

百合っていいよね(強調)

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