ラブラブ
翌日の探偵事務所。
平和だった。本当に平和だった。少なくともヒューゴはそう思っていた。
「ほら」
リシアがヒューゴの膝に座りスプーンを差し出す
「ん」
ヒューゴが口を開ける
ぱくっ。
「どう?」
「うまい!」
「そう」
リシアが少しだけ満足そうに頷く。
そのまま今度はヒューゴがスプーンを持った。
「ほら」
「……」
リシアが少し躊躇う。
「なんだよ」
「いや」
「嫌なら食うぞ」
「食べるわよ」
ぱくっ。
「どうだ」
「……美味しい」
「だろ」
「アナタが作ったわけじゃないけど」
「細かいこと気にすんなって」
テーブルの上にはプリンがあり、二人で一個を食べていた。完全にカップルだった。てかカップルだし。事務所の空気は甘ったるかった。砂糖を直接吸っているレベルで甘かった!
事務所のドアが開く。
「今帰りましたあ〜」
「終わったぞー」
カテリナとメロルスだった。
そして見た。ヒューゴがリシアへスプーンを向けている。
リシアが普通に食べる。
ヒューゴがニヤニヤするリシアが少し照れる。
またヒューゴが食わせる。
完全にアーンだった。
沈黙。
三秒。
五秒。
十秒。
「……」
「……」
カテリナとメロルスが固まる。
ヒューゴが気付く。
「あ、おかえり」
「……」
「どうした?」
「……」
メロルスが静かに袋を置いた。
「帰るか」
「帰って来たばかりですよぉ」
「でも帰りたい」
「気持ちは分かりますぅ」
リシアが首を傾げる。
「何か問題あるの?」
「問題しかねぇだろ!!」
メロルスが叫んだ。
「何なんだこの空間!!」
「平和だろ?」
「平和じゃねぇよ!!」
ヒューゴは理解していなかった。
リシアも理解していなかった。
二人とも自然体だった。だから余計にタチが悪い。
「ヒューゴさん」
カテリナが真顔で言う。
「なんで一日でこうなるんですぅ?」
「恋!」
「軽いですぅ!!」
リシアが少しムッとする。
「何か文句ある?」
「いや別にないですけどぉ」
「ないならいいじゃない」
「ありますぅ!!」
カテリナが叫んだ。
「事務所でイチャイチャしないでくださあい!!」
「イチャイチャしてねぇよ」
「してるだろ!!」
メロルスも叫ぶ。
「プリンをアーンしてる時点でアウトなんだよ!!」
「そうなのか?」
「そうみたいね」
リシアが即答した
「お前味方じゃねぇのか!?」
ヒューゴが驚く。
リシアは平然としていた。
「恋人なんだから別にいいでしょ」
『恋人!?』
カテリナとメロルスの声が重なる。
ヒューゴが頭を掻く。
「あーそういや言ってなかったか」
「言ってませんよぉ!!」
「聞いてねぇぞ!!」
二人が絶叫した。リシアは少しだけ得意げだった。
「今日休みだから」
「そうか」
「映画でも見る?」
「いいね」
「ポップコーン作るわ」
「最高じゃん」
カテリナとメロルスは無言だった。
数秒後。
メロルスが呟く。
「俺達」
「はい」
「外行ってる間に世界線変わったか?」
「かもしれませんねぇ」
二人は遠い目をした。
その横で
「ほら」
「あーん」
「ん」
ぱくっ。
再び始まるアーンにメロルスは顔を覆った。カテリナは天井を見上げた。
「……」
「……」
そして二人は同時に思った。
(早く転職しよう)
と。




