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復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


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28/62

大義なき男

キーリオスある地域


 昼下がりの大通りは人で溢れていた。


 ホログラム広告。

 自動配送ドローン。

 観光客。

 喧騒。


その中を、一人の男が歩いていた。

赤黒いロングコートにジーパン、ボーッとした顔。男はポケットへ手を突っ込みながら、つまらなそうに街を眺めている。


「平和だなぁ」


脱獄囚の一人スレイフ・パージテクトは欠伸をした。次の瞬間


「おっと」


道端へ落ちていた缶を踏み派手に転んだ。


 ゴシャアッ!!


顔面から地面へ突っ込み、周囲が静まり返る。


「……ぷっ」


誰かが吹き出した。それを皮切りに笑いが漏れる。


「だっさ」

「うーわめっちゃ転んでる」

「動画撮った?」


スレイフは無言だった。ゆっくり立ち上がり、膝についた砂を払う。


「……なるほど…みんな俺を笑ったな?」


「じゃあ消そう!」


 ボッ――!!


瞬間、スレイフの足元から紅蓮の炎が噴き上がった。熱風が街路樹を吹き飛ばす。


「きゃあああ!!」

能力者(デッドリートライアル)だ!!」


スレイフは笑った。その顔は心底楽しそうだった。


「逃げろ逃げろ、ほら」


また次の瞬間、スレイフは炎を噴射しながら空中へ跳び上がり、キーリオスの都市を見渡す


「綺麗だなぁキーリオス」


大声で言う


「燃えるともっと綺麗だろう!」




数時間後、SHLD本部内で警報が鳴り響いていた


『中央区で大規模同時炎上!!』

能力者(デッドリートライアル)による無差別攻撃確認!!』

『死傷者急増中!!』


 オペレーター達が怒号を飛ばす中で照星は資料を渡され、静かにそれを見つめていた


脱獄囚、スレイフ・パージテクト。


 能力《焔葬回帰》。


 炎を吸収・蓄積し、自身の肉体から放出可能。さらに焼殺した相手を炎で象り、自らの駒として生成する能力。


 備考。


『炎を使い切った状態でライターを万引きし、一般警官に取り押さえられ収監』


 炎


 燃える車


 黒煙


資料の写真を見た瞬間、脳裏に、昔の記憶が蘇る

焼けた家、娘の泣き声、妻の手、そして、炎


「……」


照星の目が僅かに細くなり、隣でスポッターのミラが息を飲んだ。


「照星さん……?」


「この炎」


 画面を睨む


「見覚えがある、アイツだ」



数十分後のその頃、スレイフによる被害が及んでいない地域でヒューゴ、メロルス、カテリナはショッピングモールで買い物をしていた。


「流石に書いすぎたなこりゃ」


ヒューゴは両腕のレジ袋を持ち直した。ショッピングモール《アーク・プレイス》は休日ということもあり、人で溢れている。吹き抜けの巨大ホール。流れる電子広告。子供の笑い声。つい数十分前まで中央区が炎上しているとは思えないほど、ここだけは平和だった。


「ヒューゴさん絶対余計なもの入れましたよねぇ」


カテリナが袋を覗き込む。


「入れてない入れてない」


「ニューロパフ三箱入ってる」


「必要経費」


「どこがだ」


メロルスが呆れたように言う。その時だった。館内放送が突然ノイズ混じりに途切れる。


『――ザー……緊急……中央区で――』


ブツン。照明が一瞬だけ明滅した。


「……?」


メロルスが眉をひそめる。


 次の瞬間。


 ゴォォォォォォッッ!!!!


天井の窓を突き破り、紅蓮の炎がショッピングモール中央へ落下した。


「きゃああああ!!」

「な、なんだ!?」

「火事だ!!」


爆風に熱風。ガラスが砕け、巨大なクリスマス装飾が炎上する。人々が悲鳴を上げながら逃げ惑った。その炎の中心に、一人の男が立っていた。


 赤黒いロングコート、燃えるような赤髪。

 そして、笑っている。


「うわあ、すっげぇ人いるじゃん」


スレイフ・パージテクトは周囲を嬉しそうに見渡した。


「最高じゃん」


その背後で炎が渦巻く。まるで生き物みたいに。

ヒューゴの顔からは笑みが消えた。


「……おいおい」


 スレイフは人混みを見る。


 逃げる人間。

 泣く子供。

 転ぶ老人。


 全部を見て、楽しそうに笑った。


「なんかお祭りみたいだぁ!」


 ボッ!!


腕から放たれた炎が、フードコートを一瞬で呑み込み、油へ引火し爆発する。火柱が吹き上がり、人々が炎上する


「ッ!!」


ヒューゴは咄嗟に近くの子供を抱えて転がり、爆風が背中を叩く


「メロルス!カテリナ!」


「わかってる!」


メロルスは前へ出る。カテリナは避難誘導へ走った。


「皆さんこっちですぅ!! 急いでぇ!!」


 スレイフはそれを見て首を傾げる。


「あ、お前なんか面白そう」


「光栄だな」


「燃えてみる?」


「遠慮しとく」


瞬間、スレイフの足元が爆ぜ飛び込んでくる。ロケットのような加速で一直線に


「ッッ!!」


ヒューゴは横へ跳ぶ。直後に背後のブランドショップが蒸発した。ガラスもマネキンも、一瞬で溶ける。


「うわっ、避けるんだおまえ」


「危険物すぎるだろお前」


「よく言われるよ!」


スレイフは笑いながら両手を広げた。その掌には、小型の金属装置。カチ、カチ、と赤いランプが点滅している。メロルスが顔を変える。


「……爆弾か」


「そ。中に俺の炎閉じ込めてる」


 スレイフは無邪気に言った。


「時限式ね」


 そしてそのまま、侵入してきた天窓を出て飛び去ろうとした瞬間。


「じゃ、三十秒にさようなら!」


 パァン――!!


スレイフの肩が撃ち抜かれる


「……あ?」


スレイフが振り返りショッピングモール上階の避難済みの通路に、一人の男が立っていた。


 黒いコート。

 対物ライフル。

 無機質な視線。


 照星だった


 その隣ではミラがスコープ端末を操作していた。


「照星さん、爆発まで残り二十五秒ですよー!」


「わかってる」


照星は静かにライフルを構える。スレイフの目が細くなる。


「……お前」


その瞬間、照星の脳裏に、焼け落ちる家が蘇る。


 泣き叫ぶ娘。

 伸ばした妻の手。

 そして。


 炎の中で笑っていた“誰か”。


「やはりお前か」


「ん?」


スレイフは少し考え。次の瞬間、楽しそうに笑った。


「あー!! 思い出した!!」


 指を鳴らす。


「なんか昔に燃やした家の人でしょ!!」


 ミラの顔色が変わる。


「……ッ」


照星の表情だけが、逆に静かだった。

だがライフルを握る手に、僅かに力が入る。


「ヒューゴ!」


「あ?」


「さっさと逃げろ」


「そっちは?」


「俺が殺す」


 その声には、一切の感情がなかった。

スレイフの爆弾は通りがかりのアミちゃんが消化してくれました!

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