私は美しき爆弾魔(思い込みじゃないかも)
昼下がりのキーリオス中央商店街。
アルト・バイルンは、死んだ目でベンチに座っていた。
「……なんで俺が休日に買い物してんだ」
SHLD爆発物処理班。
激務!薄給!!休日出勤!!!
それに加えて最近、自称“美しき爆弾魔アミ”なんてやつまで現れた。
最近では自分は「爆弾解除のアルト」などと勝手にニュースで呼ばれ始め、知らない市民から写真撮影まで頼まれる始末。
心が休まらない!
そんなアルトの膝には、大量のスーパー袋が置かれていた。
カップ麺。
栄養ゼリー。
エナジードリンク。
終わってる食生活である。
「野菜買うか……」
呟きながら立ち上がろうとした瞬間。
ドンッ。
「わっ」
誰かがぶつかってきた。
白いワンピース。
ふわふわした髪。
そして両腕いっぱいに抱えた――爆薬。
「……」
「……」
数秒沈黙。
「あっ、爆弾解除のアルトくんだ」
「アミ!?」
指名手配書で見た美しき爆弾魔アミ。
本人は大真面目にテロリストを名乗っているが、なぜか結果的に人助けばかりしてしまう女である。
アルトは即座に周囲を確認した。
「待て。なんで普通に昼間の商店街歩いてんだ」
「お買い物!」
「何買ってんだよ」
「爆薬!」
「隠す気ゼロか!!」
初対面でもアミはニコニコしている。周囲の人間は誰も気づいていない。なぜならアミが抱えている爆薬は、見た目だけならオシャレな筒状ケースだからだ。
「今日はねぇ、芸術的な爆発を作ろうと思って!」
「やめろよ!」
「ひどーい」
アミは頬を膨らませる。すると、商店街の奥から怒鳴り声が聞こえた。
「火事だーーー!!」
「逃げろ!!」
アルトが振り向く。二階建ての雑貨屋から煙が上がっていた。
「……うわ最悪」
アルトはすぐ無線機へ手を伸ばす。隣のアミの目がキラキラ輝いていた。
「あっ」
「おいまさか、待て」
「爆発の出番?」
「違う!」
「でも火事って爆発映えするよね」
「その発想やめろっての」
アミは煙を見上げながら真剣な顔になる。
「よし」
「よしじゃない」
「アルトくん」
「なんだ」
「私に任せて」
「嫌な予感しかしないって……」
次の瞬間、アミがバッグから小型爆弾を取り出した。
「ストップ」
「大丈夫大丈夫♪」
「お前の大丈夫は信用ならねぇんだよ」
しかし、アミは雑貨屋の横へ爆弾を投げた。アルトは頭を抱える。
「終わっ――」
ドォン!!
爆発、衝撃。周囲が悲鳴に包まれるが。
「あれ?」
アルトが顔を上げる。爆風で、火事の原因だったガスボンベが建物外へ吹き飛ばされていた。
さらに。爆風によって周囲の酸素流れが変わり、炎の勢いが弱まっている。
「……まじか」
消防隊員が叫ぶ。
「今だ! 一気に消火するぞ!!」
人々が避難していく。しかも、二階窓から取り残されていた猫まで、爆風で外の救助マットへ綺麗に落ちて助かっていた。
「ニャー」
「なんでなん?」
アルトは真顔で呟く。アミは嬉しそうに胸を張る。
「どう? 美しかった?」
「結果だけ見るとヒーローだなお前」
「えへへ」
「褒めてねぇ」
その時、雑貨屋の店主らしきおばあさんが駆け寄ってきた。
「ありがとうねぇお嬢ちゃん!」
「へ?」
「爆発でガスが外れなかったら店ごと吹っ飛んでたよ!」
アミが固まる。
「わ、私はテロを――」
「命の恩人だよ!」
「ち、違うのにぃ……」
アミは困惑した顔でアルトを見る。
「なんで?」
「知らねぇよ」
「私、ちゃんと悪いことしようとしてるのに」
「才能無いんじゃねぇか」
「そんなぁ」
アミはショックを受ける。すると今度は、近くにいた子供たちが集まってきた。
「お姉ちゃんすげー!!」
「爆発かっこよかった!!」
「サインください!」
「サイン!?」
ミラは完全に混乱していた。
「ち、違うの! 私は恐怖の爆弾魔で――」
「ヒーローみたい!」
「違ぁぁぁう!!」
アルトはその光景を見ながら、缶コーヒーを開ける。
「……平和だなぁ」
アミは子供たちに囲まれながら涙目になっていた。
「なんで誰も怖がってくれないのぉ!?」




