死、故に落ちる花 その三
スナイパーっていいよね〜
ズドン!
頭を撃ち抜かれ、床へ転がるレグの死体
それを見たヒューゴは押し黙りながらもレグへ近づく。死体を自分に抱き寄せ、弾が飛んできたであろうビルを睨む。するとその場に待機していたSHLDの隊員の無線機から、通信が聞こえてくる。
『対象追加確認』
無線越しの低い男の声。
『ヒューゴ・ヴァレンタイン』
『レグ・レンスト保護行為を確認』
『脅威判定を開始する』
「……あ?」
ヒューゴの眉がピクリと動く。
『必要であれば貴様も処分対象とする』
「俺も殺すってんなら殺してみろや!!」
ヒューゴはすぐさまその場のSHLDの無線機を奪いながらビルへ駆け出してゆく。その間にもビルからの狙撃が飛んでくるが巧みにヒューゴはかわすスラム街特有の違法増築を蹴り上がり、ビル群を駆け抜ける。
「お前は人生をやり直そうとしていた子供を殺したんだぞわかってんのか!!」
無線機で相手と会話する
『関係ない…脅威対象に加えて能力者だ』
「お前とはとことん会話が通じなさそうだ!」
非常階段を登るヒューゴ。その間にも、物理法則を無視したあり得ない角度から弾丸が襲いかかる。それらすべてを予測の狂わぬ身のこなしで回避し、ついに屋上の扉を蹴破った。
そこには、一人の男がいた。
黒い戦術コート。
片目を覆う電子照準機。
異様に長い対物ライフル。
そして無表情。
「……ヒューゴ・ヴァレンタイン」
男が淡々と言う。
「SHLD危険監査部隊所属コードネーム
《照星》
新規脅威対象確認、処分する」
「ど・う・で・も・い・い!!!」
そう言い、ヒューゴは近づくが照星は
大型二丁拳銃を構え、向ける。
「死ぬといい」
照星が引き金を引く。
轟音。
大型拳銃から放たれた弾丸が、風を裂いてヒューゴへ襲いかかる。
だが。
「ッ!!」
ヒューゴは身体を捻り、紙一重で回避する。弾丸は背後の給水タンクへ直撃し、鉄塊を爆ぜさせた。
「……チッ」
照星の眉が僅かに動く。普通の人間なら避けられない。だがヒューゴは止まらない。怒りだけで走っている。
「レグは……!」
屋上を蹴る。
「生きようとしてたんだぞ!!」
さらに一発、今度は床へ着弾。コンクリートが砕け、破片が散る。だがヒューゴは、その破片すら踏み台にして加速した。
『対象接近!』
『危険度上昇!』
照星の電子照準機が分析する。その瞬間、拳銃を捨てた。代わりに背中の対物ライフルを振り上げる。
鈍器のようにブォン!!と暴力的な横薙ぎだった
ヒューゴは咄嗟に腕で受ける。
「ぐッ……!」
骨が軋み、吹き飛ばされ、屋上を転がる。だがすぐ立ち上がる。
「まだ来るのか」
「当たり前だろ」
ヒューゴの声は低かった。
「お前を蹴ってねえ」
その瞬間。照星が照準をヒューゴの額へ。だがヒューゴが消える。監視転移
近隣監視カメラを経由した高速転移で一瞬で照星の死角へ回り込む。
「グッ!?」
初めて、照星の声に動揺が混じった。ヒューゴの回し蹴りが側頭部へ炸裂する。
ゴッッ!!
電子照準機が砕け散り、照星がよろめく、だが倒れない。即座に肘打ちを打ち込みヒューゴの脇腹へ突き刺さる。
「がッ……!」
重いまるで鉄骨。ヒューゴは距離を取る。
照星は砕けた照準機を投げ捨てた。
「……理解できん」
「あ?」
「なぜそこまで怒る」
「……あの子供はな」
「初めて会った時、映画の話して笑ってたんだよ」
「……」
「やっと人生をやり直せるかもしれなかった」
ヒューゴが前へ出る。
「なのにお前は撃った」
また一歩
「脅威だから?」
「能力者だから?」
「そんな理由でガキ一人殺したのか」
照星は淡々と答える。
「脅威は排除する。それがSHLDの秩序だ、そして、それに賛成してる。」
「……そうかよ」
ヒューゴはうつむき、
そして
静かに構えた。
「じゃあお前のその秩序――」
屋上の監視カメラ全てが、一斉に照星へ向いた。
「俺が蹴り壊してやる」
ドンッ!!
コンクリートが砕けるほどの踏み込みで、ヒューゴが突っ込む。照星もライフルを構える。
足とライフルの銃床の衝突
蹴り
肘
ワープ
拳
膝
互いに一歩も引かない。
だが怒っているのはヒューゴだけじゃなかった。
照星もまた、どこか壊れていた。
「感情は判断を鈍らせる!」
「うるせえ!」
「情けは被害を増やす!」
「だからって!!」
ヒューゴの蹴りが腹へ入る。
さらに。
横蹴り
後ろ回し蹴り
ミドル
連撃で照星が吹き飛び、屋上端まで滑る。
だがなお照星は銃を向ける。
「排除――」
その瞬間。
ヒューゴが真正面から踏み込んだ。
「黙れェッッ!!」
渾身の前蹴りが照星の胸部のサイボーグ義体へ直撃。装甲が陥没する。
そのまま身体が宙へ浮き屋上端を越えた。照星は落ちながらヒューゴを見る。
「……理解……できん」
そして闇の中へ消えた。
静寂。
ヒューゴは荒い呼吸を繰り返す。怒りは消えない。もうレグは戻ってこない。
「……クソが」
ヒューゴは夜空を睨みながら、そう吐き捨てるしかなかった。
正直、レグは生きてたらまた人を衝動的に殺してました。




