死、故に落ちる花 そのニ
新キャラ出しまーす
自分が起こしたことにまたも驚き、家から逃げ出す、レグ。
焼け焦げた臭いが、肺にまとわりついて離れない。
レグは夜のスラム街を走っていた。呼吸は乱れ、視界は揺れる。頭の中では、何度も同じ光景が再生されていた。燃えるキッチン。叫び声。皮膚が焼ける音。
「違う……俺は……」
否定しようとして、できない。自分でやった。
能力を使った。自分で殺した。
レグは唇を噛み、人気の少ない路地へ飛び込む。
だが、その瞬間。上空から白いライトが照射され た。
「二件の犯人と思われる者発見!」
機械音声。ドローンだ。レグは反射的に顔を上げてしまう。空中に浮かぶSHLDの監視ドローン。青白いサーチライトがレグを捉える。
『対象確認。連続殺人容疑者レグ・レンスト。直ちに停止しろ』
「っ……!」
レグは再び走り出す。その直後。路地の向こうから黒い装甲車が滑り込み、ドアが開く。
「いたぞ!!」
「包囲しろ!」
「能力使用に警戒!」
レグの心臓が跳ねる。
(なんで……なんでこんな早いんだよ……!)
逃げ場がない。そこへレグの目に閉店した大型電気店が映る。閉まったドアを能力を使いこじ開け、狭い商品棚と商品棚の間を押し除け奥へ逃げる。
だが入口側から、聞き覚えのある声がした。
「おーおー、派手にやってんなぁ」
レグが振り向く。そこには紳士服姿で片手にコンビニ袋。
「……ヒューゴ」
「よっ」
ヒューゴ・ヴァレンタインは、まるで偶然会った友人みたいなテンションで手を上げる。
「何その顔。世界終わりました感すごいぞ」
「来るな!!」
レグの叫びと同時。店内の全ての電気製品が起動し、ヒューゴを脅かそうとする。
「危なっ」
ヒューゴは軽く横へ避ける。電子レンジが爆発した。
「おいおい、家電を粗末にするなよ」
「俺に近づくな……!」
レグの声は震えていた。
「俺は……人を殺したんだぞ」
「知ってる」
「……!」
「SHLDの無線、そこら中で鳴ってるからな」
ヒューゴはコンビニ袋から肉まんを取り出す。そして普通に食い始めた。
「……なんなんだよ、あんた」
「腹減ってた」
「そういうことじゃねえ!!」
レグの感情に反応し、店内の機械が暴れ始める。
ドライヤー。
掃除機。
ゲーム機。
だがヒューゴは、逃げない。
「なあレグ」
静かな声。
「お前さ」
「今、自分が化け物になった気でいるだろ」
「……」
「でもな、そんな顔してるうちはまだ人間だよ」
レグの目が揺れる。
「SHLDだ!!」
武装隊員たちが突入してくる。
ライト。
銃口。
怒号。
「対象を確保しろ!」
レグの呼吸が壊れる。
まただ。
また追われる。
また否定される。
また――
「落ち着け」
ヒューゴが言った。不思議と、その声だけはよく聞こえた。
「能力ってのはな、感情で暴れる」
「今のお前は、ハンドルが壊れた車だ」
ヒューゴはレグを見る。
「だからまず、止まれ」
「……無理だ」
「無理じゃねえ」
ヒューゴは笑った。
「超次元タヌキロボ好きなんだろ?」
「……は?」
「その作品の主人公だって毎回やらかす。でも最後はなんとかなる」
「なんだよそれ……」
「だから今は、とりあえず暴走やめろ。話はそれからだ」
レグの周囲で暴れていた家電が、少しずつ静止していく。呼吸が、ほんの少しだけ落ち着く。外のビルの屋上からスコープの光が反射する。瞬間
ズドン!!
「へっ?」
レグの頭部が撃ち抜かれた
なんとかならなかったね




