死、故に落ちる花 その一
懐玉
「もっと頭使えよ!!バカが!」
「あんたってほんと冷たい子だね」
「どうしてこれが出来ないんだろうね」
今までの自分に向けられた親からの言葉。
消しゴムを貸せば、切り裂かれ、唾を吐かれ返される。自分のタブレットを見せれば、盗まれ、壊され、やれ
「お前が悪い」だの、やれ「お前が持ってるのが悪い」と怒鳴られる。今まで学校の人間から受けてきた仕打ち。
「なんてクソみたいな人生なんだ」
一人のスラムの学生、レグが呟いた
そうバス停でバスを待っているレグの隣に美しい女性が来た。そんな女性をついレグは見つめてしまう。そうしていると、女性と目が合ってしまってすぐに目線を下に戻す。
「ねえ、君」
そう声をかけられ、ついまた目を合わせてしまう。
「君の目は人生に満足してない顔、いや違うな。人生が嫌いって感じの目だね」
「なっ、なんでわかるんですか?」
「わかるよ、そりゃね」
とうなづいて見せる。レグは動揺するばかりで、女性ばかりが喋る。
「ねえねえ、人生に花を咲かせてみない?」
そう興奮気味に言い無理矢理自分の手に何か渡し、女性は足早に去って行った。ふと、渡されたもの見る。一本の注射器だった。注射器にはQΛRと書いてある
「こっ、これって!」
と言ったところでバスが来る。レグは咄嗟に注射器をリュックに押し込み、バスに乗り込む。
都市部の学校についたレグはトイレに入り、リュックから注射器を取り出す。
「これってやっぱりそうゆうものだよな?」
つい呟く。すると
ドン!
急にトイレのドアを叩かれる
「お前何トイレん中で何ぶつくさ喋ってんだよ!」
「さっさと出て来い!」
普段自分をいじめるいじめっ子に見つかったようだ。それによってレドは追い詰められ呼吸が早くなる
「ハアハアハア」
目線は自然と注射器に向く。
「もういやだ!」
注射器を自分に刺し、注入する。即座に体全体に激痛が走り、叫ぶ、そして意識が遠のいてく。
「おっおい大丈夫かよ。レド!」
その瞬間トイレのドアが蹴破られる。
「大丈夫か!?」
レドの視界に、突然“線”が見えた。
電子機器へ繋がる線。学校中に張り巡らされたネットワーク。監視カメラ。電子ロック。教師用端末。生徒のタブレット。
全て見える。
それにレドが無意識に目を向ける、いじめっ子のポケットのスマホへ
その瞬間、バチッ!!
「うわっ!?」
スマホが突然発火する、それにより瞬く間に服へ燃え広がる。仲間のいじめっ子はそれに慄き逃げていく。
火に包まれたいじめっ子は悶え死んでしまった。
驚いたレグはすぐさまトイレを飛び出し人の目を気にせず、学校を出る。レグは、ただ走っていた。どこへ向かうでもなく。ただ、逃げるように。学校から飛び出し、人混みを掻き分け、気づけば都市部の商店街まで来ていた。
ネオン広告。
全自動清掃ドローン。
空中を走る配送レール。
楽しそうに笑う学生たち。
世界はいつも通り回っているのに、自分だけが壊れてしまった気がした。
「……はぁ……っ」
呼吸が荒い。脳裏には、さっきの光景が焼き付いて離れない。燃える制服。悲鳴。焦げた臭い。
「俺が……殺した……?」
足が震える。吐きそうだったすると。
「おっと」
誰かと肩がぶつかった。
「おわっ」
レグがよろける。相手は紙コップを器用に持ち替え、こぼさずに済ませていた。
「危ねえ危ねえ。俺のカフェラテが死ぬところだった」
足の長い紳士服の男。軽薄そうな笑み。
そしてなぜか、頭には猫耳カチューシャが付いていた。
「……なんだそれ」
「ん?」
男は自分の頭に触れる。
「あー、これか。ゲーセンの帰りに外すの忘れてた」
「ダサ……」
「初対面で辛辣すぎるだろキミ」
男はケラケラ笑った。レグはそのまま通り過ぎようとする。
だが。
「待て待て待て」
男が呼び止める。
「お前、顔終わってんぞ」
「……は?」
「人生全部終わりました、みたいな顔してる」
その言葉に、レグの足が止まる。男は顎で近くのカフェを指した。
「奢るから座ってけよ」
「……知らない人について行くなって言われてる」
「じゃあ安心しろ。俺も知らないキミに話しかけてる」
「意味わかんねえよ……」
だがレグは疲れ切っていた。逃げる気力も無い。
結局、男について行くことにした。カフェの窓際席。
レグはココアを前に、ずっと俯いていた。対する男はパフェを食っている、しかもめちゃくちゃ嬉しそうに。
「うっま」
「……」
「いや聞いてくれよ。この店、クリームが異常にうまい」
「……」
「お前も食う?」
「いらない」
「そうか」
沈黙。だが男は気まずそうにもしない。スマホをいじりながら、ふと口を開く。
「なあキミ」
「……」
「超次元タヌキロボで一番好きな映画なに?」
「は?」
レグは顔を上げた。
「いや急に何」
「いや、人生終わってる時こそ⚪︎⚪︎えもん映画なんだよ」
「意味わかんねえ……」
「ちなみに俺は⚪︎人兵団」
「……」
レグは少しだけ考える。
「……宇宙⚪︎戦争」
「おお!?」
男が目を輝かせる。
「いい趣味してんじゃん!!」
「……あのキャラがちゃんとカッコいいし」
「わかる」
「あと、最後が好き」
「わかる〜〜〜!!」
男がテーブルを叩く。周囲の客がチラッと見る。
「声デカ」
「いやだって分かる奴少ねえんだもん!」
男は本気で嬉しそうだった。レグは少しだけ戸惑う。こんな風に自分の話を楽しそうに聞く人間なんて、ほとんどいなかった。
「じゃあさ」
男がニヤッと笑う。
「道具なら何欲しい?」
「……あっちこっちドア」
「現実的だなぁ」
「お前は?」
「あればボックス」
「ズル」
「でも絶対使い方ミスる」
「それはそう」
二人は、少し笑った。レグ自身、笑ったのがいつぶりか分からなかった。気づけば、外は夕方になっていた。オレンジ色の光が窓へ差し込む。
「さて」
男が立ち上がる。
「そろそろ行くか」
「……あんた、名前は?」
「あ、言ってなかったっけ」
男は笑う。
「ヒューゴ。ヒューゴ・ヴァレンタイン」
「……レグ・レンスト」
「おう、よろしくレグ」
そう言って、ヒューゴは自然に拳を突き出した。
レグは少し迷う。けれど、小さく拳を当て返した。
「じゃーな」
ヒューゴは軽い調子で去っていく。レグはその背中を見送った。ほんの数時間前まで世界は地獄みたいだった。
でもほんの少しだけ、ほんの少しだけ、生きていてもいいかもしれないと思ってしまった。だが現実は無常、家に帰ってみるともちろん親はクズのまま、学校で起きた騒動にも無関心な様子だった。
レグはキッチンをハッキングし、衝動的に親を焼き殺した
玉折は書かないですw




