表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/60

愛の囁き合いという殴り合い そのニ

リシアの口癖は「半分」

夜風が吹く。壊れた街灯が火花を散らし、濡れた路地へ白い光を断続的に落としていた。リシアのナイフがひるがえる。


 鋭い。

 速い。

 なのに妙に優雅だった。

ヒューゴはそれを紙一重で避けながら笑う。


「怖いねぇSHLD」


「今さら?」


リシアの蹴り。ヒューゴは腕で受け流し、距離を取る。互いに息は乱れていない。完全に“測り合い”だった。


「で?」


ヒューゴがニューロパフを咥え直す。


「いつまで続けるのこれ」


「あなたが折れるまで」


「口説き文句としては物騒だな」


「嫌い?」


「むしろ好き」


リシアが少し笑う。次の瞬間、彼女の姿が消えた。その瞬間、リシアが背後へ回る。

ヒューゴは反射で身体を捻った。ナイフが頬を掠め、血が一筋流れた。


「うわ、綺麗な顔に傷がついた」


「自分で言う?」


「事実だからね」


するとヒューゴはリシアの手首を掴む。だがリシアは身体を預けるように密着し、そのまま耳元で囁いた。


「ねえヒューゴ」


「ん?」


「SHLDに来れば、あなた死ななくて済むのに」


「その言い方だと入らなきゃ死ぬみたいじゃん」


「半分くらいはそうかも」


ヒューゴの目が細くなった


「やだね」


 即答にリシアが少し目を丸くした。


「即答なんだ」


「組織って息苦しいだろ」


「自由人」


「褒め言葉だなぁ」


そして、リシアが離れようとする。瞬間、ヒューゴは掴んだ手を引き寄せ、そのままキスをした。


 チュッ


「んっ」


その瞬間だけ、リシアの仮面が剥がれた気がした。だがそれが照れかはわからなかった


「隙だらけだ」


「……最低ね」


「よく言われる」


 リシアは笑った。


けれど今度の笑みは、少しだけ自然だった。互いに距離を取る、遠くでパトカーのサイレンが鳴っていた。


「……ねえ」


リシアがぽつりと呟く。


「なんでそんなに他人を放っておけないの?」


「ん?」


「レグ・レンストの件も。スレイノホテルも。あなた、面倒ごとに自分から首突っ込んでる」


 ヒューゴは少し考える。


 そして。


「人が泣いてんの嫌いなんだよ」


「……」


リシアの視線が揺れる。初めてだった。この男が、少しだけ本音を見せた。


「……ずるいわ」


「何が?」


「そういう顔するところ」


風が吹き、リシアはナイフをくるりと回し、コートへ仕舞った。


「今日はここまで」


「お、面接終了?」


「不採用」


「泣いちゃう」


「でも」


リシアは少し近づく。そして、ヒューゴの頬についた血を親指で拭った。


「あなたのこと、かなり気に入ったわ。次会った時、生きてたら続きをしてあげる」


「何の?」


「愛の囁き合い」


「殴り合いの間違いだろ」


「ふふ」


彼女は背を向ける。長い髪が夜風に揺れた。


「またね、ヒューゴ」


「……」


ヒューゴは煙を吐く


「名前、本名じゃないだろ」


リシアは立ち止まらない。ただ片手を軽く振った。


「じゃあ次会う時までに当ててみて」


リシアは小さく呟く。


「私の名前を知る人は数少ないのよ」


そのまま、夜の雑踏へ消えていく。ヒューゴはしばらくその背中を見ていた。やがて


「……厄介な女」


そう呟きながら笑う。だが胸の奥が少しだけ高鳴っているのを、否定はできなかった。ネオンが滲む夜の街で危険な男女の“愛の囁き合い”は、まだ終わっていないかもしれない

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ