くっころ警察
(クソ!なんでこんなことになってんだよ!!)
ヒューゴは銀行で他の人質と一緒に縄で縛られていた
数十分前
依頼をこなし、探偵事務所近くの銀行にヒューゴは金おろしに来ていた
「さ〜ていくら入ってるんだったかな〜」
ババババン!!!
「キャーー!!」
「お前らー!死にたくなかったら床伏せろ!!」
そう言い突如入って来たのは覆面を被った武装強盗4人組だった
「まっず」
ヒューゴは即座に銀行内の柱の影に隠れた
「なんなんだアイツら、この時代に強盗が成功するわけねえだろ」
今のキーリオスだ
監視カメラ、顔認証、生体認証、警備AIもある強盗なんて始めた時点で終わりだ
だが――
「……ん?」
ヒューゴは違和感に気付いた。
銀行の天井、壁、監視カメラ端末の全ての通信ランプが消えていた。非常回線すら沈黙している。
「通信妨害かよ」
強盗達は慌てる様子もない。むしろ慣れていた
「三番!金庫!」
「了解!」
「二番は人質管理!」
「動いたら撃つぞォ!!」
その様子はまるで訓練された部隊みたいだった。だがそれでも非常時の銀行の警報システムが作動する
ビーッ!!
ビーッ!!
『警備プロトコル起動』
『警備ユニットを展開します』
床のパネルが開き、
ガコンッ!ガコンッ!
二体の警備ロボットが現れる
NISIKI製なのだろう。白銀色の装甲で電磁警棒、非殺傷用スタンガン
銀行専用警備ユニットだった
『武器を放棄してください』
『抵抗を確認』
『制圧を開始します』
強盗の一人が鼻で笑う
「ほら来た」
警備ロボットが突進する
『抵抗を確認』
『制圧を開始します』
白銀の警備ロボットが電磁警棒を展開した
だが強盗の一人が前へ出る
「はいはい」
男は銀行の床へ片手を叩きつけた
バンッ!!
ゴゴゴゴゴッ!!
警備ロボットの前方の床が突然折れ曲がり、巨大な段差となって持ち上がる
『障害物確認――』
言い終わる前にロボットが壁へ激突
男はさらに床へ手を滑らせ、空間の歪みが床を伝って走った
ベギィッ!!
ロボットの足元の空間が圧縮される。脚部装甲が潰れ、警備ロボットがバランスを崩した
「よっと」
男が今度は壁へ手を置く。すると壁面がねじれた。
ゴォンッ!!!
壁そのものが押し出されたように膨れ上がり、警備ロボットを吹き飛ばす
『ERROR』
『ERROR』
そのまま二体ともスクラップになり、銀行側の警備設備は全滅だった
(便利な能力じゃん)
ヒューゴは心の中で呟く
(犯罪向きだな、おれが言えたことじゃないけど)
強盗達は淡々と金庫を開けていき、札束、貴金属、電子チップ、高額データ媒体が次々とバッグへ放り込まれる
十分後
「終わりだ!」
「撤収!」
強盗達が笑い、能力者の男もバッグを肩へ担いだ
「楽勝じゃん」
「帰ったら祝杯だな」
その時だった外からサイレンが聞こえた
ウゥゥゥゥゥゥン!!
強盗達の動きが止まる
「チッ来たか」
銀行の自動ドア越しに大量の車両。警察、装甲車。
そして、黒い装甲服を着た部隊
SHLDが銀行を完全包囲していた
スピーカーから声が響く
『中の者へ告ぐ』
『銀行は完全包囲されている』
『武器を捨てて投降しろ』
『繰り返す』
『武器を捨てて投降しろ』
強盗達が顔を見合わせ、能力者の男が笑った
「面白くなってきたな」
一方。
人質の列の中では縄で縛られたヒューゴが頭を抱えていた
(今日ただ金下ろしに来ただけなんだけど)
(なんでこんなイベント発生してんだよ)
隣の人質のおばちゃんが震えている
ヒューゴはため息を吐いた
(……はぁ、帰る前に一仕事増えそうだな)
銀行の外ではSHLDが突入準備を始めていた。中では能力者強盗が不敵に笑う
そしてヒューゴだけが、
「金下ろしに来ただけなんだけどなぁ……」
と本気で思っていた。
「おいテメェら!!」
強盗のリーダーが人質の一人を乱暴に引っ張り出した。
銀行支店長だった。
「ひぃっ!!」
銃口が頭へ押し付けられる
「外の連中聞こえるかァ!!」
ガラスの向こうには警察とSHLD
「一歩でも近付いたらコイツの頭吹き飛ばす!!」
悲鳴に怒号で警察、SHLDに緊張が走る様子をヒューゴは人質の列から見ていた
(あーあ)
(最悪の展開だな)
縄で縛られながらため息を吐く
(銀行来ただけなのによ)
(俺今年厄年だな?)
すると警察の隊列が割れ、一人の女性警官が前へ出る
「待ってください!!」
若い女警官だった
「その方を解放してください」
「はぁ?」
「私が代わりになります」
ヒューゴ(何言ってんだコイツ。勇気あるのか馬鹿なのか)
彼女の名前は――ヴィクトリア・レイン
警察学校時代から有名な存在だった
射撃成績は常に上位
格闘訓練でも優秀
法学試験は首席
教官達からの評価も高く、同期達の間では「将来は本部勤務確実」とまで言われていた
そして、努力家だった
誰より早く起き
誰より遅くまで訓練場へ残る
その姿勢は周囲にも認められていた
卒業後は交番勤務へ配属
迷子の保護、交通整理、地域パトロール、高齢者支援
地味な仕事も嫌な顔ひとつせず引き受けた
住民からの評判も良い
近所の子供達からは「お巡りさんのお姉ちゃん」と呼ばれ。老人達からは「最近の若い警官には珍しい」と褒められた。同僚からの信頼も厚かった
真面目。誠実。責任感が強い
理想的な警察官
そう評価する者は多かった
実際、警察内部では将来を期待される若手の一人だった
表彰歴もある
感謝状も複数受け取っている
キャリアだけ見れば非の打ち所がない
誰もが口を揃えて言う彼女は正義感の強い立派な警察官だと
だが、彼女には一つ問題があった




