決意 そのニ
四人はネオンの海を抜けながら歩いていく。やがて見えてきたのは巨大な建物だった。
《GOLDEN JACK》
黄金色のホログラム看板が夜空へ浮かび上がり、入口には黒服の警備員が何人も立っている。高級車が次々と横付けされ、降りてくるのは企業幹部、投資家、裏社会の住人たち。
「賭場っていうより城ですねえ……」
カテリナが見上げながら呟く。
「金の流れる場所は大体こうさ」
ヒューゴがニューロパフを咥えたまま答える。
「派手な方が人は信用する」
「意味わかんねぇ」
「俺もわかんねぇ」
そんなことを話しながら入口へ向かう。
警備員が四人を止めた。
「会員証は?」
「ないね」
ヒューゴが即答する。警備員の眉が動いた。
「では紹介者は?」
「いない」
「帰れ」
当然だった。
しかしヒューゴは懐からカードを取り出す。
NISIKIライセンス。
帰り際に宗玄にもらったものだった
それを見た警備員の顔色が変わった。
「あー……」
「仕事だ」
「そういうことならどうぞ」
メロルスが呆れる。
「探偵ライセンスってそんな使い方していいのか?」
「知らん」
「絶対ダメだろ」
入り口へ向かう
扉が開く。その先には別世界が広がっていた。
巨大なシャンデリア
高級酒
電子ルーレット
チップの山
そしてバニーガール達
「いらっしゃいませ♡」
入口の両側へ並んだバニー達が頭を下げる。
メロルスが露骨に視線を逸らした。カテリナも少し困った顔になる。
リシアは無表情。
ただヒューゴだけは――
「おお」
珍しく声を漏らした。
リシアの眉がぴくりと動く。
「ふーん」
「何だ?」
「別に」
ヒューゴは気付かない。
メロルスは気付く
(はい、終わったな)
その時、一人のバニーガールが近寄ってくる。
金髪
抜群のスタイル
営業スマイル
「お客様、ポーカーテーブルはいかがですか?」
そう言いながらヒューゴの腕へ身体を寄せた。
リシアの目が細くなっているのに気づかずヒューゴは数秒考え
そして
「ポーカーなら行く」
「ありがとうございます♡」
「でも近い」
「え?」
「カード見えねぇ」
その返答にバニーが固まる
メロルスが吹き出した。カテリナも肩を震わせた
リシアだけが少し口元を緩めた。
「アンタ本当に女に興味ないの?」
「あるぞ」
「そうは見えないんだけど」
「いやある」
「説得力ないわね」
そのまま案内された先はVIP専用ポーカールームだった。
円卓に佇むディーラー。
高額チップ。
そして数人の客がどう見ても普通の客じゃない。
企業役員
情報屋
裏社会の人間
そんな連中ばかりだった。
ヒューゴは椅子へ腰掛ける。
「さて」
チップを手に取る。
「仕事するか」
リシアはその後ろへ立つ。
メロルスとカテリナも周囲を警戒しながら散る。
その時だった
ディーラーのバニーガールが話しかけてくる
「お客様、ルールはご存知ですか?」
ヒューゴは平然と
「もちろん」
ゲームが始まり、カードが配られる。
ヒューゴはカードを確認する。
弱い。かなーり弱い。
だが表情は変えない。対戦相手達がベットする。
ヒューゴも合わせる。
数ターン後。
相手の一人がニヤついた。企業役員らしき男だった。
「勝負だ…!」
大量のチップが積まれる。
場がざわつく。
ヒューゴは冷静に局面と相手を見ていた。
カードではない。
指先
視線
呼吸
癖
探偵として何千人も見てきた。
嘘をつく人間の顔を。
(ブラフだな)
ヒューゴは確信する。
「乗った」
さらにチップを積む。
リシアが驚いた。
「ちょっと」
「大丈夫」
「本当に?」
「多分」
「多分!?」
ショーダウン
男がカードを開く
ツーペア。
悪くない。
だがヒューゴは静かにそして、自信満々にカードを並べる。
ストレート。
場が静まり返った。
男の顔色が変わる。
「なっ……」
ヒューゴは笑う。
「運が良かったな」
実際は運ではない。
相手の癖から手札をほぼ読んでいた。
その時だった。
ディーラーのバニーガールがカードを回収する。
ほんの一瞬。
ヒューゴの視線が止まる。
(ん?)
指先。
袖口。
カードの角度。
普通じゃないわずかに細工された動きだった
ヒューゴは内心笑った。
(やっぱりいたか)
依頼人の勘は当たりだった。
ゴールデンジャックでは確かにイカサマが行われている。
しかもかなり組織的のようだった




