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復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


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36/60

頑張った後はご褒美っしょ

スレイフの起こした大事件から数日、なんとも気分が晴れ晴れする日、NISIKI製の義手となった腕でニューロパフを椅子にもたれかかりながら吸っていた


「はあ〜平和だねー」


事務所にはメロルスもカテリナもおらず暇だった

ヒューゴは窓の外へと目を向ける


「散歩でもしてみるか」


事務所を出て階段を降りる。キーリオスの街はスレイフによって甚大な被害を受けていたが少しづつ復興していた。

街にはホログラムのファッションを着る若者たち、自分の務める会社へ向かうものたち、AI搭載の車両、コンビニの金を輸送する警備ロボット、そして、ビルとビルの間を練り歩く巨大工事用ロボット。スレイフの事件の以前と以後で意外とあまり違いはなかった


すると適当に歩いてるヒューゴの元へ赤い車が停止する


「ハァーイ」


女が車から顔を出して声をかける


「ヒューゴ元気そうね」


リシアだった


「よお、久しぶりだが…殺し合う元気はまだないぞ」


「ふふ、違うわ。今日はアナタを労いに来たの」


「へえ、そりゃ嬉しいね」


そう言うとリシアは車のドアを開け手招きする


「乗りなよ」


「お言葉に甘えて」


ヒューゴは助手席に乗り込み発進した


「アナタ本当に散々な目にあったみたいね」


リシアが、ヒューゴの義手へ視線を落とす


銀色の人工筋肉

滑らかに動くNISIKI製義肢


あの戦いの代償だった


「おいおい、前向いて運転してくれよ?」


「問題ないわ。この車、八割自動だもの」


「便利な時代だねぇ」


ヒューゴは窓の外を見る


復興中の街

巨大工事機械

崩れたビルの修復

それでも人々は普通に笑って歩いている


キーリオスは、今日も止まらない


「……ねぇ」


リシアがぽつりと呟く


「ん?」


「実は病室で寝てるアナタ見た時、本当に死ぬかと思った」


ヒューゴがそちらを見る

リシアは笑っていない


「全身包帯だらけで」

「呼吸器つけられて」

「右腕も無くなってて」


彼女は小さく息を吐く


「……ちょっと怖かった」


ヒューゴが珍しく言葉に詰まる


その瞬間

リシアがハンドルから手を離し、そのまま助手席のヒューゴへ抱きついた。


「生きててよかった……」


そう言いリシアは涙を流し始める。


「ほらほら、なっ泣くなって」


ヒューゴは少し女の泣く姿に弱かった。そして自分の胸で泣くリシアを抱き起こし、ヒューゴはリシアに

キスをした


「んっ……もう」


唇が離れる。リシアは少し潤んだ目でヒューゴを睨んだ。


「泣いてる女にすることじゃないわ」


「だってさ」


ヒューゴは困ったように笑う


「俺は女の慰め方これくらいしか知らないんだ」


「最低」


「よく言われる」


だがリシアは離れなかった


むしろ少しだけ、ヒューゴの胸元を掴む力が強くなる


車は自動運転のまま高架道路を走っている


窓の外では、復興中のキーリオスが流れていく


巨大クレーン


空中広告


修復中の高層ビル


人間も都市も、壊れても前へ進むしかない

やがてヒューゴがぽつりと言った


「……あのさ」


「なに」


「俺さ、あん時ちょっとだけ思ったんだよ」


リシアが顔を上げる


ヒューゴは窓の外を見たまま笑う


「“あーこれ死んだかな”って」


「……」


「でも」


彼は義手を軽く動かし、金属の指が静かに鳴る


「まだ生きてる」


リシアは黙って聞いている


「だったらまぁ」


ヒューゴは彼女を見る


「生きてるうちに、会いたい女とは会っとこうかなって………言ってて恥ずかしくなってきた」


リシアの目が少し見開かれる。


「……それ、口説いてる?」


「今さら?」


彼女は吹き出した。

涙声のまま笑う。


「ほんとズルい男」


「褒め言葉だな」


「違うわよ」


リシアは額をヒューゴの肩へ軽く預ける


そのまま、小さく呟いた


「……死なないで」


ヒューゴは少しだけ黙った。


軽口じゃなく。


冗談でもなく。


静かに。


「努力はする」


リシアが笑う。


「信用できない返事」


「探偵だからな」


「意味わからない」


「俺もわからん」


その空気のまま、車は海沿いへ出る。


夕陽が都市の端へ沈み始めていた。


赤い光が、リシアの横顔を照らす。

その瞬間だけは巨大都市キーリオスも、

陰謀も、

SHLDも、

NISIKIも、

全部遠かった。


ただ、男女の二人だけがそこにいた。

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