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復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


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スレイノホテルの後

時は巻き戻り、スレイノホテル事件の翌日の話だ

SHLD本部・第3事務室

カイゼルは報告書の山に完全に埋もれ、頭を抱えていた。


「……死にたい」


珍しく生気のない声。

部下たちは半径3メートル以内に近寄ろうともしない。空気が重い。理由は明白だった。

レオである。

あの日以来、レオは普通に話す。普通に任務もこなす。

だが、微妙に距離を置いてくる。それがカイゼルには痛いほどわかっていた。地味に効く。胃がキリキリする。

訓練場

カン!

カン!

カン!

レオがナイフを投げる音が、乾いたリズムを刻んでいた。全て完璧に中心。相変わらず鬱陶しいほど上手い。


「レオ」


後ろから声をかけると、レオは振り返りもせずに答えた。


「……なんだよ」


声にわずかな警戒心が混じっている。

カイゼルは珍しく背筋を伸ばし、真面目な顔で言った。


「謝りに来た」


レオの手がピタリと止まる。


「……何を」


「色々」


即答だった。

カイゼルは苦笑しながら頭を掻いた。


「正直に言うとさ。あの時、頭真っ白になったんだよ。お前が、実は女だったって知って……」


レオが無言でナイフを握りしめる。


「だから勝手なことした。ごめん」


カイゼルは深々と頭を下げた。

訓練場にいた隊員たちが、遠くからざわつき始めた。


「うおっ、隊長が土下座してるぞ……」


「初めて見た……」


「マジかよ、録画しとけ」


「バカ、殺されるぞ」


レオはしばらく黙っていたが、ぽつりと呟いた。


「……別に、嫌だったわけじゃない」


瞬間、カイゼルの目がキラーンと光った。


「へえ?」


「いや、違う! そういう意味じゃなくて!」

レオが慌てて訂正するが、すでに遅かった。

カイゼルはニヤニヤと笑みを深め、からかうモード全開になった。


「そういう意味じゃないってことは、別の意味では嫌じゃなかったってこと?」


「その顔やめろ!」


「どんな顔だい?この顔?」

カイゼルがさらにニヤニヤ度を上げて顔を近づける。

レオの耳が明らかに赤くなっていた。


「からかうな! マジでぶん殴るぞ!」


「殴っていいよ? ただしその後、ちゃんと俺の話を聞いてくれるなら」


「……っ」


レオが珍しく言葉に詰まる。

やがて、大きなため息を吐いて肩を落とした。


「……でも、勝手に決めるな」


カイゼルの笑みが少しだけ真面目なものに変わる。

レオは目を逸らしながら、ぼそぼそと続けた。


「俺が何考えてるか……ちゃんと聞けよ。一人で勝手に決めるな」


静かな、けれどはっきりした声だった。

カイゼルは数秒レオを見つめ、静かに頷いた。


「……ああ。約束する」


二人の間に、わずかだが確かな空気の変化が生まれた。

遠くで隊員たちが小声で盛り上がっていた。


「なんか……進展した?」


「進展っていうか、ただの夫婦喧嘩の後処理に見えるんだが」


「隊長がデレてる……貴重な映像だ」


「死にたい奴、手を挙げろ」

カイゼルは振り返って隊員たちを一睨みした。


「聞こえてるぞ。残業な」


「「「ひぃっ!」」」


訓練場に、いつもの馬鹿騒ぎが戻ってきた。

レオは小さく鼻を鳴らして、再びナイフを手に取った。

耳の赤みは、まだ完全に引いていなかった。

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